ある日、おじいさんがいつものように山へたきぎを取りに行くと、どこからともなく、おいしそうなお酒のにおいがただよってきました。
(はて、不思議な事もあるものだ)
おじいさんがにおいのするほうへ歩いていくと、竹やぶの前に出ました。
すると、どうでしょう。
竹やぶの中には竹でできた酒だるがあって、スズメたちがそのまわりで、チュンチュンと楽しそうにおどっているのです。
(これはこれは、なんて可愛いスズメたちだ)
おじいさんがニコニコして見ていたら、一羽のスズメが飛んできて、
「さあ、おじいさんもお酒を飲んでください。このお酒を飲むと良い事が続いて、きっと幸せになりますよ。チュン、チュン」
と、いうのです。
おじいさんはスズメたちのところに行って、そのお酒をごちそうになりました。
「うん、これはうまい」
こんなおいしいお酒は、今まで飲んだ事がありません。
それに一口飲んだだけで、心がウキウキし、体が元気になってくるのです。
すっかりご機嫌になったおじいさんは、スズメたちと一緒になっておどりはじめました。
♪酒がうまいぞ、いい気持ち。
♪チュン、チュン、チュン
♪はあ、こりゃこりゃ
♪チュン、チュン、チュン
おじいさんのかけ声にあわせて、スズメたちもおどります。
もう楽しくて楽しくて、おじいさんは時間のたつのも忘れてしまうほどでした。
やがて夕方になって、ようやくおどりが終わりました。
「いやあ、楽しかった。ありがとう」
おじいさんはスズメたちにお礼を言って、帰っていきました。
さて、おじいさんの家のとなりに、なまけ者の若者が住んでいました。
おじいさんの話を聞くと、若者もそのお酒が飲みたくなって、次の日、さっそく山へ出かけていきました。
お酒のにおいのするほうへと歩いていくと、おじいさんの言ったとおり竹やぶがあって、スズメたちがお酒を飲みながらおどっています。
若者は、竹やぶに入っていくなり、
「おい、おれにもその酒を飲ませてくれ」
と、言いました。
するとスズメたちは、首をふって言いました。
「このお酒を飲むと、とんでもない事になるから、やめたほうがいい。チュン、チュン」
「うるさい。はやくよこせ!」
若者はいきなり酒だるをつかむと、一息にお酒を飲んでしまいました。
すると、どうでしょう。
若者の体はみるみる小さくなっていき、口は口ばしに、手は羽に変わって、とうとうスズメになってしまったのです。
スズメになった若者は竹やぶを追われて、チュンチュンと鳴きながら、どこへともなく飛んでいきました。
そしておじいさんの家では、スズメたちが言ったように良い事が続いて、やがて村一番のお金持ちになったという事です。