第四章
天の下平らぎ、人民栄えなむ
勢力を広げる三輪の王者
【第四章あらすじ ─大和朝廷の始まり─ 】
数々の波乱を乗り越えながら、勢力を拡大するイハレビコの子
孫たち
イハレビコ(神じん武む天皇)の東征によって大和に王権が成立し、天皇の歴史が始ま
る。だが、それは波乱含みの始まりであった。イハレビコの崩御後、アヒラヒメとの間に
儲けていた長男タギシミミが、父の皇后イスケヨリヒメを娶めとり、皇位を狙ったのであ
る。そこでまずタギシミミは、皇后の実子であるヒコヤヰ、カムヤヰミミ、カムヌナカハ
ミミの三人の異母弟たちを殺そうと企んだ。だが、三人の御子たちは、タギシミミの陰謀
を察知したイスケヨリヒメの歌から、自分たちの危機を知る。そこで三人は先手を打って
タギシミミのもとへ忍び込むが、いざというときになって、兄たちは足が震えて何もでき
ない。さればと末子のカムヌナカハミミがタギシミミを誅殺。このカムヌナカハミミがそ
の勇気を称えられ、第二代天皇の座に就いたのである。以後、第九代ワカヤマトネコヒコ
オホビビ(開かい化か天皇)までは、生没年や系譜だけの記載が続く。
第十代ミマキイリヒコイニエ(崇す神じん天皇)の御世、恐ろしい疫病が流行し、多く
の人が亡くなった。すると、ミマキイリヒコの夢にオホモノヌシが現われ、疫病は自分の
祟たたりであり、子孫にあたるオホタタネコに自分を祀らせれば疫病が収まると告げる。
そこで天皇はオホタタネコを探し出し、祭さい祀しを行なわせたところ、無事、国に平穏
が戻った。その後天皇は、北陸、東国、丹たん波ばの地に将軍を派遣して、まつろわぬ
人々を平定する。そのうちのひとりオホビコは北陸に向かう途中、少女の予言から天皇の
兄タケハニヤスヒコの反乱を知り、鎮圧に貢献している。
ミマキイリヒコがこのオホビコの娘との間に儲けたのが次代の天皇イクメイリビコイサ
チ(垂すい仁にん天皇)で、この天皇は悲恋物語で知られている。
皇后サホビメはある日、兄のサホビコから重大な計画を打ち明けられる。なんと、天皇
を討ち取ってふたりでこの国を治めようというのだ。兄に逆らえないヒメは渡された刀を
手にするが、やはり天皇を殺あやめたりはできない。ヒメは天皇に包み隠さずすべてを打
ち明けた。すぐにサホビコの館に軍勢が差し向けられたが、身重のサホビメも兄の館に駆
け込んでしまう。天皇は愛しい妻の奪還計画を立てるが、うまくいかなかった。ヒメは生
まれた子を天皇に託して、兄とともに炎の中に身を投じてしまうのだった。
晩年のイクメイリビコは、不老不死を望み、タヂマモリに香り高い木の実を探させる。
しかし、タヂマモリがようやく常とこ世よの国くにから木の実を持って帰ってきたとき、
すでに天皇は崩御していたのだった。