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八墓村-第五章 鎧よろいの中(3)

时间: 2022-06-11    进入日语论坛
核心提示:姉がふところからさぐり出したのは私のハンカチだった。「これ辰弥さんのね。わたしはっとして、長持のふたをとってみると、お布
(单词翻译:双击或拖选)

姉がふところからさぐり出したのは私のハンカチだった。

「これ辰弥さんのね。わたしはっとして、長持のふたをとってみると、お布団の上にボタボタと、蝋ろうのしずくが垂れています。そこでいろいろやっているうちに、ガタンと長持の底がひらいたのですよ。それでこうしてやってきたんだけど……」

姉はそこでまた、怪しむように私たちの顔を見くらべながら、

「それにしても辰弥さん、あなたはどうしてこの抜け孔を知ってるの。だれから教わったの?」

もうこうなっては、姉に隠す必要はなかったが、典子のまえでそのいきさつを、打ち明けるのははばかられた。

「姉さん、それについては、いずれおうちへかえってからお話ししますが、それよりも姉さん、あなたにお尋ねしたいことがあるのです。姉さん、あそこにあるあれ、いったいあれはなんでしょう」

提灯をかかげて、例の龕がんのほうを、指さすと、姉もはじめて気がついたらしく、あっというような叫びをあげてたじろいだが、すぐ気を取り直して二、三步前進すると、

「まあ、変ねえ、だれがこんなところへ持ってきてすえたんでしょう」

と、あえぐようにつぶやいた。

「姉さん、姉さん、するとあなたはこの鎧を御存じなんですか」

「ええ……ずっとまえに一度見たことがあるわ。ほら、辰弥さんも御存じでしょう。離れの裏に祠ほこらのようなものがあるでしょう。いつかあなたは、持仏堂かときいてたわね。ほんとはあれ、持仏堂ではなくて、お社やしろなの。表向きはお稲いな荷り様ということになっていますが、ほんとうは、ほら……」

と、姉はいくらかためらったのち、

「あなたもきっと、話にきいているでしょう。ずっと昔、この村のひとたちに殺された尼あま子この大将──あのひとをおまつりしてあるんですって、あの鎧もその大将のものだとかで、それが御神体なのよ。ほら、あの石棺のなかにおさめて祠のなかにおまつりしてあったんですけれど、ずうっとまえ、そうねえ、いまから十五、六年もまえになるかしら、急にそれが見えなくなったんです。泥棒が持っていったのかもしれないが、変な泥棒もあればあるもんだって、その時分いってたんですよ。でも、変ねえ。だれがこんなところへ持ってきてすえたのかしら」

これで、だいたい、甲冑の由来はわかったけれど、問題は甲冑よりも、その甲冑のなかにいる人物なのだ。

「姉さん、よくわかりました。それで鎧の由来はよくわかりましたが、それよりも……姉さん、よく見てください。兜の下をよく見てください。だれか、鎧のなかにいるでしょう。いったい、あれはだれなんです」

姉の春代ははじかれたように私の顔をふりかえったが、気の弱そうな微笑をうかべて、

「まあ、いやですよ。辰弥さん、おどかさないでくださいよ。わたしは心臓が悪いんだから……」

「姉さん、うそじゃありません。よく見てください。たしかにだれかいるんですよ。ぼくはいまこの龕の上にあがって見てきたんですよ」

姉の春代は、おびえたように龕がんの上をふり仰いだ。龕の上からあの甲冑を着た死人が、無気味な眼をして見下ろしている。姉ははげしく呼吸をうちへ吸った。それから、提灯をたかだかとかかげて、吸い寄せられるように龕のほうへちかよっていた。

姉のこのただならぬ気配を、私も典子も手に汗握って見守っていた。

姉は龕にしがみつくようにして、兜の下を見つめていたが、急にはげしく身ぶるいすると、うわずったような眼を私に向けて、

「辰弥さん。お願い。わたしをこの壇の上へあげて」

蒼あお白い姉の額には、いっぱい汗がうかんでいる。私はすぐに手伝って、姉の体を壇の上に押しあげた。姉は恐怖と好奇心のいりまじった眼で、ちかぢかと兜の下の顔を見つめている。息使いがしだいにあらくなってくる。姉はたしかにこの死人を知っているのだ。……

私は呼吸をつめて、姉の様子を見守っていたが、そのとき、典子がふと私の袖そでをひっぱった。

「なに? 典ちゃん?」

「お兄様、こんなところに何か書いてあるわ」

典子の指さすのは、姉の春代の立っている壇の、上から五寸ほどのところである。なるほどそこに横書きで何やら石に彫りつけてある。私は提灯の灯をちかづけて、その文字を読んでみたが、そのとたん、思わずギョッと呼吸をのんだ。

猿さるの腰掛。

その四文字はたしかにそう読めるのである。猿の腰掛──猿の腰掛──ああ、私はいつかこの言葉をきいたことがあるではないか。そうだ、あれは私が田治見家へついた晚のことだった。姉の春代が離れへ来る、不思議な侵入者のことを話したが、その侵入者の落としていったと思われる、地図のようなものに、そういう地名が書き込んであったという、そして、私もそれと同じような地図を持っているのだが、ああ、そうするとあの地図はこの地底の迷路を示しているのか。

私がまた、新しく持ち上がったこの疑問に、茫然として立ちすくんでいるときだった。突然頭上でキャッという姉の悲鳴がきこえた。私が驚いてふりかえったとき、姉はふらふらとよろめいたかと思うと、

「危ない!」

両手をひろげた私の腕へ、くずれるように落ちてきた。

「ああ、辰弥さん、辰弥さん、いったいこれはどうしたというの。わたしは気がちがったの。それともわたし夢を見てるの」

「姉さん、しっかりしてください。どうしたんです。姉さんはあのひとを知ってるんですか。だれです。いったい。あれはだれです」

「お父さん」

「え?」

「二十六年まえに山へ逃げこんで、そのまま行方のわからなくなったお父さん。……」

姉はわたしにしがみついて、気が狂ったように泣き出した。

私はまるで脳天から、真っ赤に焼けた焼け串ぐしでも、たたきこまれたようなショックを感じた。典子もそばで、茫然として眼を見はっている。……

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