むかし、遠江(とおとうみ→静岡県)の山口村に、豊田佐吉(とよださきち)という、貧しい大工の息子がいました。
 まだ小学校を卒業したばかりの十二才ですが、佐吉は家計を助けるためにお父さんの仕事を手伝いするようになりました。
 ある日の夜遅く、はたおりをしていたお母さんが佐吉にたずねました。
「おや? 佐吉。どうしたね。また、お父さんにしかられたか? お父さんは、きびしい人だからね。でもね、つらくてもがんばるんだよ。お父さんは、お前を立派な大工にしたいんだからね」
 そう言うお母さんの手は、バッタン、バッタンと、はたおり機を忙しく動かしています。
 それをしばらく見ていた佐吉は、お母さんにたずねました。
「ねえ、それって、一日に、どのくらいおれるの?」
「ああ、これかい。そうだね、頑張っても、一尺(いっしゃく→三十㎝)ぐらいかねえ」
 お母さんは、にっこり笑って答えましたが、なんだか、とても疲れている様子です。
(お父さんや僕の仕事は、夜になると終わるけど、お母さんは朝から夜中まで一日中だ。何とか工夫して、お母さんに楽をさせてあげたいな)
 佐吉はそう思いながら、はたおり機の動きをじっと観察しました。
(手を、上に、下に、左に、右に。・・・なんだ。布をおるのは意外と簡単だな。これを自動で出来れば、もっと簡単に、もっとたくさんの布がおれるかもしれないぞ)
 手先が器用で、大工としてもなかなかの腕前だった佐吉は、その日からはたおり機を改良して、なんと自力で、足ぶみ式のはたおり機を作りあげたのです。
「どう、お母さん」
 佐吉が作ったはたおり機を動かしたお母さんは、びっくりです。
「えー、これは前よりずっと楽だし、たくさん布がおれるわ。佐吉、ありがとう」
「えへへ。こんなのはまだまださ。もっともっと改良して、自動で布がおれるはたおり機をつくってやるよ。僕の夢はね、このはたおり機で、お母さんも、村のみんなも、そして日本の人たちみんなを、もっと楽にすることさ」
 その言葉通り、佐吉は足ぶみ式のはたおり機を何十年もかけて改良していき、ついに六十才の時に、完全全自動の『豊田式自動はたおり機』を完成させたのです。
 これは、日本が世界に誇る大発明です。
 その後、佐吉は『豊田式自動はたおり機』の特許権を売った資金で息子に国産自動車の開発を始めさせました。
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