[書き下し文]子曰く、麻冕(まべん)は礼なり。今、純(いと)なるは倹(けん)なり、吾は衆に従わん。下に拝するは礼なり。今上(うえ)に拝するは泰れる(おごれる)なり。衆に違うと雖も、吾は下に従わん。
[口語訳]先生が言われた。『麻の冠は礼の道に依拠している。今の風潮で、絹の冠をしているのは倹約のために過ぎない。しかし、冠の礼については、私は大衆の方法(絹の冠)に従う。君主に招かれれば、宮殿の下で拝礼するのが礼である。今の風潮で、宮殿の上で拝礼するのは奢り高ぶっているのである。この拝礼の方法については、私は大衆の方法と異なっていても、宮殿の下で拝礼をしたいと思う。』。
[解説]孔子が『古来からの周礼』と『今風の礼』を比較して、その許容限度を示したものである。孔子は、大衆が『倹約のために仕方なくする絹の冠』については認めても、『傲慢のためにする宮殿の上での拝礼』は認めなかったのである。