日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 吉川英治 » 正文

神州天馬侠97

时间: 2018-11-30    进入日语论坛
核心提示:死地におちた雨ケ岳    四 初対面《しよたいめん》のあいさつや、陣中の見舞《みま》いなどをのべおわってのち、八風斎《は
(单词翻译:双击或拖选)
 死地におちた雨ケ岳
 
    四
 
 初対面《しよたいめん》のあいさつや、陣中の見舞《みま》いなどをのべおわってのち、八風斎《はつぷうさい》は、れいの秘図《ひず》をとりだし、主人|勝家《かついえ》からの贈《おく》り物として、うやうやしく、伊那丸《いなまる》の膝下《しつか》にささげた。
 が、なぜか、伊那丸は、よろこぶ色はおろか、さらに見向きもしないで、|にべ《ヽヽ》なくそれをつッかえした。
「ご好意はかたじけないが、さようなものはじぶんにとって欲《ほ》しゅうもない。持ちかえって、柴田《しばた》どのへお土産《みやげ》となさるがましです」
「は、心得ぬ仰《おお》せをうけたまわります。主人|勝家《かついえ》こそははるかに御曹子《おんぞうし》のお身《み》の上《うえ》をあんじている、無二のお味方、人穴城《ひとあなじよう》をお手にいれたあかつきは、およばずながらよしみをつうじて、ご若年《じやくねん》のお行《ゆ》く末《すえ》を、うしろだてしたいとまでもうしております。……なにとぞ、おうたがいなくご受納《じゆのう》のほどを」
「だまれ、八風斎!」
 はッたとにらんだ伊那丸は、にわかにりんとなって、かれの胸をすくませた。
「いかに、汝《なんじ》が、懸河《けんが》の弁《べん》をふるうとも、なんでそんな甘手《あまて》にのろうぞ。この伊那丸に恩義を売りつけ、柴田が配下に立たせよう計《はか》りごとか、または、後日《ごじつ》に、人穴城をうばおうという汝らの奸策《かんさく》、この伊那丸は若年《じやくねん》でも、そのくらいなことは、あきらかに読めている」
「うーむ……」
 うめきだした八風斎《はつぷうさい》の顔は、見るまにまッさおになって、じッと、伊那丸《いなまる》をにらみかえして、眼《め》もあやしく血走ってくる。
「益《えき》ないことに暇《ひま》とらずに、汝《なんじ》も早々《そうそう》、北越《ほくえつ》へひきあげい。そして、勝家《かついえ》とともに大軍をひきい、この裾野《すその》へでなおしてきたおりには、またあらためて見参《げんざん》するであろう。そちの大事がる図面とやらも、そのとき使うように取っておいたがよい」
 深くたくらんだ胸のうちも、完全に見やぶられた八風斎は、本性《ほんしよう》をあらわして、ごうぜんとそりかえった。
「なるほど、さすが信玄《しんげん》の孫《まご》だけあって、その眼力《がんりき》はたしかだ。しかしわずか七十人や八十人の小勢《こぜい》をもって、人穴城《ひとあなじよう》がなんで落ちよう。敵はまだそればかりか、呂宋兵衛《るそんべえ》にもましておそろしい大敵が、すぐ背後《うしろ》にもせまっているぞ。悪いことはすすめぬから、いまのうちに柴田家《しばたけ》の旗下《きか》について、後詰《ごづめ》の援兵《えんぺい》をあおぐが、よいしあんと申すものじゃ」
「だまれ。よしや伊那丸ひとりになっても、なんで、柴田づれの下風《かふう》につこうや、とくかえれ、八風斎!」
「ではどうあっても、柴田家にはつかぬと申しはるか、あわれや、信玄の孫どのも、いまに、裾野に屍《かばね》をさらすであろうわ、笑止《しようし》笑止」
 毒口《どくぐち》たたいて、秘図《ひず》をふところにしまいかえした八風斎、やおら、伊那丸のまえをさがろうとすると、面目《めんもく》なげにうつむいていた忍剣《にんけん》と小文治《こぶんじ》が、左右から立って、
「若君にむかってふらちな悪口《あつこう》、よくもわれわれ両人をだましおったな!」
 と、猿臂《えんぴ》をのばして、八風斎のえりがみをつかもうとしたとき、
「方々《かたがた》! 方々! 敵の大軍が見えましたぞッ」
 にわかに起ったさけび声、陣のあなたこなたにただならぬどよみ声、伊那丸《いなまる》も咲耶子《さくやこ》も、民部《みんぶ》も蔦之助《つたのすけ》も、思わずきッと突っ立った。
「それ見たことか、はやくも地獄《じごく》の迎えがきたわッ!」
 さわぎのすきに、すてぜりふの嘲笑《ちようしよう》をなげながら、疾風《しつぷう》のように逃げだした上部八風斎《かんべはつぷうさい》。
 忍剣と小文治が、なおも追わんとするのを伊那丸はかたく止《と》めて、かれのすがたを見送りもせず、
「小さき敵に目をくるるな、心もとない大軍の出動とやら、だれぞ、はようもの見せい!」
「はい、かしこまりました」
 こたえた声音《こわね》は意外にやさしい、だれかとみれば、伊那丸のそばから、蝶《ちよう》のように走りだしたひとりの美少女、いうまでもなく咲耶子である。
 見るまに、物見《ものみ》の松の高きところによじのぼって、梢《こずえ》にすがりながら、片手をかざし、
「オオ、見えまする! 見えまする!」
「して、その敵のありどころは」
 松の根方《ねかた》から上をあおいで、一同がこたえを待つ。
 上では、緑の黒髪を吹かれながら、咲耶子《さくやこ》の声いっぱい。
「天子《てんし》ケ岳《たけ》のふもとから、南すそのへかけて、まんまんと陣取ったるが本陣と思われまする。オオ、しかも、その旗印《はたじるし》は、徳川方《とくがわがた》の譜代《ふだい》、天野《あまの》、内藤《ないとう》、加賀爪《かがづめ》、亀井《かめい》、高力《こうりき》などの面々」
「やや、では呂宋兵衛《るそんべえ》が人穴城《ひとあなじよう》をでたのではなかったか。してして軍兵《ぐんぴよう》のかずは?」
「富士川もよりには、和田《わだ》、樋之上《ひのかみ》の七、八百|騎《き》、大島峠《おおしまとうげ》にも三、四百余の旗指物《はたさしもの》、そのほか、津々美《つつみ》、白糸《しらいと》、門野《もんの》のあたりにある兵をあわせておよそ三千あまり」
「その軍兵は、こなたへ向かって、すすんでくるか?」
「いえいえ、満《まん》を持《じ》してうごかぬようす、敵の気ごみはすさまじゅう見うけられます」
 咲耶子の報告がおわると、物見《ものみ》の松のしたでは、伊那丸《いなまる》と軍師《ぐんし》を中心にして、悲壮な軍議がひらかれた。まえには、人穴城の強敵あり、うしろには徳川家《とくがわけ》の大軍あり、雨《あま》ケ岳《たけ》は、いまやまったく孤立無援《こりつむえん》の死地におちた。
 おそらくは、主従《しゆじゆう》の軍議もこれが最後のものであろう。軍議というも、守るも死、攻むるも死、ただ、その死に方の評定《ひようじよう》である。
 時は、たそがれ刻《どき》か、あるいは、宵《よい》か夜中か明け方か、いずれにせよ、闇でも花とちる身《み》にはかわりがない。
 こい! 徳川勢《とくがわぜい》——。
 伊那丸方《いなまるがた》の面々《めんめん》は、馬には飼糧《かいば》、身には腹巻をひきしめて、雨《あま》ケ岳《たけ》の陣々に鳴りをしずめた。
 そのころ、人穴城《ひとあなじよう》の望楼《ぼうろう》のうえにも、三つの人影があらわれた。大将|呂宋兵衛《るそんべえ》に、軍師《ぐんし》丹羽昌仙《にわしようせん》、もうひとりは客分の可児才蔵《かにさいぞう》。三人は、いつまでも暮れゆく陣地をながめわたして、なにやら密議に余念がない。心なしか、こよいはことに砦《とりで》のうえに、いちまつの殺気がみち満ちていた。
 
