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神州天馬侠56

时间: 2018-11-30    进入日语论坛
核心提示:湖南の三|騎士    二 そこには、白旗《しらはた》の宮《みや》のまえから、追いつ追われつしてきた小幡民部《こばたみんぶ
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 湖南の三|騎士
 
    二
 
 そこには、白旗《しらはた》の宮《みや》のまえから、追いつ追われつしてきた小幡民部《こばたみんぶ》が、穴山《あなやま》の旗本雑兵《はたもとぞうひよう》を八面にうけて、今や必死《ひつし》に斬《き》りむすんでいる。
 しかし、小幡民部《こばたみんぶ》は、こうした斬合《きりあい》はごく不得手《ふえて》であった。太刀《たち》をもって人にあたることは、かれのよくすることではない。
 けれど、軍配《ぐんばい》をもって陣頭《じんとう》に立てば、孫呉《そんご》のおもかげをみるごとくであり、帷幕《いばく》に計略をめぐらせば、孔明《こうめい》も三|舎《しや》を避ける小幡民部が、太刀打《たちう》ちが下手《へた》だからといっても、けっしてなんの恥ではない。かれの偉《えら》さがひくくなるものではない。民部の本領《ほんりよう》はどこまでも、奇策無双《きさくむそう》な軍学家というところにあるのだから。
 だが、それほど智恵《ちえ》のある民部が、なんで、こんな苦しい血戦をみずからもとめ、みずから不得手な太刀を持って斬りむすぶようなことをしたのであろう。なぜ、もっといい機会をねらって、らくらくと伊那丸《いなまる》を救《すく》わないのか。
 民部ははじめ、こう考えた。
 穴山梅雪《あなやまばいせつ》の領内《りようない》、甲州|北郡《きたごおり》の土地へはいってからでは、伊那丸を助けることはよういであるまい。これはなんでも途中において目的をはたしてしまうのにかぎる。——でかれは、出発にさきだって鞍馬《くらま》の果心居士《かしんこじ》、小太郎山《こたろうざん》の龍太郎《りゆうたろう》、小文治《こぶんじ》などの同志《どうし》へ通牒《つうちよう》をとばしておいた。
 ところが、裾野《すその》へかかってきた第一日に、咲耶子《さくやこ》という意外なものがあらわれた。かれは少女のふしぎな行動を見て、ははアこれは伊那丸君《いなまるぎみ》を救おうという者だナ、と直覚したが、なにしろ、梅雪の警固《けいご》には、四天王《してんのう》をはじめ、手ごわい旗本《はたもと》や郎党《ろうどう》が百人近くもついているので、あくまで入道《にゆうどう》をゆだんさせるため、奇計をもって咲耶子《さくやこ》を生けどり、なお、心ひそかに、待つ者がくるひまつぶしに、この湖水までおびきよせたのだ。
 ところが、民部《みんぶ》の心まちにしている人々は、いまもってすがたが見えない。——で、いまは最後の手段があるばかりと、途中で咲耶子にもささやいておいたとおりな、驚天《きようてん》動地《どうち》の火ぶたを切ったのである。
 致命傷《ちめいしよう》にはなるまいが、怨敵梅雪《おんてきばいせつ》へは、たしかに一《ひと》太刀《たち》手ごたえをくれてあるから、このうえはどうかして、一ぽうの血路をひらき、伊那丸君《いなまるぎみ》をすくいだそうと民部は心にあせった。しかし、まえにも、いったとおり、剣《けん》を持っては万夫不当《ばんぷふとう》のかれではないから、無念《むねん》や、そこへ追われてきた伊那丸と咲耶子のすがたを見ながら、四天王《してんのう》の天野、猪子、佐分利などにささえられて近よることもできない。
 それどころか、いまは民部のじぶんがすでにあぶないありさま。
 天野刑部《あまのぎようぶ》は月山流《げつざんりゆう》の達者《たつしや》とて、刃渡《はわた》り一|尺《しやく》四|寸《すん》の鉈《なた》薙刀《なぎなた》をふるって|りゅうりゅう《ヽヽヽヽヽヽ》とせまり、佐分利五郎次《さぶりごろうじ》は陣刀せんせんと斬《き》りつけてくる。その一人にも当りがたい民部は、はッはッと火のような息を吐《は》きながら、受けつ、逃げつ、かわしつしていたが、一ぽうは湖《みずうみ》、だんだんと波のきわまで追いつめられて、もうまったく袋《ふくろ》のねずみだ、背水《はいすい》の陣にたおれるよりほかない。
「よしッ、もうこのほうはひきうけた。猪子伴作《いのこばんさく》は伊那丸のほうへいってくれ」
「おお承知《しようち》した」
 天野刑部《あまのぎようぶ》の声にこたえた伴作《ばんさく》は、笹穂《ささほ》の槍《やり》をヒラリと返して、一ぽうへ加勢にむかった。ところへ、いっさんにかけだしてきたのは伊那丸《いなまる》と咲耶子《さくやこ》、そうほうバッタリと出会いながら、ものをいわず七、八|合槍《ごうやり》と太刀の秘術《ひじゆつ》をくらべて斬りむすんだが、たちまち、うしろから足助主水正《あすけもんどのしよう》、その他の郎党《ろうどう》が嵐のような勢いで殺到した。
 あなたでは民部《みんぶ》の苦戦、ここでは伊那丸と咲耶子が、腹背《ふくはい》の敵にはさみ討ちとされている。二ヵ所の狂瀾《きようらん》はすさまじい旋風《せんぷう》のごとく、たばしる血汐《ちしお》、丁々《ちようちよう》ときらめく刃《やいば》、目も開《あ》けられない修羅《しゆら》の血戦。
 三つの命は刻々《こつこく》とせまった。
 そのころから、秀麗《しゆうれい》な富士の山肌《やまはだ》に、一|抹《まつ》の墨《すみ》がなすられてきた、——と見るまに、黒雲の帯《おび》はむくむくとはてなくひろがり、やがて風さえ生じて、澄《す》みわたっていた空いちめんにさわがしい色を呈《てい》してきた。
 雲《くも》団々《だんだん》、陽《ひ》はたちまち暗く、たちまち、ぱッと明るく、明暗たちどころにかわる空の変化はいちいち下界《げかい》にもうつって、修羅《しゆら》のさけびをあげている湖畔《こはん》の渦《うず》は、しんに凄愴《せいそう》、極致《きよくち》の壮絶《そうぜつ》、なんといいあらわすべきことばもない。
 おりしもあれ!
 はるか湖水の南岸に、ポチリと見えだした一点の人影。
 画面点景《がめんてんけい》の寸馬豆人《すんばとうじん》そのまま、人も小さく馬も小さくしか見えないが、たしかに流星のごときはやさで湖畔《こはん》をはしってくる。それが、空の明るくなった時はくッきりと見え、陽《ひ》がかげるとともに、暗澹《あんたん》たる蘆《あし》のそよぎに見えなくなる。
 そも何者?
 おお、いよいよ奔馬《ほんば》は近づいてきた。しかもそれは一|騎《き》ではない。あとからつづくもう一騎がある。
 いや、さらにまた一騎。
 まさしくここへさしてくる者は三騎の勇士だ。そのはやきこと疾風《しつぷう》、その軽きことかける天馬《てんば》かとあやしまれる。
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