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はちの巣(1)

时间: 2022-12-04    进入日语论坛
核心提示:はちの巣小川未明ある日ひ、光子みつこさんは庭にわに出でて上うえをあおぐと、青々あおあおとした梅うめの木きの枝えだに二匹ひ
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はちの巣

小川未明


ある光子みつこさんはにわうえをあおぐと、青々あおあおとしたうめえだに二ひきのはちがをつくっていました。
「おとなりのいさむちゃんがつけたら、きっとってしまうから、わたしらさないでおくわ。」
そうおもってていますと、一ぴきずつかわるがわるどこかへとんでいっては、なにか材料ざいりょうをくわえてきました。そして、一ぴきがかえってくると、いままでにとまってばんをしていたのがこんどとんでいくというふうに、二ひきちからをあわせてそのおおきくしようとしていたのです。
そののち、光子みつこさんは毎日まいにちうめしたって、そのおおきくなるのをるのがなんとなくたのしみでありました。
「もう、今日きょうはあんなにおおきくなった。」
しかし、それはほんとうにすこしずつしかおおきくならなかったのです。二ひきのはちがちいさなくちにくわえてきた材料ざいりょうを、自分じぶんくちからるつばでかためていくのでありましたから、なかなかたいへんなことです。けれど、はちは、たゆまずうまずに、あさばんをつくることに、いっしょうけんめいでありました。
ところが、どうしたことか、そのうちにとまっているのがいつも一ぴきであって、もう一ぴきのすがたがえなくなったことです。
「どうしたんでしょう?」と、光子みつこさんはしんぱいになりました。
光子みつこさんはおかあさんのところへはしっていきました。
「ねえ、おかあさん、はちが一ぴきいないのよ。いつも二ひきのがどうしたんでしょうね?」といって、きいたのであります。
「そうね、きっとそのうちにかえってくるでしょう。」と、おかあさんにもすぐにはわからなかったのでした。
「もう、ずっとかえってこないの。一ぴきがさびしそうにしているの。」と光子みつこさんは、なんだかひとりのこされたはちのうえおもうと、でなかったのです。
「どうしたんでしょうね。いたずらっにでもころされたか、わるいくものにでもかかって、かえれないのかもしれません。」と、おかあさんはおっしゃいました。
――わるいくも――ということが、すぐに光子みつこさんのあたまつよくひびいてきました。いつであったか、ひさしからえだにかけていたくものに、はちがかかって、とうとうくものためにころされたのをたことがあったからです。また、そのには、せみもかかれば、ちょうもかかったのでした。さいしょ、これらのむしがとんできて、えないほそいとあしをとらえられると、げようとしてもがきます。しかし、いくらあせっても、もちのようにいとがねばりついて、あしにからみつくばかりです。そのうちに、むしよわってしまう、そのとき、どこからかくろおおきなくもがあらわれてきて、するどいくちってしまうのでありました。
そのありさまをおもいだすと、この勤勉きんべんなはちもそんなめにあったのではないかと、いたましいすがたが想像そうぞうされたのです。そればかりではありません。また――いたずらっころされる――というしんぱいも、ないではなかったのです。
いつか、いさむちゃんがみずたまりへみずみにおりてきたはちを、っていたぼうでたたきおとしてころしたことがあったのです。
いずれにしても、一ぴきのはちはなにかの不幸ふこうあって、もうかえってこないもののようにおもわれました。光子みつこさんは、また、うめしたにもどってきました。
「まだかえってこないのか。どうしたんでしょう、ひとりで、さびしくない?」といって、にとまっている一ぴきのはちにはなしかけました。
けれど、ものをいうことのできぬはちは、ただにとまってじっとしているばかりでありました。ちょうどそこへ、いさむちゃんがあそびにきましたから、光子みつこさんはうめしたをはなれてしまいました。
光子みつこさん、まだうめがなっているね。もううめはあまくなった?」といって、いさむちゃんはうめあげました。
光子みつこさんは、いさむちゃんがはちのつけたらたいへんだ、きっとそのままにしておかないとおもいましたから、
いさむちゃん、こっちへいらっしゃい。きれいなお人形にんぎょうさんをせてあげるわ。昨日きのう、よそのおばさんにいただいたのよ。」といいますと、いさむちゃんはにやけたまっくろかおをして、
「お人形にんぎょうさんなんか、いいよ。それより、ねこをつれておいでよ。」と、いいました。
いさむちゃんは、ねこがだいすきなのでした。
「タマは、いまいないの。」と、光子みつこさんはタマをすまいとしました。
なぜなら、いさむちゃんはあまりかわいがりすぎて、ねこをくるしめたからです。
「どこへいったの?」
いさむちゃんは、おうちなかをのぞいていました。光子みつこさんは、タマがてこなければいいとおもいました。てきたら、またいさむちゃんがだいたりをひっぱったり、いやだといってげるのをむりにおさえて、そとへつれていってしまうだろうとしんぱいになったからです。
「きっと、おじいさんのところでしょう。」と、光子みつこさんはいいました。
いさむちゃんは、光子みつこさんのうちでいちばんおじいさんがこわかったのです。だから、もうそれっきりねこのことをいうのをやめてしまいました。
光子みつこさん、あそびにいこう。」と、いさむちゃんがいいました。
「ええ、いきましょう。」
光子みつこさんはいさむちゃんとかたをならべて、木戸きどをあけて、きらきらと草木くさきにかがやいている往来おうらいほうへとていきました。あちらには、としちゃんやよしさんたちがあそんでいました。すぐに、みんなはいっしょになりました。
はらっぱへポチをつれて、きちきちばったをりにいこう。」と、いさむちゃんがいいました。
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