日语童话故事 日语笑话 日语文章阅读 日语新闻 300篇精选中日文对照阅读 日语励志名言 日本作家简介 三行情书 緋色の研究(血字的研究) 四つの署名(四签名) バスカービル家の犬(巴斯克威尔的猎犬) 恐怖の谷(恐怖谷) シャーロック・ホームズの冒険(冒险史) シャーロック・ホームズの回想(回忆录) ホームズの生還 シャーロック・ホームズ(归来记) 鴨川食堂(鸭川食堂) ABC殺人事件(ABC谋杀案) 三体 失われた世界(失落的世界) 日语精彩阅读 日文函电实例 精彩日文晨读 日语阅读短文 日本名家名篇 日剧台词脚本 《论语》中日对照详解 中日对照阅读 日文古典名著 名作のあらすじ 商务日语写作模版 日本民间故事 日语误用例解 日语文章书写要点 日本中小学生作文集 中国百科(日语版) 面接官によく聞かれる33の質問 日语随笔 天声人语 宮沢賢治童話集 日语随笔集 日本語常用文例 日语泛读资料 美しい言葉 日本の昔話 日语作文范文 从日本中小学课本学日文 世界童话寓言日文版 一个日本人的趣味旅行 《孟子》中日对照 魯迅作品集(日本語) 世界の昔話 初级作文 生活场境日语 時候の挨拶 グリム童話 成語故事 日语现代诗 お手紙文例集 川柳 小川未明童話集 ハリー・ポッター 新古今和歌集 ラヴレター 情书 風が強く吹いている强风吹拂
返回首页
当前位置: 首页 »日语阅读 » 日本名家名篇 » 横沟正史 » 八つ墓村 » 正文

八墓村-第五章 鎧よろいの中(5)

时间: 2022-06-11    进入日语论坛
核心提示:その晚も例によって姉の春代は、小梅様と小竹様のあいだに入って寝ていたが、ふたりの大伯母が春代の頭越しにかわすヒソヒソ話に
(单词翻译:双击或拖选)

その晚も例によって姉の春代は、小梅様と小竹様のあいだに入って寝ていたが、ふたりの大伯母が春代の頭越しにかわすヒソヒソ話にふと眼をさました。しかし、なんとなくふたりの大伯母たちの話しぶりが、あたりをはばかる様子なので、寝たふりをしたまま、聞くともなしに聞いていると、まず毒という言葉が耳についた。それからいつまでもこんなことはつづけていられないだの、つかまったら死刑にきまっているだの、あいにくあの様子ではなかなか死にそうもないだの、またあばれ出したら大騒動じゃだの、そんな話がきれぎれに聞こえて最後に、いっそお弁当に毒を仕込んで……そういう言葉が耳に入ったときには、姉の春代もあまりの恐ろしさに全身汗ビッショリだったという。

「子どものときにふかく心に彫りつけられた事柄は、生涯忘れるものではありません。わたしはいまでもあのときの、伯母さまがたの話を思い出すと、なんともいえぬほど、恐ろしい思いがするのです」

姉は恐ろしそうに肩をふるわせると、襦じゅ袢ばんの袖でそっと涙をおさえた。姉のこの話の恐ろしさは、十分私の胸にもしみた。私は腰から下が、氷のように冷えていくのをおぼえた。

「姉さん、姉さん、そうすると伯母さまがたはあの事件のあとしばらく、父をあの地下道にかくまっていたというのですか」

「いまになってみるとそうとしか思えません。伯母さまがたはきっと食事をはこんでいたんでしょう」

「そして、とうとう、毒をのませて……」

「辰弥さん、よしんばそうだったとしても、伯母さまがたを悪く思っちゃいけませんよ。伯母さまがたは家名を考え、世間体を考え、また父のためを考えて、きっとそうなすったにちがいありませんわ。父は伯母さまがたの秘蔵っ子でした。眼の中へいれても痛くないほど、伯母さまがたは父を大事にしていたのです。その父に毒をのませて……そのときの伯母さまがたの御心中をお察しすると、お気の毒でなりません」

この家にまつわる恐ろしい悪因縁を考えると、私は慄りつ然ぜんたらざるをえなかった。

おそらくこれは姉の推量どおりなのであろう。小梅様と小竹様は、家名を思い、世間体を考え、さらにまた捕らえられたときの父のなりゆきを思いはかって、ひそかに死にいたらしめたにちがいない。そしてそのことは、父にとっても慈悲ぶかい処置だったろう。しかし、それにもかかわらず、私はなんともいえぬドスぐろい思いに、胸をふさがれずにはいられなかった。

「姉さん、わかりました。ぼくもこのことはけっしてだれにもしゃべりません、典子さんにもかたく口止めしておきます。姉さんももうこのことは忘れておしまいなさい」

「ええ、そうしましょう。どうせこれは、ずうっと昔のことですから……ただ、わたしの心配しているのは、このことと、ちかごろのあの毒殺騒ぎと、何か関係があるのじゃないかと思って……」

私はドキッとして、姉の顔を見直した。

「姉さん、それじゃあなたは伯母さまがたが……」

「いいえ、いいえ、そんなことのあるべきはずはないけれども、久弥兄さんの死んだときのことを思い出すと……」

その父を毒殺した双生児の二人が、またその息子を殺したのではあるまいかという疑いは、姉としては無理のないところかもしれなかったし、それにああいう高齢に達した老婆というものは、どこか人間ばなれがしていて、ものの考えかたにも、常識では測り知れないようなところがあった。姉はそれを恐れているのだ。

「姉さん、そんな馬鹿なことはありませんよ。それはあなたの思い過ごしというものです。それより姉さん、あの抜け孔ですがね。どうしてあんなものがこの家にはあるんです」

「ああ、あれ……わたしも詳しいことは知らないけれど、なんでもこの家の先祖のひとりに、たいそうきれいな女のひとがあって、御領主様のお城へ御奉公にあがったところ、お殿様のお手がついたのだそうです。それがなにかむずかしい事情があって、お城をさがらねばならなくなったんだそうですが、お殿様のほうではそのかたを忘れかねて、ときおり、この屋敷へお忍びで来られたそうです。この離れもそのために建てましたのだということですから、あの抜け孔なども万一の用意のために造っておいたのではないでしょうか。でも、辰弥さん」

「はい」

「あなたはもう、あんなところへ入るのはおよしなさいね。またなにか、悪いことがあるといけないから」

「はあ、よします」

姉を安心させるために、私はキッパリそういいきったが、むろん、よす気などは毛頭なかった。

ひとつの疑問が解けたと思うと、またそこから新しい疑問が芽生えていく。小梅様と小竹様の奇怪な仏参のなぞはとけたが、そこからまた変質しない死体のなぞと、猿の腰掛の疑問がうまれてきたのだ。いったい、地下迷路の地図などが、どうして私の守り袋に入っていたのか。亡くなった母の言葉によると、それが私に幸福をもたらすかもしれないということだったが、あの変てこな地図や御詠歌に、どうしてそんな効能があるのだろうか。

それはさておき、その晚はほかの話にかまけて、私はとうとうあの地図のことを、姉に切り出す機会をうしなった。しかも、姉はその晚から、高熱を出してどっと寝ついてしまったので、しばらく私はそのほうのことはあきらめなければならなかった。


轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG: