んの記憶はありませんが…。父と母の間に私がはさまれてい
て、いつもねがえりをうつとそこには両親がいてくれました。
弟が生まれると、父、私、母、弟の順、更にもう一人弟が生まれ
ても、五人川の字になってねむる時間は、私のとても大切なも
のです。
母のベッドは、私が友達とケンカをした時、そっと私を包ん
でくれて、何がいけなかったかを静かに考えさせてくれます。
悲しくて、くやしい時、母の毛ふが私の涙をぬぐってくれま
す。病気の時や、真冬の寒い日は、優しく私をいやしてくれま
す。そんな母のベッドは、いつでも私の心と体を温めてくれる
「オアシス」なのです。だから私と弟は母のベッドが大好きで、
だれが母のベッドでねるか、よくケンカをします。ある日、
「そんなに好きなら、桃花にお母さんの毛ふをあげるよ。」
と、言われました。
「やったぁ。お母さんの毛ふもらえるよぉ。」
早速もらった毛ふをかけてねてみました。
「あれ、いつものお母さんの毛ふじゃない。ひんやり冷めたい
し。かすかにしかお母さんのにおいもない。何これ、変、いつ
もとちがうよ。」
私は下におりて母に、
「今日毛ふ洗った。何かしたの。」
と聞きました。でも、母は、
「何もしていないよ。いつもと同じだよ。」
私はもう一度自分のベッドへ行って確かめましたが、さっき
と変わらず、ひんやりしていました。母が私のベッドへ来て、
「どうしちゃったのかなぁ。」
母の新しい毛ふはすでに母のにおいがいっぱいでとても温
かくなっていました。
「やっぱりそっちの毛ふと交かんしてよ。」
「いいよ。」
母から私に移ったとたん、毛ふはひんやりしてきます。母
が、
「桃花、お母さんの毛ふは魔法でも何でもないんだよ。桃花や
蓮、凜がつらい時、困った時、いつでもホッとできるように、そ
して早く元気になれるように温めているだけなんだよ。」
いつでも私達の事を考えてくれている母は、世界一素敵な
母です。今では毛ふを交かんしたいとは思わなくなりました
が、やっぱり母のベッドは私達のオアシスであり、大好きな場
所です。今でも母のベッド争奪戦は続いていますが、私も弟も
母のベッドに足を入れて、まるでこたつのようになっていま
す。母は、
「こたつじゃないんだから。」
と、さけびますが、今日も大好きで温かい母のベッドでみんな
笑顔でねむります。