これは昔のことなめり。今はいと安げなり。
(現代語訳)
愛する我が子を法師にしてしまったら、それこそ気の毒だ。世間では、法師をまるで木石などのように思っており、とてもかわいそうだ。法師は、精進物のひどく粗末な食べ物を食べ、寝るときさえ、また若い法師は何かと気を引かれるだろう、女などがいる所をどうして避けるように覗かないでいられようか、しかし、人々はそんなことにもうるさく言う。ふつうの法師でもそうなのに、まして修験者などはたいそう苦しいようだ。疲れてちょっと居眠りしても、「あの修験者は眠ってばかりだ」などと非難される。ものすごく窮屈で、いったいどんな気持ちでいるのだろう。
もっとも、これは昔のことのようだ。今ではだいぶ気楽なようすだ。