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月夜と眼鏡(2)

时间: 2022-11-26    进入日语论坛
核心提示:おばあさんが、銭ぜにを渡わたすと、黒くろい眼鏡めがねをかけた、ひげのある眼鏡売めがねうりの男おとこは、立たち去さってしま
(单词翻译:双击或拖选)
 
おばあさんが、ぜにわたすと、くろ眼鏡めがねをかけた、ひげのある眼鏡売めがねうりのおとこは、ってしまいました。おとこ姿すがたえなくなったときには、草花くさばなだけが、やはりもとのように、よる空気くうきなかにおっていました。
おばあさんは、まどめて、また、もとのところにすわりました。こんどは楽々らくらくはりのめどにいととおすことができました。おばあさんは、眼鏡めがねをかけたり、はずしたりしました。ちょうど子供こどものようにめずらしくて、いろいろにしてみたかったのと、もう一つは、ふだんかけつけないのに、きゅう眼鏡めがねをかけて、ようすがわったからでありました。
おばあさんは、かけていた眼鏡めがねを、またはずしました。それをたなのうえざまし時計どけいのそばにのせて、もう時刻じこくもだいぶおそいからやすもうと、仕事しごとかたづけにかかりました。
このとき、またそとをトン、トンとたたくものがありました。
おばあさんは、みみかたむけました。
「なんという不思議ふしぎばんだろう。また、だれかきたようだ。もう、こんなにおそいのに……。」
と、おばあさんはいって、時計とけいますと、そとつきひかりあかるいけれど、時刻じこくはもうだいぶけていました。
おばあさんはがって、ぐちほうにゆきました。ちいさなでたたくとえて、トン、トンというかわいらしいおとがしていたのであります。
「こんなにおそくなってから……。」と、おばあさんはくちのうちでいいながらけてみました。するとそこには、十二、三のうつくしいおんなをうるませてっていました。
「どこのらないが、どうしてこんなにおそくたずねてきました?」と、おばあさんは、いぶかしがりながらいました。
わたしは、まち香水製造場こうすいせいぞうじょうやとわれています。毎日まいにち毎日まいにちしろばらのはなからった香水こうすいをびんにめています。そして、よる、おそくうちかえります。今夜こんやはたらいて、ひとりぶらぶらつきがいいのであるいてきますと、いしにつまずいて、ゆびをこんなにきずつけてしまいました。わたしは、いたくて、いたくて我慢がまんができないのです。てとまりません。もう、どのうちもみんなねむってしまいました。このうちまえとおると、まだおばあさんがきておいでなさいます。わたしは、おばあさんがごしんせつな、やさしい、いいかただということをっています。それでつい、をたたくになったのであります。」と、かみながい、うつくしい少女しょうじょはいいました。
おばあさんは、いい香水こうすいにおいが、少女しょうじょからだにしみているとみえて、こうしてはなしているあいだに、ぷんぷんとはなにくるのをかんじました。
「そんなら、おまえは、わたしっているのですか。」と、おばあさんはたずねました。
わたしは、このうちまえをこれまでたびたびとおって、おばあさんが、まどした針仕事はりしごとをなさっているのをっています。」と、少女しょうじょこたえました。
「まあ、それはいいだ。どれ、その怪我けがをしたゆびを、わたしにおせなさい。なにかくすりをつけてあげよう。」と、おばあさんはいいました。そして、少女しょうじょをランプのちかくまでれてきました。少女しょうじょは、かわいらしいゆびしてせました。すると、しろゆびからあかながれていました。
「あ、かわいそうに、いしですりむいてったのだろう。」と、おばあさんは、くちのうちでいいましたが、がかすんで、どこからるのかよくわかりませんでした。
「さっきの眼鏡めがねはどこへいった。」と、おばあさんは、たなのうえさがしました。眼鏡めがねは、ざまし時計どけいのそばにあったので、さっそく、それをかけて、よく少女しょうじょ傷口きずぐちを、てやろうとおもいました。
おばあさんは、眼鏡めがねをかけて、このうつくしい、たびたび自分じぶんいえまえとおったというむすめかおを、よくようとしました。すると、おばあさんはたまげてしまいました。それは、むすめではなくて、きれいな一つのこちょうでありました。おばあさんは、こんなおだやかな月夜つきよばんには、よくこちょうが人間にんげんけて、よるおそくまできているいえを、たずねることがあるものだというはなしおもしました。そのこちょうはあしいためていたのです。
「いいだから、こちらへおいで。」と、おばあさんはやさしくいいました。そして、おばあさんはさきって、戸口とぐちからうら花園はなぞのほうへとまわりました。少女しょうじょだまって、おばあさんのあとについてゆきました。
花園はなぞのには、いろいろのはなが、いまをさかりといていました。昼間ひるまは、そこに、ちょうや、みつばちがあつまっていて、にぎやかでありましたけれど、いまは、葉蔭はかげたのしいゆめながらやすんでいるとみえて、まったくしずかでした。ただみずのようにつき青白あおじろひかりながれていました。あちらの垣根かきねには、しろばらのはなが、こんもりとかたまって、ゆきのようにいています。
むすめはどこへいった?」と、おばあさんは、ふいにまってきました。あとからついてきた少女しょうじよは、いつのまにか、どこへ姿すがたしたものか、足音あしおともなくえなくなってしまいました。
「みんなおやすみ、どれわたしよう。」と、おばあさんはいって、いえなかはいってゆきました。
ほんとうに、いい月夜つきよでした。
 
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