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今日からマ王9-6

时间: 2018-04-30    进入日语论坛
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 |特殊《とくしゅ》な組み合わせ四人衆は、黄色い|壁《かべ》に張りついて|緊張《きんちょう》していた。
「たたた大変なことになっちゃったっスよ!?」
 数え切れない程《ほど》の警備兵が廊下《ろうか》を走ってゆく。ダカスコスは鍵穴《かぎあな》から目を離《はな》し、連れの三人を振り返った。右目にはくっきりと丸い跡《あと》が残っている。
「やばいです。この上もなくやばいです。|女房《にょうぼう》の実家で粗相《そそう》をしちまったときに似てます」
「なるほど、ダッキーさんのご内儀《ないぎ》は|素晴《すば》らしい|家柄《いえがら》のお嬢様《じょうさま》なのですね。ではきっと頬《ほお》は煎《い》れかけの紅茶のようで、唇《くちびる》は深海の魚卵のごとき紅色なのでしょうね」
 こんな時だというのにステファン・ファンバレンは、女性を賛辞する用語に事欠かない。
「なんかそれうちのブリンちゃんを褒《ほ》めてくれてるんスか? ああさっそく記録紙に書き留めておかないと」
 サイズモアは密《ひそ》かにやめとけーと呟いた。だが、ご機嫌伺《きげんうかが》い語録帳に夢中のダカスコスには、心の声は届かなかった。
「それよりもこの第一級警備の中を、どのようにして|脱出《だっしゅつ》するかが問題ですな」
 往路があまりに容易だったため、帰りが怖《こわ》いとは思いもしなかったのだ。足元に置かれたお宝は、緑の布できっちりと覆《おお》われている。一見すると飲物保冷箱だが、この警備では検問も避《さ》けられまい、布を剥《は》いで調べられたら一巻の終わりだ。
 何しろ持ち出す直前までは、白い太文字で、でかでかと、「風の終わり」と書いてあったのだ。それこそ子供のお道具箱みたいに。そこで緊急策《きんきゅうさく》として、手近にあった塗料《とりょう》で真っ白にしてみた。文字はどうにか隠《かく》れたものの、今度は塗料の臭《にお》いが|強烈《きょうれつ》だ。
「……これは本当に外装用のベンキなのですかな。あまりの臭《くさ》さに胸が悪くなりそうだ」
「うーんでも土産物《みやげもの》の菓子《かし》箱じゃないんだから、名前書いたままでは運べませんよ|艦長《かんちょう》、あ」
 ダカスコスの鼻先で、虫が落ちた。
「こんなに追っ手がかかるとは、やはりこの|魔王《まおう》像はかなりの値打ち物であるに違《ちが》いない。ふふふ、鑑定眼《かんていがん》に自信がつきました。ではこの像はツェツィーリエに|捧《ささ》げよう。彼女には真に価値ある芸術品こそ|相応《ふさわ》しい!」
「でもそれ、何度見ても頭部がゾウですな」
 元魔王に魔王像を贈《おく》るのはどうよと、常に良識派のサイズモアは思った。でもやっぱり心の声は届かなかった。
「しかし皆《みな》の衆、いつまでもこの部屋でじっとしているわけには参りますまい。我等の任務はすり替《か》えた箱を陛下ご一行の元まで持ち帰ること。永久にここで足止めを食《く》らうわけにはいかぬし」
「そうですね、ツェツィーリエの喜ぶ顔を見るためにも、是非《ぜひ》ともこれを依頼主《いらいぬし》の元まで運ばないと」
「ああ、遠足は家に帰るまでが遠足っスよね!」
 一名ばかり|呑気《のんき》な奴《やつ》もいた。ダカスコスだ。
 人通りが|途切《とぎ》れたのを見計らって、彼等は忍《しの》び足で部屋を出た。通用口に向かってひたすら歩く。早く外に出たいと気は急《せ》くが、警備兵でもないのに|神殿《しんでん》内を走れば目立つだけだ。ここは|我慢《がまん》して忍び足である。
 誰《だれ》かとすれ違う度《たび》に、箱を見咎《みとが》められないかとビクビクする。しかし大抵《たいてい》の場合、相手は無関心で、|眠《ねむ》れる大人になってもらう必要はなかった。
 ようやく通用口が見えてきた。硝子越《がらすご》しに外の闇《やみ》も見える。
 相変わらず雪は降り続けていたが、客席では酔《よ》っぱらった観客達が、祭りの余韻《よいん》に浸《ひた》っていた。数が少なくなった|松明《たいまつ》に照らされて、係員が会場整備を始めている。
「ああ艦長、ファンファンさん、あと少しですよー。あと少しで神殿から出られま……」
「おい」
 角を曲がってきた|巨漢《きょかん》の兵士が、片手で四人を呼び止める。
「な、なんでしょうか。兵隊さま」
 サイズモアが代表して答える。全員|俯《うつむ》いたままだ。兵士は顔の半分が髭《ひげ》だったので、艦長は正直ちょっと|嫉妬《しっと》してしまう。なんという毛根|逞《たくま》しい男だ。
「その箱だが」
 ぎくー!
