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八墓村-第八章 絶体絶命(3)

时间: 2022-06-19    进入日语论坛
核心提示:黄金の雨私たちは、いったい、どのくらい失神していたのか。あとから考えてみるのに、それはあまり長い時間ではなかったようだ。
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黄金の雨

 

私たちは、いったい、どのくらい失神していたのか。あとから考えてみるのに、それはあまり長い時間ではなかったようだ。

気がつくとあたりは真っ暗で、まだときおり、風のような音がしたが、それもごく微弱で、洞窟の中は、しいんとしずまりかえっていた。私は、その静けさのなかに聞き耳を立ててみる。周さんや吉蔵はどうしたのか。いや、それより典子は……?

「典ちゃん、典ちゃん」

低声で呼びながら、あたりの地面をさぐっていくと、私の手はすぐに柔らかな肉体にぶつかった。私は急いでその体を抱きおこした。

「典ちゃん、典ちゃん」

体をゆすりながら、二、三度名を呼ぶと、すすり泣くように息をうちへ引く音が聞こえ、

「お兄さま?」

と、典子も身を起こした。

「いまのはなんでしたの。周さんや吉蔵はどうしたんですの」

「さあ、それがさっぱりわからないんだ、典ちゃん、きみ、懐中電燈を知らない」

「懐中電燈? ああ、懐中電燈ならここにあるわ」

典子は懐中電燈を握ったまま気を失っていたらしい。その懐中電燈の光で、私はまず自分の身辺から照らしてみた。私の懐中電燈もすぐ見つかった。私はそれを拾おうとして身をかがめたが、そのまま石になったように凝結してしまった。ああ、この物語のなかで、私はいくどか大きな驚きを味わわされたが、このときほど深い感動にうたれたことはない。懐中電燈のそばに二ひら三ひら、見覚えのある大判が散らばっているではないか。

「お兄さま、どうかなすって?」

その声にやっとわれにかえった私は、ふるえる手で大判の一枚を拾いあげると、無言のまま典子のまえに差しだした。口をきこうとしたが、舌の根がこわばって声が出ないのであった。典子の瞳も大きくふるえた。彼女も急いで身をかがめると、二ひらの大判を拾いあげた。それからなおも懐中電燈であたりを探して、私たちは六枚の大判を得た。大判はこれで都合九枚になった。

典子と私はしいんと顔を見合わせた。

「お兄さま、変ね。どうしてこんなふうに散らかってるんでしょう」

その答えはすぐにわかった。そのときまた、ゴーッと風のような音がして、洞窟がはげしく揺れたので、典子と私は思わずひしと抱きあったが、その肩へバラバラと降ってきたのが大判だった。私たちは抱きあったまま反射的に上を見たが、そのとたん、典子が気が狂ったように声をあげた。

「ああ、お兄さま、あそこよ、あそこよ、あそこから落ちてくるんだわ」

この鍾乳洞は、ずいぶん天井が高くて、ざっと五間けん(九メートル余)あまりもあろうか。そして、壁に沿うて無数の太い鍾乳石の柱が、蛇のようにからみあい、ねじりあいながら立っているのだが、不思議なことにはそれらの柱は、みんな天井から約一間(一.八メートル)ほど下のところで断ちきられているのである。と、いうことはいま私たちの行く手をふさいでいる壁と天井とのあいだに、一間けんぐらいのすき間があることを示しており、その壁のはしから幾枚かの大判が、いまにも滑りおちそうに見えているのである。それらの大判は、私たちの見ている眼のまえでザラザラとこぼれ落ちてきた。私たちは思わず顔を見合わせた。

「お兄さま、ここが宝の山なのね」

私は無言のままうなずいた。もう当初の興奮も去って、私たちは落ち着きをとりもどしていた。

それにしても、大判がどうしてあんな宙ぶらりんの位置に隠してあるのか、それについて私はこう考えた。

尼あま子この落おち人うどがあの大判を隠した時代には、この天井はこんなに高くはなく、いまの天井から一間けんほど下がったところ、すなわち壁の上部にあたるところが床ゆかだったのではあるまいか。その床が長い年月に、しだいに浸蝕しんしょくされ深くなり、現在のように天井の高い洞窟になってしまった。ところが尼子の落人が宝物をおさめた場所は、かれらがそれを知っていたかどうかは不明としても、硬質の岩石であったがために、浸蝕をまぬがれ、宝物はいつか、虚空の岩いわ棚だなの上に取り残されることになり、そのために、いままで、幾多の冒険家どもの眼からのがれてきたのであろう。

それにしても、なんという皮肉な運命であろう。数百年にわたる長い歳月のあいだ、幾人の冒険家がこの黄金を求めて命をかけたことであろう。それにもかかわらず、たくみに姿を隠しつづけてきた黄金が、偶然ここに迷いこんできた私たちの頭上へ、みずから降ってきたのである。これをしも運命の皮肉といわずしてなんであろう。

いやいや、運命の皮肉はそれだけにとどまらなかった。運命は私に労せずして黄金をあたえたが、その代わり黄金を持って帰る道をふさいでしまったのであった。

いっときの黄金の夢からさめると、私たちはあらためて周さんと吉蔵のことを思い出し、懐中電燈の光であたりをさがしてみたが、そのうちに、私たちは、髪の毛も逆立つような恐ろしい事実を発見したのだ。ああ、なんということだ。私たちがいま通ってきた道は、ぴったりと岩と土とでふさがれているではないか。

落盤があったのだ。落盤が周さんと吉蔵を埋めてしまうと同時に、私たちをこの洞窟の中に閉じこめてしまったのだ。

「典ちゃん!」

「お兄さま!」


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