陸上クラブに通う近所の子に刺激され、クラブに入りたいと言い始めた。
クラブに入り、競技会では陸上競技場のきれいなトラックを、小さな体でガムシャラに駆け抜けた。
トラックに立つ姿は、小さいけれど輝いて見えた。離れたスタンドの上から、僕は応援していた。
父親である僕も、走り始めた。
息子が走るマラソン大会で、僕も走り始めた。
息子の大会での順位とか、タイムとか、これまで気にしていたことが、たいしたことに思えなくなっていった。
走ることで、見える世界はかわっていった。
マラソン大会が近いある日、息子といっしょに走った。
タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、、、
息子が言った。
「不思議だね。まったく同じリズムだ。」
ふたりが走る音なのに、ひとつの音しか聞こえなかった。
背の高さも、足の長さもぜんぜん違う。
それでも、ひとつの足音しか聞こえなかった。
タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、、、
陸上競技場では遠くに見えた小学生の息子に、すこし追いつけた気がした。