京都の街角で、青い染め抜きの花模様の着物を着て、微笑む母のそばでにっこりしているおかっぱ頭の私。
どこまでも広がる黄色い菜の花畑で、花に顔をうずめている小さな私と、それを見守る母の優しいおくれ髪。
長い一本の道を、手をつないで歩いていく母と私の後姿。子供の頃の思い出の横にはいつも母がいて、私はこんなにも母に見守られて、育まれてきたのだという実感がいつも心を暖かくしてくれた。
でも子育てをしてみて初めて気がついたことがひとつある。
それは、そんな思い出の数々を今日の日まで残してくれたのは、そのフレームの中にはいない父だったということ。
不思議なくらい、今の今まで気がつかなかった。
子どもが生まれて、私がカメラを持つようになり、アルバムを作ってみればそこには、赤ちゃんを抱く旦那さん、お風呂に入れる旦那さん、寝かしつける旦那さん・・・。私と赤ちゃんの写真なんてまるでなくて、これじゃ将来うちの娘は私が育児放棄をしたと思うかな・・・と日々、苦笑いしている。
写真という記憶の不思議。
フレームに存在しないという、存在感。
お父さん。
気づくのが遅くなっちゃいました。
でも間に合って、よかった。
今までずっと、ありがとう。
控えめなあなたの深い真心を、ありがとう。