 ふと見ると、ファンバレンの手元で布が捲《まく》れ、白い本体が覗《のぞ》いている。
「その箱、誰が亡《な》くなったんだネ、んん?」
「亡く、なっ、た、というと」
「棺桶《かんおけ》サ、うん。白いから男の子だろ? 可哀想《かわいそう》にヨ、まだこーんなちっちゃいのに……」
 半分髭男は顔をくしゃくしゃにして、今にも泣きだしそうである。人は見かけによらぬもので、子供思いの|優《やさ》しい兵隊さんだったようだ。それにしても……。四人は密かに胸を撫《な》で下ろした。男の子用の棺桶と間違えてくれるとは。ほぼ誰にも見咎められることもなく、ここまで無事に来られたのは、作戦勝ちというよりも、葬列《そうれつ》と|勘違《かんちが》いされていたせいだったのか。
「うう、可哀想にナァ、うん。子供の葬儀《そうぎ》はほんとに切ないヨ、うん。おれの弟も十のときに戦争で死んだんヨ、そん時もこれっくらいの真っ白い棺桶だったんヨ、うん……シマロンに村ごと焼かれてねェ、うん……ほんとになあ、ほんとに戦《いくさ》は嫌《いや》だヨ、痛い目に遭《あ》うのはいっつも女、子供ばっかサ、うん。なのに今じゃ、弟死なせた国に|徴兵《ちょうへい》されてるなんてサ……十で逝《い》っチまったあの子に顔向けできねーヤ、なあ」
 兵士はハンカチで鼻をかみ、それを丸めて隠しに戻《もど》した。ついでに昆虫の抜《ぬ》け殻《がら》を取りだして、緑の布の上に置いた。
「よかったらこれ、供えてやってナ、なあ。弟がワライゼミ大好きだったんヨ、うん。もしあっちでうちのオチビに会ったら、イタズラ坊主《ぼうず》だけど|一緒《いっしょ》に遊んでやってナ、うん」
 男はもう一度鼻を啜《すす》ると、背中を丸めて去っていった。四人は黄色い制服を見送って、再び箱を持ち直す。
「なんか、|騙《だま》したみたいで心苦しいっスね」
「うむ」
 村を焼かれ、女子供が死んだと言っていた。サイズモアの職場は海だから、非|戦闘《せんとう》員が|被害《ひがい》に遭う可能性は低い。海戦に挑《いど》むのは|殆《ほとん》どが軍艦《ぐんかん》で、民間輸送船への|攻撃《こうげき》は禁じられているからだ。
「……子供が巻き込まれるのは、切ないな」
「私はもちろん、戦でも商売をしている身ですが」
 通用口の|扉《とびら》を押しながら、ファンファンが怒《いか》りを抑《おさ》えた声で言った。美を愛《め》でるときの口調とは正反対だ。
「国と国との争いに、こんな|無粋《ぶすい》な兵器を持ち込まれたくありませんね。東側の震災《しんさい》はこれと類似《るいじ》した箱の仕業《しわざ》だと、スワルドの情報屋で聞きました。河や港、城下の街並みの被害も甚大《じんだい》だとか。美しいものを無感情に破壊《はかい》していくなんて。こんなもの人間の使う道具ではありませんよ」
 闇に白く舞《ま》い落ちる氷の|結晶《けっしょう》が、一片、また一片と箱に載《の》った。
「……陛下は、どうお考えなのであろうな」
 サイズモアは顔を天に向け、倍に増えた星を|仰《あお》ぎ見た。
 
 決着をつけたのはノーマン・ギルビットの演説でも、ベラール|殿下《でんか》の度量の広さでもなく、勇者の|晩餐《ばんさん》に招待されていた、決勝戦|主審《しゅしん》の一言だった。
「この者の望みを叶《かな》えぬというのなら、国際|審判《しんぱん》連盟が|黙《だま》っておりませんぞ」
 剣《けん》と魔法の異世界においては、特殊なNGOである国際審判連盟の勢力は絶大らしい。大国シマロンの老権力者さえも、主審の言葉には逆らえなかった。
 あまり空腹を満たさない食事を終えてから、おれは大急ぎで主審の元に走った。
「ありがとう主審! どう感謝したらいいか、言葉ではうまく表せないくらいだ」
 髭の剃《そ》り跡くんは、にやりと唇を歪《ゆが》ませた。
