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一寸法师-梅花娃娃(01)

时间: 2021-09-27    进入日语论坛
核心提示:お梅(うめ)人形 午前二時、その百貨店の三階の呉服売場を、若い番頭が一人の少年店員を伴って、見廻っていた。この店では毎晩、
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(うめ)人形


 午前二時、その百貨店の三階の呉服売場を、若い番頭が一人の少年店員を伴って、見廻っていた。この店では毎晩、番頭、少年店員、警務さん、(とび)のものなど、数十人の当直員を定めて、広い店内を隅から隅まで、徹宵(てっしょう)見廻らせることになっていた。
 昼間雑沓(ざっとう)するだけに、一人も客のない広々とした物売場は、変に物すごい感じがした。ほとんど電燈を消してしまって、階段の上だとか、曲り角などに、(わずか)に残された光が、ぼんやりと通路を照らしていた。
 売場の陳列台はすっかり白布(しろぬの)で覆われ、その大小高低様々の白い姿が、無数の死骸の様にころがっていた。
 若い番頭は、物の影に注意しながら、暗い通路を歩いて行った。時々立止っては、要所要所にかけてある小箱のかぎを取出して、持っている宿直時計に印をつけた。
 所々に太い円柱が立っていた。それが何か生きている大男の様に感じられた。
 少年店員は懐中電燈を(とも)して、番頭の先に立って歩いて行った。彼は虚勢をはって歩調を荒々しくしたり、口笛を吹いて見たりした。だが、それらの物音が広間の隅々に反響すると、一層変てこな気持になった。
 一番気持の悪いのは、友禅(ゆうぜん)類の売場の中央に出来ている、等身大の(いき)人形だった。三人の婦人がそれぞれ流行の春の衣裳をつけて、大きな桜の木の下に立っていた。店内ではその生人形に、お(まつ)、お(たけ)、お梅という名前をつけて、まるで生きた人間の様に「お梅さんの帯だ」とか「お梅さんのショールだ」とかいっていた。お梅さんというのは三つの内でも一番綺麗で、若い人形だった。
 この飾り人形については色々の挿話があった。若い店員がある人形に恋をしたなどといううわさがよく伝わった。夜中にそっと忍んで来て、人形に話をしたり、ふざけたりしている男もあった。今のお梅さんも、あんなに美人なのだから、ひょっとしたらだれかが恋をしていたかも知れないのだ。
 そんなうわさ話が生れる程あって、この人形共は何だか死物(しぶつ)とは思えないのだった。昼間はそ知らぬ(ふり)をして、作り物の様な顔ですましていて、夜になるとムクムクと動き出すのではないかと疑われた。事実夜の見廻りの時に、人形のすぐ前に立って、じっとその顔を見つめていると、突然ニコニコと笑い出し相な気がされた。
 今番頭達の行手には、その三つの人形が、遠くの電燈の(おぼろ)な光を受けて、真黒く見えていた。
「ちょっと、ちょっと、いつの間に、あんな子供の人形を置いたのです。ちっとも知らなかった」

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