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八墓村-第五章 鎧よろいの中(13)

时间: 2022-06-11    进入日语论坛
核心提示:黄金紛失私は提灯に灯をつけなおすと、典子とふたりで、あらためて、「猿の腰掛」のあたりを調べてみた。なるほど、湿った土の上
(单词翻译:双击或拖选)

黄金紛失

 

 

私は提灯に灯をつけなおすと、典子とふたりで、あらためて、「猿の腰掛」のあたりを調べてみた。

なるほど、湿った土の上に、入り乱れた足跡がついており、さらに何かをひきずっていったらしい跡が、ながく洞窟の奥までつづいている。いうまでもなくそれは、小梅様をひきずっていった跡にちがいなかった。

相手が何者にもあれ、そのとき小梅様は、鷲わしにつかまれた小雀こすずめ、猛獣のあごに落ちた小兎こうさぎも同様だったであろう。残忍な悪魔の小わきにかかえられて、絶望的な叫びをあげながら、真っ暗な洞窟の奥へひきずりこまれていく小梅様の姿を想像すると、私は全身の血も凍るばかりの思いであった。

「典ちゃん、典ちゃん、そしてその声は、たしかにこの洞窟の奥のほうへ消えていったのだね」

「ええ、そうよ。とても悲しそうな声だったわ。お兄さま、あたし当分あの声が、耳について離れないと思うわ」

典子は思い出したように肩をふるわせる。私は提灯をかかげて、地下洞窟の広場の奥を調べてみた。私たちはいままでこの広場までしか来たことはないけれど、この広場からさらに奥へむかって、長い、複雑な地下迷路がつづいているらしいのだ。

「お兄さま、この奥のほうへ行ってみましょうか」

「典ちゃん、その勇気ある?」

「あるわ。お兄さまといっしょなら」

典子は皓しろい歯を出して笑った。

典子は、月足らずでうまれた繊弱せんじゃくな娘である。しかし、この繊弱な体の中には、不思議に大胆で楽天的な魂が宿っているのだ。いやいや、彼女の大胆さも楽天気質も、みんな私に対する信頼から生まれくるのかもしれぬ。愛する者のそばにさえいれば、どんな危険も恐れない。──というよりは、危険なんかありっこないと信じているのだ。典子は生まれたての赤ん坊のように、素朴で単純な娘であった。

「うん、奥へ行ってみてもいいが、そのまえに一応、『猿の腰掛』を調べてみよう」

私には小竹様の言葉が気になっていた。仏が生きて動き出した──と、小竹様はそういっていたが、それの真否をたしかめてみなければならぬ。私は「猿の腰掛」へとってかえすと、たかだかと提灯をかかげて、龕がんの上をふりあおいだが、やっぱり私の思っていたとおりであった。

あの無気味な鎧武者は、依然として石棺の上に腰をおろし、兜かぶとの廂ひさしの下から、蝋ろう化かした眼で、まじまじと私たちを見下ろしている。ただ、その座っている位置が、このまえ私が見たときと、少しちがっているように思われる。してみると、だれかがあの屍蝋を取りのぞき、石棺のふたをとってみたのではあるまいか。

私はふいに、ハッとあることに気がついた。あの石棺の中には、大判が三枚あるはずだ。私はそれを見つけたけれど、もとのところへしまっておいたのである。あの大判はまだあるだろうか。

「典ちゃん、ちょっと待ってて……ぼく、龕がんの上にあがってみる」

私は龕の上によじのぼると、鎧武者をとりのけて、石棺のふたをひらいて中を調べてみたが、そのとたん全身から熱汗がさっと吹き出すのを覚えた。石棺の中には、もう大判はなかったのである。

ああ、だれかが黄金三枚を持ち去った。……私はなんともいえぬ失望と同時に、自分自身に対する激しい憤りを感じたことだ。自分はなぜ、あの黄金を持ってかえらなかったのだろう。なぜ、こんなとこへそのままおいていく気になったのだろう。

大判はだいたい四十三、四匁はあるらしい。その中に含まれている金きんの量をおよそ八〇パーセントとしても、四十匁として三十二匁の金があるはずだ。いま、金の値段を一匁二千円として大判一枚で六万四千円の価値があり、したがって、大判三枚を失ったということは、約二十万円の富を失ったことになるのだ。だが、私が歯ぎしりが出るほど悔しかったのは、単に二十万円の損失ばかりではない。

あの三枚の黄金こそは、この洞窟のいずこかに、莫ばく大だいな財宝が埋もれているという、何よりのたしかな証拠なのだ。あの三枚の黄金を手に入れた人物も、そこのところに気がつきはしまいか。もし、そいつもそれに気がついたとしたら、きっと財宝を探し出そうとするにちがいない。もしそうなったら私は、宝探しにおいて、恐るべき強敵を持つことになるのではないか。

ああ、自分はなぜあの黄金を、もっと安全なところへ隠しておかなかったのだろう。……

「お兄さま、どうかなすって? そのお棺の中に何かあって?」

典子の声に私はハッとわれにかえった。

「ああ、いや、なんでもないんだよ」

私は額にねばつく汗をぬぐうと、もとどおり石棺にふたをし鎧武者をまえの位置に座らせて、龕の上からとびおりた。

「お兄さま、どうなすったの、お顔の色が真っ青よ」

さもあろう。そのとき私は、掌中の珠たまをとられたような、ひどい失望を覚えていたのだから。

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