「なかなか|面白《おもしろ》い勝負であった。久々に楽しんで裁かせて貰《もら》った」
「やー剃り跡《あと》さん、そんなにお褒《ほ》めいただいても……」
 おれは殆ど覚えてないし。
「特に仮面の下は多重人格という裏設定も楽しめたぞ。だがあまりに|突拍子《とっぴょうし》もない人物設定は、次回からは避《さ》けるのが無難だろうな。魔力をつかえるから魔王だと名乗るのは、些《いささ》か単純過ぎはしないか? だがしかし、貴公の|特殊《とくしゅ》な戦闘法『なりきりちゃん』に関しては、誰にも他言せぬことを|誓《ちか》う。安心しろ、審判には守秘義務があるからな」
「……守秘義務……」
 剃り跡さんは人差し指と中指をこめかみに当て、じゃっ、という具合に|挨拶《あいさつ》した。それにしても恐《おそ》るべし国際審判連盟。恐るべし国際特急審判。おれの特殊な戦闘法は
「なりきりちゃん」と命名された。さすがに早い。
「な、なりきりちゃん……」
 晩餐後は神殿の広間に連れ出され、自然と懇親《こんしん》パーティーに突入《とつにゅう》した。
 そんな|催《もよお》しがあるとは聞いていなかったし、おれとしては一分一秒でも早くベッドで眠りたかったのだが、何故《なぜ》か異様に張り切るシマロン側のセレモニー係は、主賓《しゅひん》の欠席を許してくれなかった。どうやら領土化された地域の出身だったらしい。決勝でシマロン本国を破ったおれたちを、我がことのように祝福してくれた。
 大急ぎで穴あき大桶《おおおけ》(修行僧《しゅぎょうそう》の気持ちが手軽に味わえる)で|身体《からだ》を流し、開催国《かいさいこく》が用意した衣装を物色する。これまでのおれの常識では、国際試合の壮行会《そうこうかい》や交流会は、|揃《そろ》いのチームジャージでOKだった。ところが今晩に限ってスタイリストにまとわりつかれ、オネーサマ言葉で嫌というほど説教をされた。
「んま、黒? 黒ですってェ!? ちょっとババ聞いた? あなた今、聞いてたぁ? 今時黒なんて恐ろしくて着られないわよぉ。黒ってねあぁた、|魔族《まぞく》の中でも一等|残虐《ざんぎゃく》な|恐怖《きょうふ》の大王が着る色よォ? あーたそんな可愛《かわい》い顔してるんだから黒だなんて、はぁい、眼鏡《めがね》と|帽子《ぼうし》とってーぇ……うはッ!?」
 彼女(彼?)は、おれの髪《かみ》と|瞳《ひとみ》の色を知ると、たっぷり五分間は目を開いたままで失神した。顔の横で両手を広げたまま、|凍《こお》りついたみたいに動かない。この|隙《すき》に好みの服を選んでしまおうかと、おれはクローゼットから勝手に緑のニットを引きずり出した。暖かそうだ。ところがおれが伸縮《しんしゅく》自在のズボンに脚《あし》を突《つ》っ込んだ|途端《とたん》、スタイリスト役は耐《た》えきれずに復活した。
「……ぅうそーぅ!? ちょっと|普通《ふつう》その緑ニットとか着るゥ? いやー信じられないわ、見て見てババ。ありえなーい! |漆黒《しっこく》の髪にダサ服、許せなーい」
 女のアシスタントにそう突っ込むと、細い腰《こし》をくねらせてやってきた。頼《たの》みもしないのにおれの髪を撫で、顔を近づけて瞳を覗き込む。
「あぁらなんか|禁忌《きんき》の色とか言われてるけど、よく見ると|素敵《すてき》ねえ美形ねえ男前ねえー……うっとり……けどもしかしたらその髪、酒宴《しゅえん》の席では人々を恐怖に突き落とすかもしれないわぁ。あたしなら落とされてもイイ! でもよかったら、お急ぎで染める? 栗色《くりいろ》か茶色に。ちょっと。ババ、金《かな》ダライ持ってきてぇ! だーいじょーぶよ男前ちゃん、あーたの髪の色は|誰《だれ》にもばらさないわ。なにしろ美容職の守秘義務がありますからね」
 スタイリストにまで守秘義務!
