数日後、『パパ宛』に届いた似顔絵を見た家族は「ん?」と首をかしげた後、
「あっ!」と納得して大笑いしだした。
私は『パパのすきなところ』と題して父の頭だけを描いていたのだ。
父は髪が薄く、家以外ではいつもバンダナや帽子をかぶっていた。父は髪が薄いことを気にしていたので、そのことについて触れることは我が家のタブーになっていたのだが、私が描いた一枚の似顔絵で状況は変わった。
似顔絵を見た父は、すぐに自分の頭が描かれた事に気づき大笑いしだした。父は似顔絵を大変気に入り、額に入れて丁寧に飾ってくれた。それ以来、父は帽子やバンダナをしなくなった。父いわく、この似顔絵を見ていると、どんな悩み事があっても自然と笑いが込み上げてきて明るい気持ちになれるらしい。私は知らなかったが、病気で入院した時も、父は病室にこの似顔絵を飾っていたようだ。
現在、その似顔絵は父の写真と一緒に大切に保管している。たまに家族と一緒に見るのだが、その度に笑い声が家中に響く。
―やっぱり、そっくりだなあ。