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羽衣物語(3)

时间: 2022-12-04    进入日语论坛
核心提示:三富士山ふじさんは紫色むらさきいろをおび、ゆったりと長ながくすそを引ひいていました。その広ひろいすそ野ののふちを、青黒あ
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富士山ふじさん紫色むらさきいろをおび、ゆったりとながくすそをいていました。そのひろいすそのふちを、青黒あおぐろいろうみが、うねりをあげ、そして、もやのかかる松林まつばやしや、しろすな浜辺はまべは、りの模様もようのようにえるので、さすがに天女てんにょも、しばらくはわれをわすれて、とれずにはいられませんでした。
天女てんにょは、それが、こうしてわざわいをまねくともらず、たもとをひるがえすと、さっさとくじゃくのうように、人間にんげんのいぬのをさいわいに、松原まつばらりたのであります。
すると、しめったつちのさわやかさ、水晶すいしょうをくだくうみみず天女てんにょは、こころいくばかりそれにしたしまんものと、あしにまつわる羽衣はごろもをぬいでまつえだへかけ、はだしのまま、なぎさのほうはしったのでした。
そして、つめたいみずあしをひたしながら、ささやきつつ、せてはかえすさざなみ相手あいてとしてたわむれ、いつしか、ときのたつのをわすれていたのでありました。そのうち、ひがしそらがほんのりとあかいろづきました。それをて、天女てんにょは、はじめて朝日あさひがらぬうち、てんかえらなければならぬとづき、羽衣はごろもをとりに、松原まつばらかえしたのでした。
ところが、その大事だいじ羽衣はごろもは、いつのまにか、人間にんげんはいっていました。このとき、若者わかものは、
「これほどおねがいしても、まだなんともおっしゃらぬのは、わたしこころがおわかりにならぬからでございますか。」と、かなしそうにいいました。これをくと天女てんにょは、
「いえ、なんで、わからぬことがございましょう。てんとわかれていても、なさけにかわりもなければ、またしや、よろこびやかなしみにも、ちがいはないのでございますものを。」と、こたえたのでした。
「それなら、なぜ、わたしねがいをいてはくださいませんか。」と、若者わかものは、いきいきとした天女てんにょけました。天女てんにょはためらいながら、
そらにいるわたしは、まったく、地上ちじょうのくらしをらないのでございます。」といいました。
「さっき、なさけにかわりはないと、おっしゃったではありませんか。」
「そうもうしましたのも、あなたの真心まごころがよくわかり、うれしくおもったからです。そうおもえばこそ、なおさら、あなたをしあわせにしなければなりません。まったく、この地上ちじょうのくらしをらぬわたしに、なんで、あなたをしあわせにすることができましょう。」
「いえ、いっしょにいてさえくだされば、それでわたし満足まんぞくします。またそれが、どれだけわたしちからづけるかしれません。わたしは、やまへいってたきぎもとってくれば、うみさかなもとってきます。すこしもあなたに、ご不自由ふじゆうをばさせません。」と、若者わかものは、あくまでおもいをとおそうとしました。
あわれな天女てんにょは、なやみにたえかねてか、かおにははないろがあせ、青白あおじろく、きゅう姿すがたがやつれてえました。
これをると、若者わかものは、天女てんにょをいたいたしくかんじたのでした。そして、なんとなく、じっとしていられなくなりました。
天女てんにょさま、わたしわるいのでございます。わがままをいって、あなたをくるしめてもうしわけがありません。どうぞ、おゆるしくださいまし。」と、あたまをひくくたれました。
すると、天女てんにょは、あたまげて、
人間にんげん人間にんげんのつとめをはたして、とうといのであります。もし、だれでもそのみちをあやまるなら、どんな不幸ふこうこらぬともかぎりません。それゆえ、はやわたしそらかえしてください。」と、なみだかべていいました。
若者わかものは、天女てんにょのどこまでもやさしく、ただしいのに感心かんしんしました。そして、自分じぶんわるかったのをさとると、こうしてっているのさえ、なんとなく気恥きはずかしくなったのです。
「あなたは、てんにいらして、なにをなさっていられますか。」と、若者わかものきました。
わたしは、かみさまにおつかえしています。くもうえにて、五しきはたります。また、かみさまのお使つかいで、ときどき、ほし世界せかいからほし世界せかいへと、びまわることもあります。」と、天女てんにょこたえました。
若者わかものは、ていねいに羽衣はごろも天女てんにょまえへさししながら、
「どうぞ、これをおりくださいまし。ついては、こんなおねがいをするのも、まことにあつかましいはなしですが、せっかくのお名残なごりに、せめていつまでも、うつくしい、ただしいあなたに、おにかかったおもとなるような、なにかおしるしをいただきたいのですが、かなわぬねがいでございましょうか。」
わたしちますものは、すべて、この羽衣はごろものように、にじやかすみをってつくったものだけに、人間にんげんにわたれば、いつまでも、かたちとなってのこったことはありません。下界げかいにすさぶあらしやあめにさらされるなら、たちまち、やぶれてしまうでしょう。しかし、あなたのような正直しょうじきかたには、わたしのおあたえしたものは、いつまでもこころのうちへのこり、あなたの一しょうを、たのしくおくらしさせることができましょう。」といいました。
「まあ、それは、どんなとうといしなでございますか。」
「いえ、かたちのあるものではございません。いまももうしますように、かたちのあるものは、いつか、やぶれくずれるものであります。かたちがなくなって、こころのこるものこそ、いつまでもこわれることのないたからであります。」
「と、もうしますたからとは?」
人間にんげんかんがえでは、にすらけない天女てんにょまいを、ごらんにれたいとおもいます。」
こうくと、若者わかものかおは、きゅうにはればれしくなって、にっこりわらい、
たものは、この心配しんぱいや、としわすれると、昔話むかしばなしいたが、まだだれもたとかぬ天女てんにょまいでございますか。それはありがたい。」といいました。

このとき、たちまち、どこからともなくこるふえこえ、それと相和あいわ太鼓たいこおと若者わかものは、おもわずあたまをめぐらして、そのうつくしい音色ねいろにうっとりときほれました。
れば、もう天女てんにょ姿すがたは、そらへとかんでいました。若者わかものが、「あれよ。」というまに、天女てんにょながたもとはひるがえって、若者わかもののかしらのうえへたれさがり、そのはしが、でとらえられそうなところまでくると、ふたたび、まきがるくものように、たかくはなれて、音楽おんがく急調子きゅうちょうしにはずみ、それといっしょに、しばらく、はげしくいくるったのであるが、いつしか、しだいにたかたかく、そのまま姿すがたとおちいさくなり、ついに、かすみの奥深おくふかってしまったのであります。
いつのまにか、うつくしい音楽おんがくもやんで、ただ、そよそよと朝風あさかぜのうちに、音楽おんがくが、いつまでもただよっていたのでありました。
浜辺はまべすなうえに、じっとしてすわっていた若者わかものは、やっとゆめからさめたようにがり、方々ほうぼうまわしましたけれど、もうどこにも、天女てんにょ姿すがたもなければ、羽衣はごろものかげもありませんでした。
そして、広々ひろびろとした海原うなばらと、あお松林まつばやしと、いつにかわらぬ富士山ふじさんがあるばかりでした。若者わかものは、そのながい一しょうただしく、たのしくおくることができました。
かれは、仕事しごとにつかれたときなど、いつも大空おおぞらあおいで、天女てんにょおもしました。すると、ふしぎや、天女てんにょくもうえから、ほしのような下界げかいつめて、なぐさめ、はげましてくれたのであります。
 
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