鶴脛(つるはぎ) (山形県上かみの山やま市)
傷を負った鶴の足を癒した温泉地
JR奥羽本線かみのやま温泉駅から北西へ一・五キロほど行くと、「鶴脛」という町がある。江戸時代には上山城郭の中心地として栄え、明治のなかばに市町村制が施行されるとともに町名が定められた。
「鶴の脛すね」という不思議な町名は、その名のとおり、鶴に関係している。一四五八(長ちよう禄ろく二)年、肥前国(佐賀県)の杵き嶋しま郡から月げつ秀しゆうという僧がこの地を訪れ、法界寺という空き寺に身を寄せて布教を開始した。
ある日、月秀が沼のほとりを歩いていると、足を痛めた鶴が岩場でうずくまっていた。
かわいそうに思った月秀は、何日も鶴を見守りつづけたという。
やがて、鶴は傷が癒いえて大空に飛び立っていったのだが、鶴が飛び立った場所を見ると、沼の底から泡が立ち上って湯が湧き出ていた。
そして、その話が周囲に伝わり、月秀も加わって沼の干拓がおこなわれたあと、薬効の湯として誰でも入浴可能な湯屋が設けられたのである。
この湯は、鶴の足(脛)が治った湯であることから「鶴脛の湯」と命名され、それがのちに、この町の名となったのである。
なお現在、湯ゆ町まちにある「鶴の休石」は、かつて鶴が休息した場所だといわれ、そこが温泉発祥の地とされている。
鶴脛の湯は、いまでは「かみのやま温泉」として親しまれている。上山市内には地区ごとに数多くの温泉があり、地元の人々はもちろん、観光客も全国各地からたくさん訪れている。