だけど昔は違った。家での会話は絶えなかったし、一緒に買い物にも出掛けていた仲だ。
仲が悪くなったきっかけは、高校3年での進路決め。私は就職と決めていたが、母は進学を求めてきた。
「看護師の資格があれば将来は楽よ」母に促され看護学校を受けたが失敗。「病院で働いて、来年受けなさい」私は気付く。自分の人生が母に決められていることに。
なりたくない資格なんて意味が無いなんて思っていたからか、2回目の受験も失敗。
「どうして勉強しないの?」怒鳴られたら「そんなに看護師いうなら自分がなれば?」怒鳴り返す。最後に「私の人生を決めないで」
病院に就いてしばらくは会話はあった。お弁当はおにぎりだけでいいと言うと、「休憩とれないくらい忙しの?」体を労ってくれた。
毎朝駅まで車で送ってくれて、迎えにも来てくれていた。今は自分の車で通勤している。思えば自分で通勤し始めた頃から顔を合わせなくなった。というか機会が減ってしまった。
看護への道を決めていれば、今でも仲は良かったのだろうか。今まで育ててくれたのに、ひどいことを言ってしまってことを後悔しても遅い。
でも母が私を嫌いになったとしても、私は嫌いになれない。仲が悪くて会話も無いけど、起きたら朝食はあるし、毎日お弁当も作ってくれる。
季節ごとに飲み物も変えてタンブラーに入れてくれたり、帰宅したら夕食がある。そして受験に失敗したとき母は、陰で泣いてくれていたのを知っている。
家族に尽くしてくれる母を嫌いになんてなれない私は、仲が直るきっかけの会話を見つける為に「おはよう」の挨拶を言い続ける。