あれから20年以上経ち、私は今二人の子供を授かった。子供が苦手だった私が信じられないくらい子供を好きになった。そして無償の愛とは何か、身を持って知った。だけど楽しいだけではない。まだ幼い子供達は私の感情を大きく揺さぶる。困り果てた私が頼るのは、やはり母。まず母を想う。こんな時お母さんならどうする?何て言う?それでも煮詰まった時は無意識に電話をしている。“どうした?”の一言で気持ちがスーッとなる。母の愛情が私の隅々にまで行き渡る。自慢であり、目標であり、憧れる母だ。
そんな母も今は高齢の祖母の近くに住んでいる。あの頃と同じ様に、今度は私が子供達を連れて帰省する。昔を思い出す。でも今は母の気持ちが痛い程解る様になっていた。
帰省の度に少し背が低くなったかな?と感じる母、まだ親孝行が全然出来てない。まだ支えて欲しい、とにかく元気で…。
母と別れる空港で私は決まって泣いている。「お母さん、元気でね。」
子供達は不思議そうに私の顔をのぞき込む。
窓越しの母は笑いながら泣いていた。