私のお家は、ラーメン屋。
お父さんの左腕は、ムキムキ。28年間変わらず毎日毎日湯切りする腕。この腕で高校・大学・専門を出してもらった。その腕で丁寧に作られるラーメンは、ものすごく美味しい。
お店にいる時のお母さんは、記憶マシーン。注文を次から次へと間違えることなく暗記していく。お客さんへの対応も、すごい。"看板ババァ"。キャラクター勝ちのその接客は、お客さんも楽しんでいるのかな。
子供の頃、ラーメン屋の娘なんて、本当はちょっと嫌だった。でも、今は自慢のお店。
私のお兄ちゃんは、美容師。私の受験の日、お兄ちゃんがトンカツを作って持たせてくれた。何があっても私の味方でいてくれる優しいお兄ちゃんは、自慢のお兄ちゃん。
三つ離れた妹は、舞台女優のハシクレのハシクレ。あどけない笑顔は、今も昔も変わらない。でも、客席へ向けられる笑顔、その大きな体で軽快に踏むステップ、自分が知るドンくさい妹とはかけ離れて見える。
私は、三人兄妹の真ん中。何か取り柄があるわけじゃない。でも、バランスをとるのは得意。三人兄妹の真ん中だから。
笑顔でどこまでも突っ走れる天真爛漫で予測不能なお父さん。太陽よりも明るいのに、石橋を叩き過ぎちゃうくらい心配性で慎重なお母さん。優し過ぎて自分をいつも犠牲にしちゃう口下手なお兄ちゃん。何も考えてないように見えて、本当は考え過ぎの妹。いろんなことが極端な私の家族。たまーにバランスを崩す。
バランス。
お父さんの暴走をほんの少し和らげ、お母さんの不安をできる限り拭い去ってあげて、口下手なお兄ちゃんの気持ちを引き出してあげて、自分のことがよく分かってない妹には、ヒントを出してあげる。
なんて言いながらも、お父さんの懐の広さに、お母さんの温かさに、お兄ちゃんの優しさに、妹ののどかさに、私の方が助けられたり救われたりしている。
「家族ってやっぱりいいよね。」と、いつも思う。