 当然、おれの選んだ緑のズボンは却下《きゃっか》され、ベッドに並べて見ているだけでも恥《は》ずかしいようなアイボリーのタキシードが用意された。しかもシャツの襟《えり》と袖《そで》にはレースが五割り増しで、過度な|装飾《そうしょく》が施《ほどこ》されている。やむなくその一揃《ひとそろ》いに身を包み、おれは宴《うたげ》の会場へと放り出された。
 着飾《きかざ》った貴族やお金持ちの|皆様《みなさま》に、あっという間に取り囲まれる。
「あなたが力ロリア代表の長なのね、残念ながら場内では見られずに|貴賓《きひん》席から観戦していたけれど……最終戦のあの雪、素晴らしかったわ」
「ノーマン・ギルビットってどんな方かと思っていたら、意外に童顔で可愛らしいのね。ねえノーマン様、願い事は何にしたの?」
「いやですわ、殿方《とのがた》の願いといったら決まっているでしょう」
「想像どおりなら、かなりのおませさんでごわすな」
 世界平和、正|捕手昇格《ほしゅしょうかく》、チーム優勝。これがおれ個人の希望だが、当たり前に過ぎるだろうか。
 どうして女性ばかりが集まってくるのかと思ったら、男のほうは皆《みな》それぞれ部屋の隅《すみ》で|囁《ささや》き合って、シマロンを破った国の|噂《うわさ》話に余念がないようだ。
「どーしたユーリ、飲みゃないのきゃーぁ?」
 ヴォルフラムは深緑のタキシードだった。カラタキ仲間だ。おれと違《ちが》って彼は本質的に美少年だから、どんな服を着せても似合う。ところがそういう奴《やつ》に限って、意外とシンプルでノーマルな服を宛《あてが》われたりしているものだ。
「お似合いですよ、ヴォルフラム閣下」
「おみゃえも……ぷははー、なんだそのヒラヒラした襟は」
「見せるんじゃなかった」
 振《ふ》り向くとヨザックが近づいてきていた。すらりと伸《の》びた|両腕《りょううで》は肩《かた》から剥《む》き出しで、腿《もも》の脇《わき》には際《きわ》どい高さにスリットが入っている。
 おれがまじまじと見詰《みつ》めていると、彼はハスキーボイスでしなを作ってきた。
「やーね陛下、そんなにじっくり見られると、ヨザックったら心臓から毛が生えちゃうわん。何か可笑《おか》しなところでもございますかぁ?」
「な、なぜ女装……」
 オレンジの解《と》いた髪によく似合う、臙脂《えんじ》と濃茶のタイトなドレス姿だ。グリエは急に真顔になった。
「禁断|症状《しょうじょう》で。正直、華々《はなばな》しい酒宴の席で、ムサくてつまらん野郎《やろう》の格好などする気にもなれませんや。あらでも陛……ノーマン様はお似合いよォ? ツェリ様に見つかったら|間違《まちが》いなく食われちゃうでしょうね……っとああ、陛下、客が誰も食ってないような皿には手をつけちゃいけません。毒味婦人役のオレをご指名くださいね」
「|了解《りょうかい》」
 会場は電気がないとは思えないくらいに明るかった。様々な色を放つ光源は、磨《みが》き上げられた石の床《ゆか》に反射して、昼間のように目映《まばゆ》かった。
 パーティーには前に一度出席したことがある。船上の小規模なカクテルパーティーだった。
 その頃《ころ》は貴族とか身分なんてものが|一切《いっさい》なくて、誰でも簡単に挨拶できたのだ。
 幼い可憐《かれん》なお姫様《ひめさま》の、初めてのダンス相手にもなれた。
 日本の野球|小僧《こぞう》だったおれが、いわゆる社交ダンスなど習っているはずもない。それこそコンラッド仕込みの付け焼き刃《ば》|舞踊《ぶよう》で、その場を何とか凌《しの》いだのだ。
「…………」
 ロをついて名前がでそうになり、自嘲《じちょう》気味の溜《た》め息をついた。きっちりセットされた前髪に指を差し込んで台無しにする。
 ピアノに似た楽器の演奏が始まった。一小節ごとに新しい楽器が加わって、それなりに完成した楽団になる。この会場も恐らく、|徐々《じょじょ》に舞踏会《ぶとうかい》になっていくのだろう。楽団の近くでは、|我慢《がまん》しきれず揺《ゆ》れている気の早いカップルもいる。
 おれは空のグラスを手に、淡《あわ》い黄色の|壁《かべ》により掛《か》かっていた。もう一週間以上まともには眠《ねむ》っていない。|欠伸《あくび》を堪《こら》えるのも限界だ。
