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「母の背中」

时间: 2017-08-30    进入日语论坛
核心提示: 「お母さんみたいになりたくない」小さい頃から、漠然とそう思っていた。無口で、格好なんて全然気にしなくて、不器用な母。母
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 「お母さんみたいになりたくない」
小さい頃から、漠然とそう思っていた。
無口で、格好なんて全然気にしなくて、不器用な母。
母のことを、なんとなく苦手に感じていた。
家で自営業を営む父のかわりに、外へ働きに出ていたからかもしれない。
同じ家の中にいるのに、あまりにも関わりが少なくて、まるで他人のようだった。
 
大学入学とともに、私は家を出た。
実家に帰省することは殆ど無くなり、たまに帰っても一日中寝るか、テレビを見るか
だった。
 帰りの遅い母と会話をする機会も、必然的に減っていった。
「疲れたなぁ」「最近頭が痛いの」たまに顔を合わせると、愚痴や弱音を呟く母。
「薬でも飲んどけば」と、ついつい素っ気無く返事をしてしまう私。
こんな調子だから、私達の関係は深まることは無く、平行線のように、交わることも
ない。
21年という時をともにしてきた筈なのに、母の生きてきた軌跡についてちっとも知
らないことに気付いて、なんだかぞっとした。
 
そんな私も就職活動を迎えて、色々と将来のことを考えるようになった。
会社を選ぶ際に、無意識に気にしていたのが『出産後も働ける環境か』ということ
だった。
「ああ、私はやっぱりお母さんの子なんだ。」
ずっと母の背中を見てきた私には、そういう働き方以外思い浮かばなかったのだ。
実際に自分が育児と仕事の両立をすることを考えると、その負担の大きさが身にしみ
た。
母は、毎日そういう生活を送っていたのだ。
この間、久しぶりに家族で銭湯に行くことになった。
何年ぶりだろうか。母と久しぶりに一緒にお風呂に入った。
二人とも、手足は痩せているのにお腹だけぽっこりと出ている体型で、
「遺伝なんだね」と笑いあった。久しぶりに、母と一緒に笑った。
 
これから私は母と同じような道を歩いていくことになるだろう。
大人になって、母がどれだけ偉大な存在だったかわかるようになってきた。
「わたしは、お母さんのようになりたい。」
今では、強くそう思う。
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