 富士《ふじ》はくれゆく、裾野《すその》はくれる。
 きょうで四日目の陽《ひ》は、まさに沈もうとしているのに小太郎山《こたろうざん》へむかって、駿馬項羽《しゆんめこうう》をとばせた木隠龍太郎《こがくれりゆうたろう》はそも、どこになにしているのだろう。
 かれは、よもや雨《あま》ケ岳《たけ》にのこした伊那丸の身や、同志の人々を忘れはてるようなものではけっしてあるまい。いや、断じてないはずの人間だ。それだのに、晩秋の靄《もや》ひくくとぶ鳥はみえても、駿馬項羽にまたがったかれのすがたが、いつまでも見えてこないのはどうしたわけだ?
 人無村《ひとなしむら》で、とんだ命《いのち》びろいをしたッきり、白旗《しらはた》の森《もり》のおくへもぐりこんでしまった竹童《ちくどう》も、ほんとに、頭脳《あたま》がいいならば、いまこそどこかで、
「きょうだぞ、きょうだぞ、さアきょうだぞ」
 と叫《さけ》んでいなければならないはず。
 お師匠《ししよう》さまの果心居士《かしんこじ》から、こんどこそ、やりそこなったら大へんだという秘命《ひめい》を、とっくのまえからさずけられている竹童《ちくどう》が、その、一生いちどの大使命をやる日はまさにきょうのはずだ。
 ところが、きのうあたりから、あの蛾次郎《がじろう》が、団子《だんご》や焼餅《やきもち》などをたずさえて、チョクチョク白旗の森にすがたを見せ、竹童のごきげんとりをやりだしたのも奇妙《きみよう》である。
轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%