 そういえば村田はどんなコスチュームを強要されているのか。あの色の抜《ぬ》けかけた人口|金髪《きんぱつ》も、そろそろ何色か判別しにくくなったカラーコンタクトも室内のどこにも見あたらない。もしかして一人だけ部屋にこもり、贅沢《ぜいたく》にも惰眠《だみん》を貪《むさぼ》っているのかも。だとしたら許せない。おれたちだって|睡眠《すいみん》に飢《う》えてるんだ。いっそ捜《さが》しに行くべきか。
 正面近くに視線をさまよわせていると、ちらりと光る銀色の軌跡《きせき》が目に入った。
「……フリン?」
 無意識に指を離《はな》れたグラスが、石の床に当たって砕《くだ》ける音がした。談笑《だんしょう》する人々を掻《か》き分けて、銀の髪が輝《かがや》いていた中央を目指す。
 優勝者、カロリア代表の妻は、好まぬ貴族達に囲まれて所在なげに立ち尽《つ》くしていた。
「フリン!」
 左右を見回し二度目におれを見つけると、たちまち表情が明るくなる。それが無性に嬉《うれ》しくて、歩くスピードを落としたほどだ。
「よかった|大佐《たいさ》、奥方様とはぐれてしまって」
「ツェリ様と|一緒《いっしょ》にここに来たの? ていうかさぁ、おれ、危険だから船に残ってろって言っただろ。なのになんでちゃっかり王都まで来てんのよ。いや|怒《おこ》ってない、怒ってねーけどさ」
「ごめんなさい……でもどうしても見届けたくて、|艦長《かんちょう》とダカスコスさんに頼み込んで併走《へいそう》させてもらったのよ」
「まあ、危ない目に遭《あ》わなかったんならさ、おれは別にいいんだけど」
「快適だったわ、ここに着くまではね」
 白い|手袋《てぶくろ》の指を軽く|握《にぎ》り、控《ひか》えめな笑《え》みで口元を綻《ほころ》ばせる。
 フリン・ギルビットは豊かな銀の髪を後ろでまとめ、白く滑《なめ》らかな項《うなじ》を曝《さら》していた。|両脇《りょうわき》に残した一房《ひとふさ》の髪が、肩を過ぎて胸まで下がっている。胸に飾《かざ》られた複数の半輝石《はんきせき》は、光の加減で色を変えた。
 光沢《こうたく》のある青いドレスは少々緩《ゆる》めで、胸の辺りが|僅《わず》かに余っていた。それでも瞳の色との組み合わせがよく、これ以上ないくらいに似合っている。
「……それもしかして、ツェリ様の?」
 そういうことは|訊《き》くもんじゃない。|雰囲気《ふんいき》台無しな質問に、フリンは笑いながら平気で答えた。
「もちろんそうよ。こんな上等な服、私が持っているわけがないじゃない」
「おれの好きな色だよ」
 銀に青はよく映《は》えた。もしも近くにツェツィーリエ上王陛下がいたならば、あら陛下、こういうときはたった一言でいいのよと、厳重なチェックを入れられていただろう。舞踏会での女の子はいつでもその言葉を待っているの。とても短くて簡単よ。
「……っあー、フリン……ちょっとこっち」
 絹の手袋に包まれた腕《うで》を掴《つか》み、窓際近くまで連れてゆく。硝子《がらす》の向こうでは雪が舞《ま》い続けている。薄曇《うサぐも》りの月光と少ない|松明《たいまつ》に照らされて、人気のなくなった|闘技《とうぎ》場が見下ろせた。ほんの数時間前まで、おれはあそこで足掻《あが》いていたのだ。
 でも今はもう何もかもが終わった。
 勝利はおれたちの手の中だ。
「優勝したよ」
 おれはフリンの両手首を掴み、顔を同じ高さにして言った。
「聞いたわ。おめでとうございます」
「なにを急に敬語なんだか」
「それで、願いは叶《かな》ったの? 箱の所有は正式にあなたの権利になった?」
「いや、見てもらわなきゃならない物があるんだ。えーとこれ。このサインでいいのかな」
 内ポケットの折り畳《たた》んだ紙を掴む。厚くて大きくかさばるので、取り出すまでがもどかしい。
「これなんだけど」
 わざと内容を教えずに、おれは彼女に公式書類を手渡《てわた》した。フリンは|利《き》き腕の手袋を外し、白い細い指で紙を広げる。読み進めるうちに|瞳《ひとみ》が大きく丸くなり、用紙を持つ手が震《ふる》えた。
「……これ」
 興奮のあまり頬《ほお》から血の気が引いている。次の言葉がでてこないようだ。
「カロリアを貰《もら》ったんだ」
「……まさか大佐、そんな……」
「まだ大佐なんて呼んでたんだな」
