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贋食物誌87

时间: 2018-12-08    进入日语论坛
核心提示:    87 アルコール㈰ 新聞の文章には、独特の技術論があって、これを簡単にマネすることはできない。そこでいま、それほど
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     87 アルコール㈰
 
 
 新聞の文章には、独特の技術論があって、これを簡単にマネすることはできない。そこでいま、それほど大きなスペースのものではないので、それを写させてもらう。半年くらい前の記事だが、おもしろいので切抜いておいた。
『十二日午後三時二十分ころ、東京都港区高輪三丁目で、何某さん(住所と姓名は私が省略)がタクシーに乗ったところ、後ろの座席に分厚い白封筒が落ちており、真新しい一万円札で百万円が入っていた。驚いた何某さんは、タクシーの運転手(姓名省略)と一緒に高輪署へ。
 同署で封筒に印刷してあった銀座の画廊に問い合わせたところ、落とし主は(住所省略)洋画家で、二紀会名誉会員の佐野繁次郎さん(七三)とわかった。しかし、自宅へ電話したところ、佐野さんはアトリエで油絵を創作中、百万円を落としたことには全く気付いておらず「そういえばありませんなァ」
 佐野さんは昼過ぎ、画廊から絵の代金など百万円を受け取ったあと、近くのレストランで好物のブドウ酒を飲んで、ホロ酔いきげんでタクシーに乗り、百万円を置き忘れたらしい。何某さんと何某運転手には、お礼にそれぞれ十万円が贈られた(以下三行略)』
 見出しには、「百万円忘れケロリ」、その横に小さい活字で「ホロ酔い佐野画伯ゆうゆう」となっている。
 佐野さんの風貌姿勢をよく知っている私としてはおおらかな気分になって面白かったのだが、読者も大部分はこの記事からイヤな気を受けなかっただろう。これがもっと若い年齢(私程度ではまだダメである)の人物が同じような立場になって、同じように振舞ったとしても、反感を買うとおもう。
 この「近くのレストラン」というのは、銀座並木通の「レンガ屋」である。
 佐野さんは昔からこのマダムの親がわりで、ときおり私がその店に行くと、夕刻までならほとんど百パーセントお会いすることになる。
 隅の席で、ゆったりとブドウ酒を飲んでいて、私は挨拶して二、三言葉をかわし、別の席へ行く。
 しばらくすると、ボーイがグラスにブドウ酒かブランデーを運んできて、
「佐野さんからです」
 と、置いてゆく。
 なかなかの味のものを見付けたから、飲んでみなさい、という意味である。佐野さんは長いパリ生活を送っているので、ブドウ酒の味はしぜんに分かってしまう(もちろん、フランス人にも味痴はいるにきまっているが)。一方、私は甘口か辛口かが分かる程度で、本当のところは「猫に小判」なのである。
 私はブドウ酒を飲むと、アルコール分が細胞の中にこもって、いつまでも抜けて行かないような気分になる。お酒(日本酒のこと)、ドブロクなどもそうで、ウイスキーだけは体内での通過速度がはやい。とくに、ブドウ酒は一|瓶《びん》もあけると、ぐったりして眠くなる。
 佐野さんのほうは、ときには二瓶も空にして、悠然としている。私が驚くと、
「ブドウ酒一瓶のアルコール分なんて、ウイスキーに直せば、ちょっぴりのものですよ」
 とおっしゃる。
 これは佐野さんのパリでの暮しが長かったので、体質がフランス人のようになってしまったのではないか。
 フランス人にとってブドウ酒はお茶と同じようなもので、昼食のときにはかならず飲む。そのあとで、パイロットが操縦|桿《かん》をにぎることも黙認されている、といささか恐怖を覚えるはなしを聞いた。
 
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