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とうげの茶屋(3)

时间: 2022-11-27    进入日语论坛
核心提示:これを聞きくと、おじいさんは、炉ろの中なかに松葉まつばをたき、上うえから釣つるした鉄てつびんをわかしにかかりながら、「来
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これをくと、おじいさんは、なか松葉まつばをたき、うえからるしたてつびんをわかしにかかりながら、
来年らいねんから、このみちをバスがとおるというこった。それで、いまのうち、はやくまえ停留場ていりゅうじょうくよう運動うんどうをしろと、さっき助役じょやくさんがいらしていわしたが、おまえもるとおり、おらも、だんだんとしをとるだし、いっそせがれのもとへいったほうがいいかともかんがえてな。」と、しんみりとした調子ちょうしで、かたりました。
としとった百しょうは、したき、あおけむりをただよわして、えるをじっとて、きいていましたが、
「なにしろ、おやひとり、ひとりだもの、いっしょにらすにすことはない。だが、まれたときから、みなれた土地とちだもの、ここをはなれかねるおまえの心持こころもちはよくわかる。どっちでも、よく思案しあんして、きなようにするがいいぜ。しかし、このみちをバスがとおるので、商売しょうばいたぬという心配しんぱいなら、しないがいい。バスにひとはきまっている。毎日まいにちって、まちたりはいったりするものが、そんなものにれっこない。それに、ゆきれば、くるまなど、とおりたくても、とおれっこない。ここは、ふゆのほうが、やすひとおおいんだから、先越さきこ苦労くろうをさっしゃるな。停留場ていりゅうじょうなんか、どこへいてもいいというで、きにまかしておかっしゃい。また、どんなことがあろうと、おまえ一人ひとりぐらい、わしらが、こまらしはしない。」といって、おじいさんをなぐさめました。
「このくらいで、かんはどうだろう?」
おじいさんが徳利とくりげてつぐのを百しょうはうけ、くちれて、くびをかしげました。
「もうちっと、あつくするかい。」
「いや、ちょうどいい。ああ、おまえがいけるなら、いっしょにやりたいと、いつもおらあ、ざんねんにおもうだよ。」
「なあに、そうして、気持きもちよくんでもらえれば、わしもったように、うれしくなるぜ。」
二人ふたりは、したしくはなしながら、いている障子しょうじあいだから、ほんのりとあかるくれていくやまほうをながめていました。
その翌日よくじつは、にわかに天気てんきわりました。あさのうちから木枯こがらしがきつのり、日中にっちゅう人通ひとどおりが、えたのです。おじいさんははやくからめてしまいました。
まだ、そとそらは、幾分いくぶんあかるかったけれど、いえうちは、ともしびをつけると、けたごとく、しんとしました。このときトン、トン、とをたたくおとがしました。
おじいさんは、かぜおとだろうと、はじめはにとめなかったが、つづいて、トン、トンと、おとがきこえるので、だれかきたのだとさとりました。
ふと、きつねのるうわさが、あたまかんだので、おじいさんは、いっそう用心ようじんしながら、ほうちかづきました。
「なんのごようかな。」と、うちからおおきなこえでききました。
「おめになったのを、すみません。」
そう、いったのは、やさしいおんなこえでした。おじいさんは、ますます、不審ふしんおもい、ほそめにけて、そとをのぞきました。
すると、そこには、ちいさなおとこをつれた、まだわかおんなひとっていました。ようすで、たびのものであるとわかります。
「もう、だれもこないとおもいまして、はやくしめました。」
「すみません、おいもか、かきでも、なにかたべるものがありましたら。」と、おんなは、いいました。
「はい、ありますが。」と、おじいさんは、をからりとあけました。
「すこしはいっておやすみなさっては。どちらへ、おいでなさるのですか。」と、おじいさんは、たずねました。
「このさきむらへいくのですが、汽車きしゃがおくれてきまして、それにはじめての土地とちなもんで、き、き、まいりました。子供こどもが、もうあるけないからというのを、なにかあったら、ってあげようといい、いい、元気げんきづけてきました。」
おじいさんは、おくから、かきといもぼんにのせてってきておんなわたし、べつにゆでたくりを一握ひとにぎり、それは、自分じぶんから子供こども両手りょうてれてやりながら、
「それは、それは、おたいぎのことです。ここから、もう一息ひといきのおほねおりですが、みちはよろしゅうございます。それではすこしでもおはやく、あかるいうちに、いらっしゃいまし。」といいました。そして、こころでは、だれか、むら青年せいねんで、他郷たきょういえったものの女房にょうぼうであろうとおもいました。
「お世話せわになりました。」と、おんなは、れいをいって、子供こどもき、かぜなかをうすぐらくなりかけたみちえていきました。
しばらく、戸口とぐちって、見送みおくっていたおじいさんは自分じぶんにも、あちらでせがれの結婚けっこんしたよめのあることをおもいました。
「いつ、ああして、たずねてこないものでもない。」
もし、そのとき、まちから、むらへ、バスがとおっていたら、どんなになるか、便利べんりなことであろう。そう、かんがえると、このときまで、あたまなかにあった、商売上しょうばいじょうのことや、一しん損得そんとくなどということが一しゅんにのごとくんでしまって、ただなかあかるくなるのが、なによりよろこばしいことであるようにかんじられ、また、おおくのひとたちがしあわせになるのを、しんこころからのぞまれたのでありました。
 
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