 隠《かく》し球が大成功した気分だ。頬が緩んでどうしようもなくて、格好いい男のふりさえできない。
「でもなー、ほらここ、ここのサインがおれの無|国籍《こくせき》文字だから、いまいち本人っぽく見えないんだよな。元奥さんの権限でさ、病後だから手元《てもと》不如意《ふにょい》ってしといてくれる?」
「カロリアを希望したの?」
「そうだよ」
 フリンは涙声《なみだごえ》だ。ここずっと厳しい状況下《じょうきょうか》で過ごしていたから、久しぶりの完璧《かんぺき》なドレスアップだろうに、残念ながら|涙《なみだ》の跡《あと》は避《さ》けられそうにない。
「カロリアは、自由なの?」
「そうだ」
 紙をおれに突《つ》き返し、女領主は両手で顔を覆《おお》った。俯《うつむ》く顎《あご》のラインに沿って、銀の髪《かみ》がサラりと流れてゆく。最初の一音を何度も失敗してから、ようやく言葉を取り戻《もど》した。
「……ありがとう」
「うん。泣くなよ」
「なんて言ったら、いいのか……判らないわ」
 ほとんど硝子に寄り掛かるようにして、ぽつぽつと話し続けるおれたちの間に、|無粋《ぶすい》な輩《やから》が割り込んできた。兵士特有の豊かな髪をしているが、服はおれみたいなタキシード系だ。若くて、男前で、背も高い。女性に対する礼儀《れいぎ》も|弁《わきま》えていそうだ。
「失礼、一曲|誘《さそ》っていただけませんか?」
 誘ってくれーと女子に|訴《うった》えるのが、シマロン流の「ダンスの誘い」らしい。
 フリンは手袋でそっと涙を抑《おさ》え、若い貴族に断った。
「ごめんなさい、私は|誰《だれ》も誘わないのよ」
「じゃあ、おれに誘われてくれよ……下手だけど」
 邪魔《じゃま》な男を置き去りにして、おれはフリン・ギルビットの指を握ってホールに向かう。光の溢《あふ》れる中央では、もうかなりの人数がワルツに興じていた。
「大佐っ」
「ずっと言おうと思ってたんだけど」
 実はおれ、ダンスの嗜《たしな》みがない。そのことではなくて。
「実はおれ、大佐じゃないんだよ。知ってた?」
 彼女は小さく|頷《うなず》いた。
「ホントはそんな大物軍人じゃねーの。|戦闘《せんとう》なんてしたこともないへなちょこなの」
 急に演奏がスローテンポになり、周囲がみんなお|互《たが》いに密着し始めた。
『チークは、まあこうやって揺れてりゃなんとかなります』
 ダンスの師匠《ししょう》の言葉が甦《よみがえ》る。
 フリンは俯いておれの肩《かた》に顔を押し付けた。声が寵《こ》もってよく聞こえない。
「……るの」
「なに」
「どうしてこんなに、よくしてくれるの?」
 露《あら》わになった首から背中が震えている。
「だって私は、あなたを大シマロンに売ろうとしたのよ。それより前にウィンコットの毒を譲《ゆず》って、あなたのお友達が撃《う》たれるきっかけを作ったのも私だわ。なのに何故《なぜ》、こんなにしてくれるの? カロリアの自由なんて……そんなことまで……もたらしてくれるの」
「さあ。それがおれにも判んないんだよなぁ」
「あなたは」
 指を軽く握ったままで、残った腕を背中に回す。頬と耳が触《ふ》れた。どちらかの耳が熱く、どちらかの頬がひんやりとしていた。
「あなたは、神様みたいなひとね」
 |吐息《といき》と|一緒《いっしょ》に零《こぼ》れた本心だ。
 |聴覚《ちょうかく》というより首筋に噺《ささや》きかけるように、おれは謎《なぞ》の男の正体を明かした。
 
 本当はおれ、魔王なんだよ。
 
 フリンは|一瞬《いっしゅん》、大きく体を震わせた。けれどそれだけで、あとは怯《おび》えて|叫《さけ》ぶでもなく、忌《い》み嫌《きら》って罵《ののし》りもしなかった。
 おれたちはフロアの中央で、踊《おど》るわけでもなく、色恋《いろこい》に心|躍《おど》らせるわけでもなく、ただ抱《だ》き合って立っていた。周りの男女が、あるいは男同士が、稀《まれ》に女性同士が、楽しげに頬を触れ合わせ、嬉《うれ》しげに|身体《からだ》を揺《ゆ》らすのを、四つの瞳で|呆然《ぼうぜん》と見ていた。
 互いに相手の|肩越《かたご》しに正反対の方向を見て、それでも瞳に映るのは、踊り続ける人々だけだった。
「多分、きみが」
