神生み
神生みの末に訪れた悲劇の結末とは?
国生みを終えたイザナキとイザナミは、続いて神々を誕生させる。オホコトオシヲノカ
ミを手始めに、海や川、木や山、さらに自然の風や霧など森羅万象を司る、三五柱もの神
を生んだ。二神があらゆるものをこの世に送り出したというわけだ。
ところが、火の神カグツチを生んだとき、イザナミは女陰に大火傷を負ってしまう。イ
ザナミは苦しみ悶えながら神々を生み続けた末に、世を去った。イザナキの悲嘆は尋常で
はなく、その涙からも神が生まれている。イザナミを出雲と伯耆ほうきの境にある比ひ婆
ば山やまに葬ったイザナキだが、悲しみは憎しみへと変わり、妻を死に至らしめた我が子
カグツチへと向けられた。とうとう十と つかの剣つるぎを振り上げるや、カグツチの首
を斬り落としてしまった。そのとき、飛び散った血や溜まった血からタケミカヅチなど八
柱の神が生まれ、さらに八柱の神がカグツチの亡なき骸がらから誕生している。
カグツチの誕生は、人間にとってはなくてはならない火の誕生を示している。しかし一
方で、火は物を焼き払うという偉大な霊力を持つものだった。それは時として母でさえ、
殺傷してしまうほどの威力を持つことを語っているといえよう。