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戦争はぼくをおとなにした(3)

时间: 2022-11-17    进入日语论坛
核心提示: 人々(ひとびと)は、あちらの木(き)の下(した)に、一(ひと)かたまり、こちらのやぶ蔭(かげ)に、一(ひと)かたまり、いずれも押(
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 人々(ひとびと)は、あちらの()(した)に、(ひと)かたまり、こちらのやぶ(かげ)に、(ひと)かたまり、いずれも()しだまって、ただ()だけを、(あか)()ける(まち)(ほう)()けて、おそろしいありさまを見守(みまも)っていました。そのうちひとりが、ちがったところを()すと、みんなが、その(ほう)()きました。へびの(した)のように、(あか)(ほのお)が、ちろちろと、(くろ)建物(たてもの)(あいだ)から、()がりはじめたばかりです。
 と(おも)ううち、()()るすそをひろげて、一(ぽう)()(がっ)し、たちまち、あたりは()(うみ)となってしまいました。
「もう、さっきから、どれほど()けたろう。」
「さぞ、(ひと)がたくさん()んだろうな。」
 こんな(はな)(ごえ)がきこえました。清吉(せいきち)は、いくらがまんしても、からだがふるえて、ぞくぞく(さむ)けがしました。かれは、こんないくじのないことでどうしようと、自分(じぶん)をはげましました。
「おかあさん、あっちの(そら)をごらん。」と、とつぜん、()(てん)じようと、清吉(せいきち)は、さけびました。
「どうしたの。」と、(はは)は、ききました。
「あそこに、(ほし)()ているよ。」
 そこだけが、いつもの(しず)かな(よる)景色(けしき)と、()わりがなかったからです。そこだけを()るなら、地上(ちじょう)で、いま、(まち)()け、(ひと)()んでいるということが、(しん)じられない()がしました。
 そして、このすさまじいあらしにも、(たけ)(くる)(ほのお)にも、無関心(むかんしん)でいられる(ほし)世界(せかい)が、あまりにも、ふしぎにみえたのです。(いろ)とりどりの(ほし)が、たがいに(なか)よくして、たのしいことでもあるのか、ささやき()うような、また、おどけて、まばたきをしたり、()()でものをいったりしているようなのが、なんとなく、うらやましかったのでした。自分(じぶん)たちも、(ほし)(みやこ)へいったら、おとうさんは、戦争(せんそう)にいかなくてもよかったし、いつもみんなが、いっしょに(たの)しく()らすことができたであろうにと(おも)いました。
 ちょうど、(おか)(した)は、(むぎ)ばたけでした。ふさふさした()が、(かぜ)のために、波打(なみう)っていました。
(ぼう)や、なにしてるの。」
 (はは)背中(せなか)で、()をさました、(ちい)さな(おとうと)が、(あたま)といっしょにからだをゆり(うご)かしているのに()づいて、清吉(せいきち)は、(おとうと)のほうをば、()ました。すると(むぎ)ばたけで、(やぶ)れがさをかぶって手足(てあし)をひろげた、鳥追(とりお)いのかかしが、(よる)(やす)まずに、(ばん)をするのを、(おとうと)が、まねているのでした。
(ひと)が、こんなに心配(しんぱい)しているのに、(ぼう)やはわからないんだよ。」と、(はは)は、()をふいていました。こうきくと、清吉(せいきち)は、なんだか(おとうと)が、かわいそうになりました。いたわってやらなければならぬと(おも)いました。
 しだいに、(ひがし)(そら)が、黄色(きいろ)みをおびて、夜明(よあ)けが(ちか)づいたのであります。この時分(じぶん)から、どこか小川(おがわ)のふちで()く、かえるの(こえ)が、(たか)く、しげくなりはじめて、さながら、(あめ)()(おと)のように()()なくきこえてきました。
 ひとり()り、ふたり()り、しのびやかに、()()(ひと)たちがつづきました。清吉(せいきち)も、こうしているのが心細(こころぼそ)くなって、母親(ははおや)のたもとにつかまり、
「もう、(かえ)ろうよ。」といいました。
 (はは)は、いつまでも、()いていました。
「おまえ、(かえ)ろうって、どこへ(かえ)るの。もうお(うち)はないんだよ。」と、(はは)(こえ)は、(ちい)さく、ふるえました。
「そう、だったか。」と、清吉(せいきち)(おも)った。そしてこのときほど、自分(じぶん)(はは)をいたましく、(かん)じたことは、なかったのでした。
義雄(よしお)ちゃんのおじいさんが、()けたら、いつでもこいといったよ。ぼくは、なんでもして、これからおかあさんのおてつだいをするから。」と、かれは、(むね)(なか)(あつ)くなって、(はは)元気(げんき)づけようとしても、わずかに、これだけしかいえなかったのでした。
 しかし、(はは)は、なんとも(こた)えず、いつまでも()いていました。かれは、これではならぬと()って、
「おとうさんが、(かえ)れば、(あたら)しい(いえ)をこしらえてくれるよ。」と、つづけていいました。
 しばらくすると、(はは)は、()きやんで、そでで(かお)をふきながら、
「おまえがあるから、おかあさんは、もう、けっして()きませんよ。」と、(はは)は、いったのでした。
 清吉(せいきち)は、あの()のことを(おも)()しました。もしそうでなかったら、きょう、おばあさんをみても、なぐさめようとしなかったでしょう。
「ぼくは、もうおとななんだから……。」
 かれは、はりきった気持(きも)ちで、(むね)をそらし、両足(りょうあし)(ちから)()れて、電車道(でんしゃみち)(ある)いていったのでした。

 

 

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