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赤土へくる子供たち(1)

时间: 2022-09-13    进入日语论坛
核心提示:赤土へくる子供たち小川未明一 釣(つ)りの道具(どうぐ)を、しらべようとして、信(しん)一は、物置小舎(ものおきごや)の中(なか)
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赤土へくる子供たち

小川未明

 

 


 ()りの道具(どうぐ)を、しらべようとして、(しん)一は、物置小舎(ものおきごや)(なか)(はい)って、あちらこちら、かきまわしているうちに、あきかんの(なか)に、(かみ)につつんだものが、(はい)っているのを()つけ()しました。
「なんだろうか。」
 (あたま)を、かしげながら、ほこりに、よごれた(かみ)を、あけてみると、べいごまが、六つばかり(はい)っていました。(しん)一は、(きゅう)になつかしいものを、()いだしたようにしばらくそれに見入(みい)っていました。そのはずです。一昨年(おととし)(はる)あたりまで、べいごまが、はやって、これを()って(はら)っぱへ、いったものです。それが、べいのやりとりをするのは、よくないというので、お(とう)さんからも、先生(せんせい)からも、とめられて、ついみんなが、やめてしまったが、ただ記念(きねん)にしようと(おも)って、これだけすてずに、(かみ)(つつ)んで、しまっておいたことを、(おも)()しました。
「やはり、こまはおもしろいなあ。」
 お天気(てんき)はいいし、子供(こども)たちのあそんでいる(こえ)が、きこえるし、もう(しん)一は、じっとして、(いえ)にいることが、できなかったのです。べいごまを、ふところへ()れると、赤土(あかつち)(はら)っぱをさして、()かけていきました。
 (はら)っぱには、(たけ)ちゃんや、(ぜん)ちゃんや、(ゆう)ちゃんたちが、あそんでいました。
 (しん)一は、ふところから、べい()()して、(つち)(うえ)で、まわしてみました。これを()つけると、善吉(ぜんきち)が、(とお)くからかけてきました。
(しん)ちゃん、なにしてんだい。」と、さけびました。
「なんでもない、ただ、まわしてみたんだよ。」と(しん)一は、べいをひろい()げて、また(かみ)(なか)へ、()れました。
(きみ)、べいごま?」
「うん、そうだよ。」
「いくつ、()っているの?」
「六つしかない。」
 善吉(ぜんきち)は、あんなに、たくさん()っていたのに、どこへやったのかと、いわぬばかりの(かお)つきをして、(しん)一を()ました。
「あんなにあったのを、どうしたんだい。」
「みんな(かわ)へすててしまった。」
「おしいことをしたね。」
「だって、お(とう)さんが、すてろといったから。」
 善吉(ぜんきち)は、自分(じぶん)(おな)じようなめに、あったことを、(おも)()していました。
(きみ)は?」と、こんどは、(しん)一がたずねました。
「ぼくは、いま十()()っているよ。あとは、ごみ(ばこ)へ、すててしまったのさ。」
 善吉(ぜんきち)が、こう(こた)えると、(しん)一は、()をまるくして、
「いまなら、くず()さんにやると、いいんだね。ごみ(ばこ)(なか)へ、すてたりして、おしいなあ。」と、いいました。
「ぼくも、十()かくしておいたのを、()ってこようか。」と、善吉(ぜんきち)は、いいました。
「あ、()っておいでよ。」
 このとき、あちらから、勇二(ゆうじ)武夫(たけお)が、
「なにしているの。」と、口々(くちぐち)に、わめきながら、やはり、かけてきました。
「べいごま。」
「ぼくも()っているよ。」
「いくつ?」
「ぼくは、十五()ばかり。」と、武夫(たけお)が、いいました。
「おお、たくさんあるんだな。」と、みんなが、感心(かんしん)しました。
(ゆう)ちゃんは、()っていないの。」
(ぼく)は、十()ばかり。」と、勇二(ゆうじ)(こた)えました。
「なんだ、みんな、()っているんだな。じゃ、ここへ()ってきて、まわしっこしない?」と、善吉(ぜんきち)がいいました。
「しようよ。ただやるだけなら、いいんだろう。やったり、とったりして、かけなけりゃね。」と、勇二(ゆうじ)が、いいました。
「ほんとうは、それでは、おもしろくないんだがな。」と、武夫(たけお)がいいました。
「だめ、()つかったら、しかられるから。」
「さあ、(はや)くみんな、(いえ)へいって、()っておいでよ。」と、(しん)一が、いいました。
「オーライ。」と、子供(こども)たちは、元気(げんき)よく、いっさんに、(はら)っぱから、かけ()して、きえてしまいました。

まっさきかけて、つっこめば
なんともろいぞ、(てき)(じん)
(うま)よいななけ、かちどきだ

 (しん)一は、うたいながら、しきりに、べいをまわして、しばらく、しなかった、()ならしをしていました。
 すると、このとき、ぴかりと、自分(じぶん)(かお)を、あかるくてらしたものがあります。とんぼでも()んできて、さわったのでないかと、(かお)をなでてみました。そして、べいのまわるのを()ていると、また、ぴかりとしました。
「なんだろう?」
 (しん)一は、(あたま)()げて、(はら)っぱを()まわしました。はじめ、だれもいないと、(おも)ったのに、あちらに、材木(ざいもく)のつんである(うえ)で、(おんな)()が、あそんでいました。
 よく()ると、かね()さんと、光子(みつこ)ちゃんらしいのです。そして、ぴかりとしたのは、だれか、コンパクトに、ついているかがみで、()をてりかえして、自分(じぶん)に、いたずらを、したのです。
 (しん)一が、じっと()ていると、二人(ふたり)は、くすくす、(わら)っていました。
()っているよ。」と、(しん)一が、その(ほう)(はし)っていきました。
(わたし)たち、なんにもしないわ、おままごとしていたのよ。」と、かね()さんがいいました。
「コンパクトのかがみで、やったんだい。」
「ほほほ。」
(しん)ちゃん、そこにいるの。」と、まっ(さき)にかけてきたのは、善吉(ぜんきち)でありました。つづいて、武夫(たけお)に、勇二(ゆうじ)が、()にこまをにぎってかけてきました。
「ああ、ござが、ないなあ。」
「だれか、だいと、ござを、()ってくると、いいんだね。」
「だいは、いらないけれど、ござがなくては、できないよ。」
 こまは(つち)(うえ)では、よくまわらぬからです。勇二(ゆうじ)は、(あし)(ちから)をいれて、赤土(あかつち)(うえ)をトン、トン、と、ふんでいました。かたくして、そこで、こまをまわそうというのです。
(つち)(うえ)では、だめだよ、だれか、(いえ)にござを()っていない。」と、(しん)一が、いいました。そこへ、また、あちらから一人(ひとり)少年(しょうねん)がかけてきました。
小山(こやま)が、きた。」
 小山(こやま)は、かね()さんの(にい)さんです。
「べいをするのかい。」と、小山(こやま)が、ききました。
「ござがなくて、こまって、いるんだよ。だれか、ござを、さがしてこないかな。」と、勇二(ゆうじ)が、いいました。
(わたし)(うち)へいって、()ってきてあげるわ。」と、かね()さんが、いいました。
「ばか、(うち)にござなんか、ないじゃないか。」と、小山(こやま)は、かね()さんをにらみました。

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