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時をかける少女12

时间: 2017-12-30    进入日语论坛
核心提示: 四日前のあの現場へ 三人とも、そんな話を聞くのははじめてだったから、びっくりした。「じゃあ、わたしの場合は、場所の移動
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  四日前のあの現場へ
 
 
 三人とも、そんな話を聞くのははじめてだったから、びっくりした。
「じゃあ、わたしの場合は、場所の移動と時間の跳躍がいっしょになって起こったわけですね?」
 福島先生は、和子にうなずいてみせた。
「そうとしか考えられないね。君はトラックにひかれそうになったとき、ベッドの中にいる自分のことを考えると同時に、その事件から、時間的にも遠くはなれた場所に逃げ出したいと願っていた。だから、その前にまで時間を跳躍したんだ」
「でも、どうしてわたしにそんなことが……」
「できたんだろうかって、いうんだろう? それなんだがね」
 福島先生は、またなにかノートに書きこみながらいった。
「きっと四日前の、あの理科実験室でかいだ薬のにおいのせいだと思うんだが……。君はたしか、あのラベンダーのにおいのする薬のために貧血を起こしたんだったね」
「ええ、そうです」
「問題はその薬だ。その薬が、君にこんな能力をもたせたんじゃないかな? ところで君は、自分がそんな能力をもっていることがいやなのか?」
「そうなんです!」
 和子は叫ぶように身をのりだしていった。
「わたしは、自分だけこんなおかしな能力をもっているなんて、いやなんです」
「うん、むりはないな。ほかの人たちから、君だけがふつうの人間でないように思われるのがいやなんだろう?」
 福島先生はそういって和子にうなずいてみせた。和子もうなずき返した。
「わかるよ、その気持ちは……。よろしい。そうすると君は、君のもっている能力をつかって、もう一度四日前の、あの理科実験室での事件のあった現場にひき返してみる必要があるな」
「ええっ!」
「四日前に?」
 これには、三人ともおどろいた。
「だ、だって、どうやって?」
「どうやってだって?」
 泣きそうになってたずねる和子に、福島先生はかえってふしぎそうな顔をむけた。
「もちろん、タイム・リープをやってだよ。だって君にはその能力があるんだし、一度はやったことがあるんだろう?」
「でも、あのときはトラックにひかれそうになったショックで思わず……」
 福島先生はちょっと手をあげた。
「わかっている。でも、そのときの芳山君の心の状態、からだの状態がどうだったか、それを調べることで、もう一度その状態をつくりだすことはできるはずだよ」
「でも先生、芳山君が四日前にタイム・リープできたとしても、いったいそこでなにをするのですか?」
 深町一夫が心配そうにたずねた。
「その薬をつくった人間――つまり、ほら芳山君がちらりと見たという、そのあやしい人間に会う必要がある。その男が、薬をつくりだす前に……。それで問題は解決すると思うね。少し危険かもしれないが、しかし、芳山君にはできるはずだ」
 福島先生はじっと和子の顔を見ながらそういった。和子は考えこんだ。
 ――そうだわ。あの人に、あの薬をつくらせないようにすれば、わたしはこんな大きな事件から解放されるはずなんだわ。
「でもやっぱり、いちばん問題なのは……」
 深町一夫は考え深そうにいった。
「どうやって、芳山君を四日前にもどらせるかということですね……」
 福島先生はうなずき、また和子にいった。
「そうなんだ。ねえ芳山君、君がトラックにひかれそうになったとき、どんな気持ちでなにを考えたか思い出せるかい?」
「とても、思い出せませんわ」
 和子は悲しそうに、首を左右にふった。
「もう一度、あんな状態になってみないことには、とても思い出すなんて……」
「そうだろうなあ」
 けさがたのあの事件を思い出した浅倉吾朗が、ぶるっとからだをふるわせていった。
「――といって、芳山君をもう一度、あんなあぶないめにあわせるわけにもいかないし……」
「よし、そのことはぼくが考えよう」
 福島先生はそういって立ちあがった。いつのまにか、ほかの先生たちは帰ってしまったらしく職員室はがらんとしていて、運動場には夕やみがせまっていた。
「君たち、帰るんだろう? いっしょにそこまで帰ろうか」
 三人は福島先生といっしょに校門を出た。風が冷たくなってきていた。新しいビルの工事現場の横の板がこいのそばを歩きながら、四人は話しあった。
「もし、わたしが四日前にもどったとしてみても、みんなわたしに力を貸してくれるの?」
 和子がそういうと、深町一夫がいった。
「そりゃ、むりだよ。だって四日前には、ふしぎな現象はなにひとつ起こっていなかったわけだろ? 話だけ聞かされたってぼくはそのときはまだ、なにも知らないわけなんだから、とても信じる気にはなれないだろうね」
 浅倉吾朗も顔を赤くしていった。
「ぼくなんか、なおさらそうだろうなあ」
「じゃあ、わたしは自分ひとりだけの力でこの事件を解決しなきゃいけないのね」
 和子がさびしそうにいったときだ。福島先生がいきなり車道のほうへかけだして叫んだのである。
「みんな、逃げろっ! 上から鉄骨が落ちてくるぞ!」
 二、三日前にも、ここで工事ちゅうの材木が歩道へ落ち、通行者がけがしたばかりなのである。一夫と吾朗は、悲鳴をあげて先生について車道へ逃げだした。
 だが、和子は逃げられなかった。おそろしさのあまり、足がすくんでしまったのだ。頭の上にまで、すでに落ちてきている鉄骨を想像して、からだがしびれたようになっていた。
 ――わたしは鉄骨の下敷きになる!
 そう思ったとき、和子はタイム・リープした。
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