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八墓村-第五章 鎧よろいの中(10)

时间: 2022-06-11    进入日语论坛
核心提示:搜索复制洞窟の怪物そうはいうものの、小梅様と小竹様のお茶の招待は、それが二度目であっただけに、私もこのまえのときほど怖お
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洞窟の怪物

 

そうはいうものの、小梅様と小竹様のお茶の招待は、それが二度目であっただけに、私もこのまえのときほど怖おじ恐れはしなかった。小梅様と小竹様の気持ちは、よくわかっているのだ。

おそらくふたりは、姉の春代のうわごとから、地下道の秘密が気がかりになってきたにちがいない。小梅様と小竹様はずいぶんの老齢で、本ほん卦けがえりをしたようなところもあるが、なかなかどうして狡こう猾かつで抜け目がないのだ。姉の春代がどの程度まで地下道の秘密をかぎつけたのか──それをたしかめるために、今夜ふたりはあの地下道へ、もぐりこむつもりにちがいない。そして、それには私が眼をさましていてはぐあいが悪いので、一服盛って眠らせようという魂胆にちがいないのだ。

よしよし、それならば眠ってあげましょう。重なる心労と興奮で、このところ私はいたく疲労している。ここらで一眠り、ぐっすり眠るのは、体のためにもよいであろう。小梅様と小竹様よ、どうぞ御自由に、地下道を検分しておいでなさいませ。

私は離れへひきあげると、電気を消して、お島の敷いておいてくれた寝床へもぐりこんだが、しかし、心の中にある種の緊張があると眠り薬もきかぬものとみえるのだ。私は別に待っているわけではなかったが、小梅様と小竹様の現われるのを、いまかいまかと聞き耳をたてていると、すっかり眼が冴さえ、眠り薬の利き目はいっこう現われそうもなかった。

こうして私は寝床のなかで、一時間あまりも輾てん転てん反側していたであろうか。すると果たして、十五間けんの長廊下のほうから、ひそやかな足音がきこえてきたかと思うと、例によって手燭てしょくをかかげた小梅様と小竹様が、そっと私の部屋へ入ってきた。私があわてて狸たぬき寝入りをしてみせたことはいうまでもない。

小梅様と小竹様は、手燭をかかげて私の顔をのぞきこむと、

「それ、ごらん、辰弥はよう寝てござるじゃないかえ。小竹さんのように、キナキナ心配することはありゃせんえ」

「ほんになあ。さっきお茶を飲むとき、変な顔をしていたで、もしや気がついたのじゃあるまいかと心配したが……このぶんなら大丈夫えなあ」

「大丈夫とも。わしらが帰ってくるまでに、眼のさめるようなことはありゃせん」

「そんなら、小梅さん、この間にちょっと行ってみよ」

「あいあい」

小梅様と小竹様は、しずかに部屋から滑り出ると、またいつかのように、回り廊下の障子の上に、ふたつの影をおとしながら、裏の納なん戸どへ入っていったが、やがて長持のふたをあけたりしめたりする音がしたかと思うと、あとはまた真夜中の静けさにもどって、人の気配はさらになくなった。

さて……と、そこで私は寝床のなかで、大きく深呼吸をしたことだ。いったい私はどうしたものか、ここでこのままふたりの帰りを待っていてよいものか、それとも小梅様と小竹様をつけていくべきか。私はしばらく迷うたが、結局、このまま待っているよりしかたがないだろうと心をきめた。どうせ小梅様と小竹様の行く先はわかっているのだ。ふたりの老婆は「猿の腰掛」まで出向いていって、屍蝋となった仏の安否を見とどけようとしているのである。つけていったところでしかたがない……。

そう考えた私は、そのまま寝床のなかで、ふたりの帰りを待つことにしたのだが、あとから思えばこの怠慢が、私やまた小梅様や小竹様の身に、恐ろしい災禍をもたらせたのだ。ああ、あのとき私が思いきって、ふたりのあとをつけていたら、よもやあのような恐ろしいことは起こりはせなんだであろうに。

しかしあとから繰り言を、いくらいってもはじまらぬ。あのとき、ふたりの老婆の行く手にあたって、あのような残忍な悪魔の手が、待ちうけていようとはだれが知ろう。たとえあのような結果になったとて、神様はきっと私の怠慢を、許してくださるだろうと信じている。

それはさておき、ふたりの老婆が行ってしまったので、私の緊張はがっくりほぐれた。緊張がほぐれると、薬がきいてきたとみえて、私はにわかに睡魔におそわれ、それから間もなく、うとうとしはじめていたのである。

だからあのことが起こったのは、小梅様と小竹様が、地下道へもぐりこんでから、どれくらい時間がたったのちのことなのか、私にはさっぱり見当がつかぬ。

私は双生児の老婆のひとりに、けたたましく揺り起こされたのである。例によって私には、それが小梅様だか小竹様だかわからなかったけれど、相手のただならぬ気配に、私の睡魔はいっぺんに吹っとんだ。

「ど、どうしたのですか、伯母さん」

私はがばとばかりに寝床の上に起きなおると、恐怖にゆがんだ老婆の顔を見直した。いい忘れたが、老婆は私を起こすまえに、電気をつけたとみえて、部屋のなかは明るかったのである。

老婆は猿のような顔をして、何かいおうとするらしいのだが、舌がもつれて言葉が出ない。見ると老婆の着物にはいっぱい泥がついていて、ところどころ鉤かぎ裂きさえできている。

いよいよただごとではない。私は腹の底に、鉛のかたまりをのみ下したようなしこりを覚えながら、

「伯母さん、伯母さん、ど、どうしたのですか。そして、もうひとりの伯母さまはどうなされたのです」

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