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八墓村-第六章 春代の激情(4)

时间: 2022-06-11    进入日语论坛
核心提示:鬼火の淵その夜、私たちは、結局、小梅様のゆくえを突き止めることができないままに、途中からあきらめて、スゴスゴ引き返さねば
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鬼火の淵

 

その夜、私たちは、結局、小梅様のゆくえを突き止めることができないままに、途中からあきらめて、スゴスゴ引き返さねばならなかった。

なにしろ、地下の迷路はひろく、ふかく、かつ、はてしがなかったし、それにまた、姉の春代の容態が、しだいに悪くなる一方なので、それ以上、冒険をつづけるわけにはいかなかったのだ。

姉の気分が急にまた、悪くなり出したのは、たしかに英泉さんの影響だった。いまの姉の健康では、極力、強い刺激や興奮を、避けなければならなかったのに、あのときの、思いがけない英泉さんの出現は、姉のみならず、われわれ一同にとって、たしかに大きなショックだったのだ。

おお、あのときの英泉さんの顔! 眼玉はとび出し、小鼻はふるえ、ガクガクあごが鳴っていた。……あのすさまじい、なんとも名状することのできぬ凶悪な表情は、いったい何を意味するのだろうか。私は、そういう英泉さんの顔が、眼前数尺のところを通りすぎるのを見たとき、ヒヤリと、つめたい刃を心臓に、あてがわれたような恐ろしさを感ずると同時に、すぐ、いつか、どっかでこれと同じような表情を見たことを思い出した。

いつ、どこで……?

長く考えるまでもなく、私はすぐに思い出した。いつかの夜、そうだ、濃茶の尼が殺された晚、つるはし片手にぬき足さし足忍び足で、坂を下ってきた慎太郎の顔! おおあのときの慎太郎の、ものすさまじい表情と今夜の英泉さんの凶悪な顔。……そこにはなにか一脈相通ずるところがありはしないか。あとから思えばあの夜の慎太郎は、たしかに濃茶の尼の殺害と、なんらかの意味でつながりを持っていたのだ。では、今夜の英泉さんは……? かれはこの洞窟の奥で、いったい、何をし、何を見てきたのであろうか。……

それはさておき、英泉さんの思いがけない出現は、姉をすっかりぶちのめした。私たちは英泉さんの姿が見えなくなり、足音が聞こえなくなるのを待って、提灯に灯をともしたが、そのときの姉の顔色ったらなかった。全身から最後の血の一滴を吸いとられたように真っ青になって、額にはいっぱい、つめたい汗がうかんでいた。吐く息さえも苦しげで、いまにも気を失いそうな顔色だった。

私たちはそこでちょっと、英泉さんの奇怪な行動について話しあったが、姉はもう、そんなことを聞いたり話したりするのさえ億おっ劫くうそうであった。心臓をおさえてうつむいた姉の額からは、ますますはげしく、つめたい汗がふき出てきた。

とうとう典子は、たまりかねたように叫んだ。

「お兄さん、もう帰りましょう。このままじゃ、お姉さま倒れておしまいになりますわ。洞窟の探検は、また明日でもあらためてやりましょう」

姉の春代は、もうそれ以上強情は張らなかった。私たちはそれから間もなく、左右から姉の体を抱えるようにして、最初のふたまたのところまで来ると、そこで典子とわかれて、もとの離れへ帰ったのである。

その晚、私は一睡もしなかった。姉も姉だけれど、小梅様のことも気がかりだった。私はその夜、二度と洞窟へもぐりこむ気にはなれなかったけれど、これをこのまま捨てておいてよいだろうかと思い惑うた。いずれ明日になったらもう一度、洞窟の中へ入ってみるつもりだけれど、もし、そこに発見するのが、すでにつめたくなっている小梅様の死体であったら……?

おお、そのときは何もかも明るみへ出てしまう。洞窟の秘密も、小梅様や小竹様の昔の罪ざい業ごうも。……それはしかたがないこととして、あの洞窟の秘密が暴露したら、それが私の身の上にどういう影響を持ってくるだろうか。私は毎夜おとなしく、この離れに寝ていることになっているのだ。それがああいう抜け道を持っていて、どこへでも自由自在に抜け出すことができるとわかったら、警部をはじめ村のひとびとは、いったい私をどう思うだろうか。それでなくても私はいま、疑惑の中心におかれているのに。

私は恐怖のために寝床のなかで、体が焼かれる思いであった。全身がカーッともえるように熱くなるかと思うと、また急に氷のようにつめたくなったりした。のどがヒリヒリひりつく思いで、いくどか枕元の水差しから、ゴクゴクと水を口飲みにした。

そういう不吉な想おもいを追っぱらうために、私は強いても英泉さんのことを考えてみる。英泉さんはこんどの事件に、いったい、どういう関係があるのであろうか。私はいつか英泉さんに、思いがけない誣ぶ告こくをうけたことを思い出した。それからまた、英泉さんの不思議な旅立ちのことを思いうかべた。英泉さんの旅立ちは、ちょうど神戸で不思議な人物が、私の身元を調査してまわっていた期間と一致する。ああ、英泉さんはいったい私をどうしようというのだ。……

突然、私ははじかれたように寝床の上に起きなおった。そして枕元に張りめぐらされた三酸図屏風びょうぶに眼をやった。屏風にかかれた仏印和尚。──山方の平吉はこの離れへ寝ているあいだに、その和尚が抜け出すのを見たという。そして私もいつかの夜、同じ錯覚を感じたのだが、ひょっとすると、あれは英泉さんではなかったか。

私はその夜見た、英泉さんの鼠色の衣を思い出した。ああいう姿でしのんできたら、屏風の絵と見まがうのも、かならずしも不自然ではないし、また、ああいう姿で忍んでくるものは、英泉さんよりほかにはない。そうだ。あの地下の抜け孔を通って、たびたびこの離れへしのんでくるのは、麻呂尾寺の英泉さんだったのだ。私はもう一度、こんどの事件をはじめから考えてみる。すると、この事件全体が、因いん縁ねん因いん果がに終始していて、ひどく抹まっ香こうくさいことに気がつく。そして、英泉さんは坊主ではないか。

ああ、それでは犯人は英泉さんだったのか。いや、きっとそれにちがいない。

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