 服の色も髪型《かみがた》も、ステップも違《ちが》う。違う人々が映っている。でも見ているものは同じだ。
 自分の周りで踊り続ける人々だった。
「……フリン・ギルビットが、カロリアと結ばれているからだと思う」
「ええ」
「これから現れるかもしれない新しい恋人とか、未来の夫候補とか、それどころか、もしかしたら国を残して死んじまったノーマン・ギルビット以上に……力ロリアと結ばれているからだと思う」
「そうよ……私はもう……カロリアと|結婚《けっこん》してる」
 おれたちは二人とも、自分の周囲で踊り続ける異国を見てるんだ。楽しげで力強く踊る周囲の国々を見て、不安で不安でたまらない。
「あの小さな世界を護《まも》るためになら、どんな汚《きたな》いことでもするわ。どんな|卑怯《ひきょう》なことでもする。そのせいで私がどう呼ばれてもいい、私がどう扱《あつか》われてもかまわない」
 おれたちはいつも不安で、時々は誰かの腕《うで》が必要になる。
 けれどだからこそ、その腕は、|優《やさ》しい恋人のものではない。
 同じ生き方をする、同士のものでなくてはならないんだ。
「フリン」
「なに?」
 おれはフリン・ギルビットを抱き締《し》めたが、腕にこめたのは愛ではなかった。チームメートを受け入れ健闘《けんとう》を称《たた》え合い、互いに喜ぶ「祝福」だった。
 きっとこれが答えなのだろう。
 
「カロリアを、きみの手に」
 
 そうでなくてはならない。
 フリンはおれの肩から顔を上げ、涙で潤《うる》んだ眼《め》を少し細めた。赤くなった鼻と耳が痛々しくて、触《さわ》ろうとするとそっと払《はら》われる。
「踊って。みんなと同じように」
「ああ」
「あなたは全然、下手じゃないわ」
「ほんとに?」
「本当よ」
 クイズみたいだなと思わず吹《ふ》きだしながら、おれはベースに合わせて不器用に動いた。カロリアの主《あるじ》はおれの首に腕を回し、眼のすぐ下で銀の髪を揺らした。
「帰ったら、盛大な式を挙げましょう」
「式って誰の」
「もちろん、あなたのよ」
 頬《ほお》を伝った涙の跡はそのままだが、フリンはもう、いつもの気丈《きじょう》さで|微笑《ほほえ》んでいる。
「あなたの葬儀《そうぎ》よ、ノーマン・ギルビット」
「|葬式《そうしき》かよ! おれ成人式もまだなのに、いきなり葬式挙げられちゃうのか」
 だがそれで、カロリアの統治権は正式にフリン・ギルビットの手に渡《わた》る。あの子供達には悪いけれど、ノーマン・ギルビットはもう生きて戻ることはない。先の領主は世を去った。
「陛下」
 新たなカロリアの統治者は、おれから腕を離《はな》し真顔で言った
「陛下にお預けした物を、そろそろこの手にお返しください」
「だからぁー、陛下なんて呼ぶなって! この上なんの嫌《いや》がらせだよ!? |大佐《たいさ》でもクルーソーでもどうでもいいけど、|普通《ふつう》にユーリって呼べばいいじゃん」
「ではユーリ、あれを返してもらわなくては」
 尻《しり》ポケットに突《つ》っ込んであった銀のマスクを掴《つか》む。軽く叩《たた》いて皺《しわ》を伸《の》ばしてから、夫の遺品を妻に返した。
「あっためておきました。冬だから」
「お尻で?」
 これこそ逆・羽柴《はしば》秀吉《ひでよし》作戦だ。
 フリンは懐《なつ》かしそうに仮面を見詰《みつ》めると、絹の布|越《ご》しに優しく撫《な》でた。それから両方の|手袋《てぶくろ》を外し、目の周囲の隈《くま》取《ど》りや口元の縁《ふち》取《ど》りを素手《すで》で辿《たど》った。
「お別れよ」
 心臓を射抜《いぬ》かれる。おれのことかと思ったのだ。
「仮面をつけた人形を、しきたりどおりに葬《ほうむ》るわ」
「うん、おれもそれがいいと思う」
「陛下」
「だからぁー」
 言い返そうとしたおれを、神妙な面持《おもも》ちで押し戻す。
「いいえ、陛下よ。聞いてちょうだい。どうかお聞きになって」
「ちょっと……っ」
 カロリアの主、フリン・ギルビットは、軽く|膝《ひざ》を折っておれに頭を垂れた。両手で戴《いただ》いたおれの手を、銀のマスクに包み込む。
「もしも私の地に百万の兵士と、山なす黄金があったなら何も迷いません。けれど民も土地も今や飢《う》えたまま。この先どのような礼をもって、貴国の恩に報《むく》いるべきかさえ判らない」
