【第三章の神々】
猿サル田タ毗ビ古コノ神カミ
天孫降臨を先導した、長い鼻が特徴の伊勢土着の太陽神
高天原から天降ろうとしていた天孫一行を、天の八やつ衢つじで出迎えたのがサルタビ
コである。だが最初は、猿とも天狗ともいわれる奇怪な風貌をしていたため怪しまれてし
まう。天孫一行にいたアメノウズメが乳房をあらわにし、裳もの紐を臍へその下まで押し
下げて何者かと問いただし、道案内に来た国くにつ神かみであることが判明した。
『日本書紀』一書には「鼻の長さ七握、背の高さ七尺あまり……」と記され、その風貌か
らも人気を集めている神である。現代でも、神社の祭礼で天狗のような面をつけて高下駄
を履き、鉾ほこを手に神み輿こしを先導する者の姿が見られる。
全国にサルタビコを祀った神社は約二〇〇〇を数え、その総本山が三重県鈴鹿市の椿つ
ばき大おお神かみ社やしろである。庶民の間でも広く信仰され、天孫降臨の先導神という
役割から各地の路傍に立って道行く人の安全を守りつつ邪霊を防ぐ道祖神にもなってい
る。また近年では、交通安全の守護神とされ、警視庁にも祀られているという。
サルタビコ信仰は、さらに多彩である。天孫一行を高千穂に先導したあと、アメノウズ
メに送られて故郷の伊勢に帰り、その地でアメノウズメと結婚し、これが伊勢の海人一族
である猿女氏の先祖となったという伝説もある。
伊勢に帰って漁をしていたときに、貝に手を挟まれ、海に引き込まれて溺れかけたとい
う逸話もある。『古事記』では、サルタビコを「上は高天原を照らし、下は葦原中国を照
らす神」と記し、その目はアマテラスの依り代である「八や咫たの鏡かがみのごとく輝や
く」としていることから、伊勢では原始的な男性の太陽神として祀られていたと考えられ
る。
また、アメノウズメとの結婚から、古代の性器崇拝の流れを引く金こん精せい様さまと
もみなされ、信仰されてきた。男女の縁結びや出産、性病治癒などの御利益があるとされ
る金精神社は、サルタビコが祭神であることが多い。
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