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一寸法师-转嫁罪业(06)

时间: 2021-09-29    进入日语论坛
核心提示:「だが、事件のあった翌日から、小松は病気になった。そして人に顔を見られることを恐れる様な所があった。僕が彼女の病床を見舞
(单词翻译:双击或拖选)

「だが、事件のあった翌日から、小松は病気になった。そして人に顔を見られることを恐れる様な所があった。僕が彼女の病床を見舞った時にも、枕に顔をうずめて、僕の方を正視出来なかった。そればかりではない。彼女の不用意に投出された指には、マニキュアが(ほどこ)してあったのだよ。まるで令嬢の指の様に」
「では若しや、アアそんな馬鹿馬鹿しいことがあるだろうか。……」
「僕も最初はまさかと思っていた。だがこれを見給え。この写真に気づいた時から僕の意見は確定したのだ」
 明智はそういって、台の上から山野家一同の撮した写真を取って、田村氏や刑事部長の方へさし出した。それには、三千子の顔に妙ないたずらがしてあった。彼女の眉を、すっかり胡粉(ごふん)で塗りつぶし、その下に眼鏡の枠が書いてあった。
 それを見ると田村氏と刑事部長は顔を見合せて感嘆した様に「似ている」と(つぶ)やいた。
「似ているでしょう。三千子の眉をとって、眼鏡をかけさせ、技巧たっぷりの表情を、もっと静にすれば、小松と見分けがつきません。それも道理です。小松というのは実は山野氏の隠し子で、三千子とは姉妹(きょうだい)なのだから。ただ、一方はおとなしやかな無表情、一方は技巧たっぷりのおてんば娘なのと、それに髪の形だとか眼鏡や眉の相違があるので、一寸気がつかないだけです。分りますか。つまり三千子はあの晩、恋敵の異母妹(いぼまい)といい争った末、激情のあまり、ついあんなことをしてしまった。石膏像をなげつけて(あやま)って相手を殺してしまったのです。そして、咄嗟の場合、小松に化けるという妙案を思いついた訳です」
「それはどういう意味だね。小間使に化けて見たところで、罪が消える訳でもあるまいが」
「さっきもお話した北島春雄という命知らずがいたのだ。丁度その前日彼は牢を出て三千子に不気味な予告の葉書を出している。失恋に目のくらんだ狂人だ。殺されるかも知れない。三千子はその日も、この命知らずのことで頭が一杯になっていた。丁度その時あの変事が起ったものだから、一つは北島の復讐をのがれるために、一つは小松殺しの嫌疑を避けるために、又一つには、山野夫人に、継子(ままこ)殺しの嫌疑をかけるために、どちらから考えても、都合のよい変装という妙案を思いついたのだ。三千子が探偵小説の愛読者だったことを考え合せると、彼女の心持なり()(くち)なりがよく分るのだよ。さっきもいった様に三千子の書棚は、内外の探偵小説で殆ど埋まっていたのだからね。死体をピアノに隠したのもゴミ箱のトリックも夫人の部屋へ偽証を作ったのも、皆彼女の智恵なんだ。例のゴミ車をひいた衛生夫は、情夫の蕗屋が化けたのだ」
「それを家内中が知らなかったというのは、おかしいね」
「いや、たった一人知っていた人がある。それは三千子の父親の山野氏だ。丁度事件の起った時分に洋館にいたのだからね。山野氏は家名を重んずる厳格な人だけに、却て三千子の計画に同意した。そして、三千子と一緒になって凡てを秘密の内に葬り去ろうとした。小松に化けた三千子に金を与えて家出させたのも、養源寺の和尚や蕗屋を買収したのも山野氏だった。山野氏のそんなやり方が、夫人の疑いを招くことになり、結局事件を面倒にしてしまった形なんだ」

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