 新しいダンスのポーズなのかと、周囲の連中がこちらを窺《うかが》う。だが、彼等はすぐに飽《あ》きて、自分達の曲へと戻《もど》っていった。
「……けれどこれだけは|誓《ちか》いましょう、そして決して違《たが》いますまい。[#珍しく括弧内の改行]
 カロリアは、永遠に貴国の友。そして私は永遠に、あなたの友です」
 フリンは優雅《ゆうが》に微笑むと、手の甲《こう》にそっと唇《くちびる》を寄せた。|雰囲気《ふんいき》に飲まれやすいおれの眼には、彼女の頭に|輝《かがや》く冠《かんむり》が見えた。
「しもべと言えぬ私をお許しになって」
「許すよ……ていうか許すわけじゃない。下僕《しもべ》になんかなってもらいたくねーよ! 立て、立つんだフリン、明日に向かって……だからホラしゃがむなって。目立っちゃうし」
 その時になってようやく複数の視線を感じた。近くで踊っている人々ではない。連中はおれたちに無関心だ。政治とダンスに夢中になっている。では|恐《おそ》らく護衛中のヨザックと、お目付中のヴォルフラムだろう。全方向をぐるりと|確認《かくにん》すると……いたいた。南の窓側に、見るからに|不機嫌《ふきげん》な三男が立っている。両手に酒のグラスを持ち、どちらもすっかり空っぽだ。
「フリン、あそこにヴォルフがいるから、ちょっとあっちでご歓談《かんだん》ください」
「え、でも私……彼とはあまり……」
「大丈夫《だいじょうぶ》だって、絶対仲良くなれるってェ。ああ見えてあいつすごいいい奴《やつ》だし、友好関係築いておくと得だよ? なんせあのセクシークィーンツェリ様の|息子《むすこ》、|魔族《まぞく》の元王子様なんだからさ」
 どこかにヨザックもいるだろう。彼に頼《たの》むなり自分で動くなりして、そろそろ村田を捜《さが》さないとまずい。部屋で寝ているならそれはそれでかまわないが、とにかく確認だけはしたい。着《き》替《が》えに手間取ったという|遅《おく》れようではないし、室内にいるならとっくに会っているはずだ。
 彼の身に何事か起こっていなければいいのだが……。
「むーらーた、むらけーん、むーらむらー」
 不安を|誤魔化《ごまか》すように応援歌《おうえんか》を口ずさみながら、おれは人の波をすり抜けた。会場の入り口近くには、黄金の女神《めがみ》像が(しかも葉っぱ一枚残して全裸《ぜんら》)二体も飾《かざ》られている。宝物庫に押し入ったという盗賊《とうぞく》も、どうしてこういう物を盗《ぬす》まなかったのだろう。
 乳白色の石の床《ゆか》を一歩外れ、人造大理石の廊下《ろうか》に出た途端《とたん》に、扉《とびら》の影《かげ》から現れた手に服を掴まれる。
「あの話は本当か」
 |握《にぎ》った手首を後ろにねじ上げられて、反射的に短く|叫《さけ》んでしまった。
「痛たっ」
 途端に相手の力が緩《ゆる》む。廊下の隅《すみ》の薄暗《うすぐら》い場所へと引っ張られるが、さっきとは力の強さが違《ちが》う。苦痛が少ないよう|微妙《びみょう》に加減されている。肩《かた》を押さえる長い指は、ほとんど乗せられているだけだ。
「済まなかった、痛めつける気はなかったんだ。首はどうした? 喉《のど》は、もう血は止まったのか? なあ教えてくれ。あの話は本当なのか?」
「あんた何で、嘘《うそ》だろ、どうしてこんな所に……」
 |怪我《けが》を思い出し、包帯で覆《おお》われた喉を、|庇《かば》うように手で隠《かく》す。相手はおれの肩に手を置き、地面に膝を突いて下から覗《のぞ》き込んでくる。
 整った顔立ちに高い鼻梁《びりょう》、がっしりとした|屈強《くっきょう》な肉体。碧眼《へきがん》をいつも以上にぎらつかせた、アーダルベルト・フォングランツだった。
 泥《どろ》にまみれた|金髪《きんぱつ》は、頬や額に貼《は》りついている。服も髪《かみ》も、靴《くつ》までずぶ濡《ぬ》れで、どこもかしこも汚《よご》れていた。
 彼らしくなく焦《あせ》った様子で、おれの肩を軽く押し、冷たい|壁《かべ》に押し付ける。
「教えてくれ、あの話は本当か?」
 
「お前は本当に、ジュリアの生まれ変わりなのか」
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