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八墓村-第六章 春代の激情(1)

时间: 2022-06-11    进入日语论坛
核心提示:第六章 春代の激情私はずっと以前に、鍾乳洞を舞台にした、探偵小説を読んだことがある。その小説のトリックやプロットはともか
(单词翻译:双击或拖选)

第六章 春代の激情

 

私はずっと以前に、鍾乳洞を舞台にした、探偵小説を読んだことがある。

その小説のトリックやプロットはともかくとして、鍾乳洞における殺人という着想が、私にはたいへん興味ふかかったし、また鍾乳洞の光景の、ロマンチックな描写が、当時私を魅了し、そんなに美しいところなら自分も一度、行ってみたいなどと、夢のようなことを考えたものである。

いまその本が手元にないので、ハッキリとしたことはいえないが、ウロ覚えに覚えている、記憶の底をさぐってみると、そこには次のような文章があったように思う。

──入り口からしばらくの間は、石灰岩の天井が低く垂れ下がって、頭をかがめなければ步けないのですが、行くほどに天井もしだいに高くなり、蛍けい石せきの結晶した壁が、百千の宝石をちりばめたように、うつくしく、燦さん然ぜんと、闇の中にかがやいているのでした。……

それからまた、鍾乳洞にある天然の大広間については、次のような描写があったのを覚えている。

──天井の高さは百フィートもありましたろうか。幾百、幾千と知れぬうつくしい鍾乳石が、氷柱のように一面に懸垂しています。しかも大広間の天井の中央からは、真珠色をした巨大な天然のシャンデリアの総ふさがキラキラと垂れ下がり、周囲の壁には、奇怪な天然の彫像や唐草模様が、燦然として、眼も綾あやな色彩を織りなしているのです。それはまるで、古代の宮殿をそのまま、さらに幾倍か崇高華麗にしたかのようなながめでした。……

しかし、事実と小説とのあいだには、大きなひらきがあることを、いま、私たちが探検している、この洞窟が如実に示しているのだ。

姉のあとに従って、典子と私が進んでいくこの洞窟は、たしかに鍾乳洞の様相を示していた。天井が低くていたるところに氷柱のような鍾乳石が垂れさがっている。周囲の壁には一面に、不透明な色をした、天然の彫像や唐草模様が織り出されていた。たしかにそれは、一種の奇観にはちがいなかったが、さりとて、小説に書かれているほどきれい事でも、また、ロマンチックなものでもなかった。

足元も、周囲の壁も天井も、一面にじめじめしていて、ときおり、襟えり筋へおちて来る水滴が、ひやっと私たちを跳びあがらせた。じっとりしめった空気は、重く、暗くよどんでいて、けっして爽そう快かいな肌触りとはいえなかった。いわんや、百千の宝玉をちりばめたように、うつくしく燦然とかがやく蛍石など、私たちの周囲のどこにも見られなかった。

私たちは、ただ、無気味な底なしの洞窟を、限りない不安をいだいて、まるで盲人のように、手探り、足探りで步いていくのだ。私たちのすすんでいく、周囲二、三メートルぐらいは、提灯の灯でほのかに浮かびあがっているけれど、その光の輪の外は、まえもうしろも、一面に重っくるしい闇につつまれている。私は不安と焦燥に、しだいに息苦しさを覚え、できることなら、このままもとの道へとってかえしたいと、何度考えたかしれぬくらいである。

こんな場合、女たちのほうが、男より勇気があるのだろうか。私がそんなふうに尻しり込ごみを感じているにもかかわらず、姉の春代や典子は、そのような気け振ぶりも見せず、黙々として、闇の洞窟をすすんでいく。姉の春代は二、三步さきに、典子は私によりそうようにして……だれもひとことも口をきかなかった。

この洞窟には無数に枝えだ道みちがあるらしく、私たちはときおりふたまたのわかれ道につきあたった。そのたびに姉の春代はたちどまって、提灯の明かりで地図を調べていたが、やがてまた、さきに立ってズンズン步き出す。私たちにひとことも相談しないで……。

いままで何度もいったように、私はこの村へ来て以来、姉の好意を唯一の頼りに生きてきたのだ。姉はいままで一度だって、私に不快な色や挙動を示したことはない。姉はいつももの静かで、おだやかで、そのあたたかい人柄が私を気安くくるんでいてくれるのである。

それだのに、今夜の姉はいったいどうしたというのだろう。なぜ、突然、あのように依怙地な態度にかわったのであろう。私が何か悪いことをしたのであろうか。私の態度、行動に、何か姉の気にさわるようなことがあったのであろうか。

私たちはまた、何度目かのふたまたに行きあたった。例によって姉は、提灯の明かりで地図を調べていたが、やがてまた、私たちのほうへはふりむきもせず、ズンズン暗い洞窟をすすんでいく。

とうとう私はたまらなくなり、姉のうしろから追いすがると、肩に手をかけてひきもどした。

「姉さん、姉さん、ちょっと待ってください。姉さんは何をそのようにおこっているんです。なんでぼくにひとことも、口をきいてくれないんです」

提灯の灯に浮きあがった姉の顔は、蝋のように蒼あおざめて強こわ張ばっていた。額にはつめたい汗がビッショリと浮かんでいる。

姉は切なさそうにあえぎ、あえぎ、

「あたし……あたし……何もおこっちゃいませんわ」

「いいえ、姉さんはおこっています。何かぼくにおこっています。姉さん、堪忍してください。ぼくに悪いところがあったらあやまります。どこが悪いのかいってください、ぼく、きっと、姉さんのいうとおりにします。その代わり、姉さんもきげんを直して……ぼく……ぼく……姉さんにそんなにつめたくされると、どうしてよいのかわかりません」

姉はだまって私の顔を見つめていたが、急にその顔がクシャクシャと、子どもがベソをかくときのようにゆがんだかと思うと、


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