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神州天馬侠72

时间: 2018-11-30    进入日语论坛
核心提示:魔人隠形の印    二 すさまじい雷火の焔《ほのお》が、パッと立ったせつな、ゲラゲラゲラと十字架のかげで大きく笑う声がし
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 魔人隠形の印
 
    二
 
 すさまじい雷火の焔《ほのお》が、パッと立ったせつな、ゲラゲラゲラと十字架のかげで大きく笑う声がした。
 怪人|呂宋兵衛《るそんべえ》の目である。口である。
 悪魔《あくま》の面《めん》! それがあざわらった。
「あッ——」
 伊那丸《いなまる》の馬は、蹄《ひづめ》を蹴《け》って横飛びにぶったおれた。咲耶子《さくやこ》は、竿立《さおだ》ちとなった駒《こま》のたてがみにしがみついて、焔《ほのお》のまえに悶絶《もんぜつ》した。
 倒れたのは、馬ばかりか、人ばかりか、二|尺角《しやくかく》の白木《しらき》の十字架《じゆうじか》まで、上から真《ま》ッ二つにさけ、余煙《よえん》のなかへゆら、——と横になりかかってきた。
 雷火《らいか》の炸裂《さくれつ》は、詭計《きけい》でもなんでもない。怪人呂宋兵衛《かいじんるそんべえ》が、ふところに秘《ひ》めておいた一|塊《かい》の強薬《ごうやく》を、祭壇《さいだん》に燃えのこっていたろうそく火《び》へ投げつけたのだ。
 長崎や堺《さかい》あたりで、南蛮人《なんばんじん》が日本人と争闘《そうとう》すると、常習《じようしゆう》にやるかれらの手口《てぐち》である。民部《みんぶ》はそれを知っていたので、あわてて駒を飛ばしてきたが、一足《ひとあし》おそかった、裂《さ》けた十字架が、いましもドスーンと大地へ音をひびかせた時である。
「人穴《ひとあな》の賊《ぞく》。そこうごくなッ!」
 民部は、乗りつけてきた馬の鞍《くら》から飛びおりるより早く、壇《だん》の上につっ立っているかれを目がけて斬りつけた。
「しゃらくさいわッ」
 呂宋兵衛は、民部の第一刀をひッぱずして、いきなり鬼のような手で彼の右手《めて》をねじあげた。
 もうふところに強薬は持っていないので、まえのような危険はないが、腕と腕、剣と剣の打ちあいでも、民部は呂宋兵衛《るそんべえ》の敵ではない。
「うーむ、この小僧《こぞう》ッ子め」
 酒呑童子《しゆてんどうじ》もかくやの形相《ぎようそう》で、大きな唇《くちびる》へ|やい《ヽヽ》歯をかませた呂宋兵衛は、いきなり民部の利腕《ききうで》をひとふりふって、やッと一|声《せい》、壇《だん》の上から大地へ投げつけた。
「無念」
 一代の軍師《ぐんし》、小幡民部《こばたみんぶ》も、腕の勝負ではいかんともすることができない。はねおきようとすると、はやくも、呂宋兵衛の山のような体がのしかかってきて、グイとのどわをしめつけ、
「おウ、てめえが伊那丸《いなまる》の腰について、穴山梅雪《あなやまばいせつ》を討《う》ったという小ざかしい小幡民部というやつだな。こりゃいい首にめぐり会った。山荘《さんそう》へのみやげにしてやる。覚悟《かくご》をしろ」
 鎧通《よろいどお》しをひきぬき、逆手《さかて》にもって、グイと民部の首根《くびね》にせまった。民部は、そうはさせまいと、下から短剣《たんけん》をぬき、足をもがき、ここ一|髪《ぱつ》のあらそいとなって、たがいに必死。
 伊那丸《いなまる》も咲耶子《さくやこ》も、みすみすかたわらにありながら、いまの雷火《らいか》にふかれて、ふたりとも気を失ってしまっている。
「うーむッ」
 もみ合っているふたりのあいだから、おそろしい苦鳴《くめい》があがった。さては、民部が首をかき落とされたか、呂宋兵衛《るそんべえ》が脾腹《ひばら》をえぐられたか、どッちか一つ。
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