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戦争はぼくをおとなにした(1)

时间: 2022-11-17    进入日语论坛
核心提示:戦争はぼくをおとなにした小川未明 まだ、ひる前(まえ)で、あまり人通(ひとどお)りのない時分(じぶん)でした。道(みち)の片(か
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戦争はぼくをおとなにした

小川未明


 まだ、ひる(まえ)で、あまり人通(ひとどお)りのない時分(じぶん)でした。(みち)(かた)がわに一(けん)()(もの)(てん)がありました。(おもて)(めん)した、ガラスのはまった(かざ)(まど)には、(わか)(おんな)(ひと)がきるような、はでな反物(たんもの)がかかっていました。それだけでも、(とお)人々(ひとびと)(あし)をとめて、()をひくに十(ぶん)といえますが、もう一つ、この(まど)(うち)へ、セルロイド(せい)の、(おお)きなはだかのキューピーがかざられて、いっそうの注意(ちゅうい)をひきました。キューピーのからだの(いろ)は、うす(あか)く、二つの()は、まるくまっ(くろ)でした。この健康(けんこう)そうな(あか)(ぼう)ほどもある人形(にんぎょう)は、そのひょうきんな(かお)つきでは、いまにも、足音(あしおと)におどろいて、()をくるくるさし、(とお)りかかる(ひと)になにか悪口(わるくち)をいって、いたずらをしかねまじきふうに()えました。つい無心(むしん)できかかる(ひと)まで、その(わら)いにつりこまれるくらいだから、わんぱくざかりの()どもらが、なんでこれを()て、なんともいわぬはずがありましょう。
 いずれは、この近所(きんじょ)()どもたちでした。ふたりづれの(おとこ)()が、どこからか往来(おうらい)()てきました。どちらも六つか、七つぐらいです。キューピーに()をとめると、たちまち(まど)のそばへ()ってきました。
 なんと(おも)ったか、ひとりの()は、いきなり両足(りょうあし)をひらいて、(おお)きな()をいからし、キューピーのまねをして、人形(にんぎょう)とにらめっこをしました。
 ()のひとりは、また、自分(じぶん)(かお)をガラスにおしつけて、できるだけ、よく()ようとしていました。しかし、なにをしても、キューピーには、()ごたえがありませんでした。ふたりは、これでは、こちらがばかにされるような()がして、腹立(はらだ)たしくなりました。
「やいキューピーのばか!」と、ひとりは、()をふりあげて、なぐるまねをして、みせました。それでも、キューピーは、だまっています。
「こら、(いし)ぶつけるぞ!」
 このとき、とつぜん、もうひとりの、(おとこ)()が、
「この、キューピー、おとなりのユウ(ぼう)みたいだよ。」と、(わら)いだしました。
「ユウ(ぼう)って、おりこう。」
「う、うん。」
「しょうべんたれの、うんこたれなの。」
「はっ、はっ、はっ。」
 そういって、ふたりは、(かお)見合(みあ)って、さもおもしろそうに、(わら)いました。
 (あお)(そら)は、さわやかに、よく()れています。(ふか)い、(ふか)い、水色(みずいろ)がかって、たれさがるあちらには、(とお)木立(こだち)(えだ)(くろ)く、(おお)きな(もり)の、(あたま)にさしている、かんざしのごとくみえました。そして昨夜(さくや)(しも)が、まだ(ひか)って枝先(えださき)(こお)りついているのが、()(ひかり)に、(ぎん)のごとくかがやいていました。こうして、(ふゆ)(あいだ)、じっとして、(ねむ)っていた自然(しぜん)だけれど、もうどことなく、じきに()をさましそうなけはいがしました。
 このとき、突然(とつぜん)(みせ)(おお)きな()があいて、おかみさんが、(かお)()しました。
「みんないい()だから、(つち)のかわくまで、あっちへいって、お(あそ)びなさい。(しも)どけで、ころぶと着物(きもの)がよごれますからね。」といいました。
 ふたりは、これをしおに、ここをはなれ、道普請(みちぶしん)砂利(じゃり)がつんであるほうへ、あるいていきました。
 そのとき、清吉(せいきち)は、ちょうど()物屋(ものや)(まえ)(とお)りかけていました。かれは、まだ十(さい)ぐらいの少年(しょうねん)であります。この(あさ)(はは)のいいつけで(よう)たしにいく途中(とちゅう)でした。
 いまゆかいそうに、とんでいった、(ちい)さな()どもたちの姿(すがた)()て、かれは、自分(じぶん)にもかつてあんな時代(じだい)があったと(おも)うと、そのころのことが、一つ一つ()()かんで、すべて(たの)しいことばかりだったような()がしました。ことに、父親(ちちおや)が、戦争(せんそう)にいかず、(いえ)ではたらき、また(いえ)()けなかったら、その(たの)しい生活(せいかつ)は、いまでもつづいて、自分(じぶん)は、しあわせであったろうと(おも)うのでした。
 かれは、(むかし)あそんだ、(とも)だちの(かお)などを、ぼんやり記憶(きおく)から、()びもどしていると、ふいに、
「おばけがきた。」という、さっきの()どもたちの(たか)(こえ)がして、その空想(くうそう)(やぶ)られたのでした。
 清吉(せいきち)は、(かお)をあげて、(こえ)のする(ほう)()ました。
「おばけがきた!」
「こわいよう、おばけがきた!」
 ふたりの()どもは、(みち)(うえ)でであった、おばあさんに()かって、ちょうど、臆病犬(おくびょういぬ)が、遠吠(とおぼ)えをするときのように、ののしっているのでした。
 これを()た、清吉(せいきち)は、なにごとだろうと(おも)い、できるだけ(はや)く、そこへと(ちか)づいたのでした。
「あっ、おばあさんが()いている。」
 かれは、そうさとると、(むね)がどきどきとして、(きゅう)目頭(めがしら)(あつ)くなりました。
「いったい、どうしたことだろう?」と、清吉(せいきち)は、()()まって、このありさまを()つめたのです。
 さむいけれど、空気(くうき)は、(おと)のはねかえるほど()んで、さえきっていました。また、ふたりの子供(こども)は、ぴちぴちとして、これから()びようとする(さか)りだったから、なにをみても、おもしろく、みなれぬ姿(すがた)は、おかしかったのです。

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