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一寸法师-疑惑(05)

时间: 2021-09-29    进入日语论坛
核心提示:「どうだい小林君、僕が怠けていなかったしるしだよ。この品々は間もなく僕の手を離れる。僕の友人の田村(たむら)検事が今度の事
(单词翻译:双击或拖选)

「どうだい小林君、僕が怠けていなかったしるしだよ。この品々は間もなく僕の手を離れる。僕の友人の田村(たむら)検事が今度の事件の受持に極ったということだから、みんなあの男に渡してやる積りだ。これだけあれば随分調(しらべ)の足しになる。いや足しになるどころではない、これを十分吟味(ぎんみ)すれば、何もジタバタしなくたって、坐っていて事件の真相をつかむことが出来るかも知れない。で、僕の手を離れる前に、丁度いい機会だから君に一応見て置いてもらおう。君は今度の事件の紹介者でもあるし、君自身中々熱心な素人探偵でもある様だから、僕にしてはいわば職業上の秘密なんだけれど、特にお目にかける訳だ。その代りこの品々に対する僕の判断は一切いわない。いえないのじゃない。いうことを差控(さしひか)えて置くのだ。君も知っている通り、僕は事件がすっかり解決するまでは、中途半端な想像なんかしゃべらない癖なんだ」
 明智はそれらの品物を愛撫する様にひねくり廻しながら、一寸奥底の知れない薄笑いを浮べていった。骨董屋の親父が古道具の値ぶみでもしている恰好だった。
「どれから始めるかな」彼はさも楽しげに見えた。「そうそうO町の家のことを話し始めていたね。君は驚いた様だが、実はこんな種があるんだよ。この破れた紙切だ。一寸読んで見給え」
 それは半紙の半分程の分量の紙が、細かく切り裂かれた上に、所々焼けこげがあって、多分手紙の切れはしなのであろうが、とても完全に読むことは出来なかった。

……御依頼により埋葬(つかまつ)……と小生とかの蕗屋の三人のみに有之(これあり)……右につき(とく)と御談合申上度(もうしあげたく)……郷表(ごうおもて)(一二字分不明)六三中村(なかむら)……御一読の上は必ず火中……

 どう見直してもこれ以上は分らなかった。
昨夕(ゆうべ)の君の行先を当たのは、この郷表うんぬんの文句からだ。六三とあるのは番地としか考えられないから、上の郷表に相当する町名は、東京中に中之郷O町の(ほか)にない。僕は早速あすこへ行って見た。そして、訳なく中村(ぐう)と表札の出た小さな門のある家を発見した。中へ入って聾の婆さんにも逢った。主人は勤め(にん)らしいことをいっていたけれど本当かどうか分らない。中村という人物はまるで姿を見せなかったが、僕はあの家そのものについて研究した。そして色々悟る所もあった。若し僕の想像が確だとすると、この事件には実に恐しい人物が介在している。そいつの(のろい)が事件全体を非常に複雑なものにしている。だがそいつは(おそら)く殺人犯人ではない、犯人はもっと別の所にいるのだ。だから、真犯人が見つかるまでは、残念だけれど、その悪魔の正体をあばく訳には行かない。僕は本当の犯人を逃してしまうことを恐れているのだ」

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