生まれてきた息子は水頭症ではなかったが、確かに頭の大きな子供だった。
幼稚園の入園児、Lサイズの帽子が被れず特注。運動会では遠目からでも一目で我が子とわかる頭の大きさだった。
徒競走で息子の順番がきた。私はこの日のために購入したビデオカメラを回した。しかし、帰宅して再生したビデオは途中から揺れて焦点が定まらず、最後はわけのわからない画像しか残ってなかった。
ピストルが鳴り、走り始めた六人の園児の先頭の子供が転んだ。二番手、三番手の子供は走り過ぎていったが、四番手を走っていた息子は転んだ子を助け起こして一緒に走り最下位になった。
息子が転んだ子を助け起こした時からファインダーを覗く私の手が震え、息子がゴールした時はビデオカメラを足元に放り出して、他の父親と一緒に拍手をしていたのである。
頭でっかちな風貌をした息子は、頭でっかちではない優しい子に育った。
その息子も来春には社会人になる。
息子が小学生の時、私は脱サラした。今は中小企業診断士として経営コンサルタント業を生業としている。息子は私が苦手な理系に進んだが、先日、外資系コンサルティング会社から就職の内定をもらった。
とかく経営コンサルタントは理論中心の頭でっかちなりがちだ。しかし、息子には理屈だけでなくクライアントの痛みがわかるコンサルトになってほしい。
蛙の子はいきなり蛙になるのではない、最初はおたまじゃくしだ。経験を積んで蛙に成長するのである。
息子よ立派な蛙になれ。