【第三章の神々】
天アメノ宇ウ受ズ売メノ命ミコト
道を開く役割を持ち、芸能の神として崇拝される女神
アメノウズメノミコトは、天あまの岩いわ屋やに隠れたアマテラスを外に連れ出すため
に、伏せた桶を踏みならし、胸乳をあらわにして踊り、天孫降臨一行の前に立ったサルタ
ビコの正体を明かすなど、積極的でよく目立つ行動をする女神である。「宇受」とはかん
ざしの意味で、アメノウズメは髪飾りをして神祭りをする女性が神格化されたものと思わ
れる。この神の子孫は、宮中の神楽に携わった猿さる女めの君きみといわれ、『古事記』
を暗誦したといわれる稗ひえ田だの阿あ礼れもこの一族と伝わる。
冬至の頃、太陽の力を復活させるために行なわれる「鎮魂祭」という祭りがあるが、こ
のとき冬でも緑を保つ常緑樹の葉を髪に挿したり口にくわえた巫女が祭儀を行なう習慣
は、アマテラスを岩戸から引き出した伝説に基づくと思われる。
『古事記』には、アメノウズメが、海の魚に天孫に仕えるか問いただした際、返事をしな
いナマコの口を小刀で開いたという逸話が記されている。閉じた岩戸を開かせ、高天原と
地上の間の通路を開き、返事をさせるべく口を開くなどの行為から考えると、アメノウズ
メは、閉じたものや塞がったものを開き、交通や伝達を可能にする女神と推測できる。
アマテラスは、アメノウズメを「敵対する神に面と向かっても勝つ」「願力がまさって
いる」と評しており、厚く信頼していると推測できる。アメノウズメもそれに応えて、自
ら体をあらわにして事にあたり、難局を切り抜けている。これは、黄泉国のイザナミや海
原国からやってきたトヨタマビメが、それぞれ男神に「姿を見るな」という禁忌を課し、
それが破られた結果、交流が遮断されたのと相反している。
つまりアメノウズメは、見られること、注目を浴びることによってより一層の力を発揮
する神と考えられ、芸能の神として信仰されている。神事においては舞などの芸能が奉納
されるのも、神と人間の耳目を集めて交流を円滑にするためであろう。
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