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びっこのお馬(1)

时间: 2022-12-07    进入日语论坛
核心提示:びっこのお馬小川未明二郎じろうは、ある日ひ、外そとに立たっていますと、びっこの馬うまが、重おもい荷にを背中せなかにつけて
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びっこのお馬

小川未明


二郎じろうは、あるそとっていますと、びっこのうまが、おも背中せなかにつけて、かれていくのでありました。
二郎じろうは、そのうまて、かわいそうにおもいました。どんなに不自由ふじゆうだろう。そうおもうと、達者たっしゃうまは、威勢いせいよく、はやくあるいていくのに、びっこのうまはそれにけまいとして、あせながしていっしょうけんめいにあるいているけれど、どうしてもおくれがちになるのでありました。
「このびっこめ、はやくあるけ……。」と、そのうまいている親方おやかたは、ピシリ、ピシリとこのうまのしりをつのでした。
二郎じろうは、ぼんやりとって、それを見送みおくっていますと、やがて、往来おうらいをあちらのほうへと、とおざかっていったのであります。二郎じろうは、まだ六つになったばかりでした。
うちはいってから、にいさんや、ねえさんに、今日きょう、あちらのみちをかわいそうなびっこのうまとおったことをはなしました。しかし、にいさんも、ねえさんも、自分じぶんたちは、それをなかったから、
二郎じろうちゃんは、なにをたんだか……。」といって、わらっていました。
二郎じろうは、自分じぶんた、かなしい、あわれなうまについて、よくあにや、あねにわからせたいと、いろいろにあせって、どもりながら、うったえましたけれど、相手あいてにしてくれないので、
「そんなら、あしたの晩方ばんがたそとていてごらん、きっと、あのうまとおるだろうから……。」と、二郎じろうは、にいさんやねえさんにいいました。
「ああ、とおったら、らしておくれ。」と、にいさんや、ねえさんはこたえました。
二郎じろうは、あくる晩方ばんがたともだちらがそとて、おにごっこをしたり、独楽こまをまわしたりしてあそんでいる時分じぶんに、ひとり、みんなからはなれて、ぼんやりと往来おうらいうえって、とおうまや、くるまをながめていました。また、昨日きのうのびっこのうまとおるかとおもったからです。
二郎じろうっているまえとおくるまや、うまは、黄色きいろなほこりをたててゆきました。ほこりは、これらのうまくるまがいってしまったあとでも、なお空中くうちゅうにただよっていましたが、ついに昨日きのうのびっこのうまとおりませんでした。
二郎じろうちゃん、びっこのうまとおった?」と、うちはいったときに、にいさんや、ねえさんは、二郎じろういました。二郎じろうは、さびしそうにあたま左右さゆうりました。しかし、たとえ、今日きょう、このみちとおらなくとも、どこかの往来おうらいうえを、今日きょうもまたあのびっこのうまとおるであろうと、二郎じろう子供心こどもごころながらにも想像そうぞうされたのです。そして、そのいじらしい姿すがたおもうと、二郎じろうは、あわれになってなみだぐまれたのであります。
二郎じろうは、自分じぶんつくえのひきだしのなかに、色紙いろがみと、はさみとをっていました。かれは、それをしてきて、びっこのあおうまいたのでした。
そのかみうまは、よくようすが、あのときた、びっこのうまているように、自分じぶんおもわれました。
かれは、そのうまつように工夫くふうしました。そして、それをつくえうえにのせてみては、いろいろと空想くうそうにふけっていたのであります。
「かわいそうなうまが、こうして、今日きょうも、どこかのみちうえあるくであろう。」
こう、二郎じろうは、かみあおうまをながめておもっていました。あのときうまは、あおうまではなかったのです。しかし、かれかみあおうまているうちに、あたまなかうまも、いつしかあおいろわってしまったのであります。
ちょうどはるで、ぼけのはな時分じぶんでありました。あには、どこからか、ぼけのわっているはちってきました。いまそのには、真紅まっかはながもみつけたようにさかりでありました。あには、それを庭先にわさきいしうえにのせて、朝晩あさばんみずをやって、大事だいじにしていました。
あるのこと、庭先にわさきでねこがたいへんにないて、けんかをしました。翌日よくじつけてみると、ぼけのえだが一ぽんれていました。それは、ねこがけんかをしたときに、さわってったので、そこには、しろがたくさんにちていました。これをたとき、おどろいたのは、にいさんばかりでありません。ねえさんも、また二郎じろうもたいそうおどろいたのです。しかし、そのうちでも、あには、いちばんかなしみました。
「どうしたら、また、もとのようなえだぶりになるだろう?」と、にいさんはいって、ねこをうらんだのであります。
このとき、ちょうど、叔父おじさんがおいでになりました。そして、あにかなしんでいるそばへやってこられて、
「そんなに、かなしまなくたっていい。あめに、そとしてやれば、じきに、れたところからあたらしいをふくから。」と、叔父おじさんはもうされました。
あには、これをくとたいそうよろこびました。そして、あめに、あには、ぼけのはちそとしてやりました。
二郎じろうは、にいさんのすることをだまって、よくていました。れたえだあめたれば、をふくというから、びっこのうまも、あめたったら、きっとあしびるだろうと、かんがえたのであります。
天気てんきくもったのことでありました。二郎じろうは、ねえさんに、かみあおうまわたして、
ねえさん、どうかこのうまを二かい屋根やねうえしておいてください。」といいました。
「なぜ、二郎じろうちゃんはそんなことをするの?」と、ねえさんは不思議ふしぎがりました。ひく二郎じろうには、自分じぶんひとりでは、それをまどそとすことができなかったのです。
「いいから、しておくれよ。」と、二郎じろうたのみました。
「いまじきにあめってきますよ。すると、おうまがぬれてしまいますよ。」と、ねえさんはいいました。
あめたったら、おうまあしびるだろう。」と、二郎じろうがいいましたので、ねえさんも、このはなしいていたにいさんも、また、うちじゅうのひとがみんなでわらいました。
「ああ、びますよ。」と、ねえさんはいって、またわらわれました。
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