その連絡帳に涙した。
「途中入所の子も一ヶ月もすれば慣れますよ」と言われたが、息子は二ヶ月たっても私を門のところまで後追いし、鉄の扉のむこうで泣き叫んだ。
「お仕事一日休んで影から見てください!!」
その日は3びきの子豚の劇をやっていた。狼扮する息子の暴力は歯止めがきかない。
いつしか先生達の間で暴れん坊将軍と呼ばれた。
「どうしてお友達や先生をたたく?」と悲しい顔で聞く私に、「だってね、さくら組さんのみんながいじわるするんだもん」目に一杯の涙をためてお話してくれた。
きっと小さな心は淋しさで一杯ではりさけそうなくらいだったのだ。私は息子をぎゅうっと抱きしめて二人で泣いた。
時がたち、息子は少しずつ成長してくれた。園長先生から「面倒見のいい、優しい子ですザリガニの世話、うさぎ小屋のうんちの片付けは率先してやってくれます。障害をもつお友達にはひざを曲げてお話をしてあげて、ゆっくり一緒に歩いてあげれるんです」と。
発表会、和太鼓、運動会とどれも活躍し、私を喜ばせてくれた。
そして卒園する頃にはひまわり組さんのリーダーとなり、先生方やお友達の人気者になっていた。
あの私を後追いし、泣き叫ぶ息子はそこにはもういなかった。
「僕ね、お母さんをずっと守るからね。」そう言って暴れん坊将軍は私の小さな騎士になってくれました。