『何だ、これは?』と思う間もなく、店員はパソコンを設置し、理解不能な説明を私に繰り返して、嵐のように去っていった。
配線は勿論、プロバイダー契約、メールアドレスなどの手続きなどすべて込みの契約であったらしい。
会社退職後、携帯電話をはじめ流行の電気製品は一切無関心に過ごしてきた私にとって、パソコンは全く別世界の機械であり、正にキツネに包まれたような心境であった。
危険物に触れるかの様に、しばらく放置していたが、せっかくの子供達の好意を無にしてはと老妻に強要され、恐る恐る、ガチャガチャと悪戦苦闘の日々を重ねた。
説明書をよんでも理解できない。人に聞いても覚えたそばから忘れて行く。突然画面が消え、頭にきてコンセントを引き抜いた事もあった。
幸いにして、現役当時、貿易に携わっていた経験もあり、英文タイプには馴染みがあり、キーボード叩く事への抵抗はなかった。
一ヶ月近く経過して、漸く子供達へメールを発信する事ができ、孫から祝福の返信を受けたときには、急に若返ったような感動を覚えた。
今では、孫達とのメールの交信が日課になっている。おかげさまでボケる暇もなさそうである。 最近になって、子供達の狙いが私のボケ防止だったのかと、ようやく気がついた。