返回首页

一寸法师-误解(03)

时间: 2021-09-29    进入日语论坛
核心提示:「イエ、もう駄目ですわ。逃げたって駄目ですわ。あいつがもうすっかり白状してしまったに違いないのですもの」「何をいうのです
(单词翻译:双击或拖选)

「イエ、もう駄目ですわ。逃げたって駄目ですわ。あいつがもうすっかり白状してしまったに違いないのですもの」
「何をいうのです。だから逃げるんじゃありませんか。それともあなたが、とても逃げおおせないと思うのだったら」彼は殉情(じゅんじょう)に目を光らせて、芝居のせりふめいた声を出した。「僕は命なんかちっとも(おし)くないのです。あなたと一緒に死ぬんだったら、命なんかちっとも惜かないのです。僕を一緒に死なせて下さいますか」
「マア、あなたは……どうして死ぬことなんかおっしゃるのです」
「だって、あなたは絞首台が怖くないのですか。無論僕だって逃げられるだけは逃げた方がいいと思うのだけれど、でもいよいよ逃げられなくなった時は、死ぬ外ないじゃありませんか」
「それはそうですけど。……」
 百合枝はそういったまま、暗の中に坐って、長い間黙っていた。紋三も彼女の一方の手を握り(しめ)て物をいわなかった。
「あなた、どこまでも私の味方になって下さるわね」
「どうしてそんなこと聞くのです。分りませんか」
「分ってますわ。でも、私が今まで通り山野の貞淑(ていしゅく)な妻であっても」
「エエ」
「どんなことがあっても?」
「誓います」
「じゃいいますが、三千子を殺したのは私ではないのです。外に下手人がいるのです」
「エ、それは一体だれです」
 紋三はびっくりして尋ねた。
「山野です。私の夫の山野です。ですから、私は一刻も早く家に帰って、あの人を逃さなければなりません」
「だって、山野さんは三千子さんの実の親じゃありませんか。そんな馬鹿なことがあるもんですか。よし又そうとした所で、逃すなんて、あの大病人をどうしようというのです。それに、お邸には今頃はもう警察の手が廻っているに相違ないのですよ」
「アア、やっぱり駄目ですわね。でもひょっとしてあの不具者がうまく逃げてくれたら、そうすれば秘密がばれないで済むかも知れないのです」
「あいつですか。あいつが秘密の鍵を握っているのですか。それで、あなたはあんな奴の命令に従っていたのですね。御主人の罪を隠したいばかりに」
「その外に私に出来ることはなかったのです」百合枝は涙声になった。「そのことが分った時から、私は山野の家名と主人の安全のために、命を捨てても尽さなければならないと決心したのです。それが私のなくなったお母さまの教えなのです」
…………」紋三はボンヤリして相手の激情を眺めていた。
「あなたは主人と私との関係をよく御存じないでしょうが、私の家にとっては山野家は大切な恩人なのです。私がひどく年の違う主人にとついだのも、主人のために犠牲になる決心をしたのも、皆私のなくなった両親の志をついだのです。私の気性としてそうしないではいられなかったのです」
「ですが、それにしても僕には分らないことがあります」紋三はやっと気を取り直していった。「あなたは焼き捨てたと思っているでしょうが、あなたの受取った変な手紙が明智さんの手に入ったのです。例の不具者があなたをO町の家へ呼び出す為に書いた手紙です。それには確か、御依頼の三千子さんの死体を(うず)めた、このことはだれそれと私と蕗屋の三人しか知らないという意味が書いてありました。一人の名前だけ焼けていて分らないのですが、それが手紙の受取人のあなたでなくて誰でしょう。その外色々な証拠があるのです。例えばあの日に三千子さんが持って出たというショールだとか手提だとかがあなたの部屋の押入に隠してあったじゃありませんか。それだけじゃない。三千子さんの頭を()ったと想像される石膏像まであなたの部屋にあったのだ。僕があなたを疑ったのは無理じゃないでしょう」

轻松学日语,快乐背单词(免费在线日语单词学习)---点击进入
顶一下
(0)
0%
踩一下
(0)
0%

热门TAG:
[查看全部]  相关评论