皇后の大和帰還
皇位を狙って反乱を起こしたふたりの異母兄
◆異母兄を倒し御子の即位が成し遂げられる
オキナガタラシヒメが生んだ御子は、神意を与えられた存在であった。しかし、御子の
即位がすんなり実現したわけではない。
オキナガタラシヒメは、大和に抵抗勢力の存在を察していたのか、生まれたばかりの御
子を連れて大和へ凱旋する際、一計を案じた。御子はすでに亡くなったと触れ回らせたう
えで、喪も船ふねを仕立てて御子を乗せ、筑紫から東へ船を向けたのである。
それを聞いて立ち上がった人物がいた。御子の異母兄にあたるカゴサカとオシクマの兄
弟である。皇后を待ち受けて亡きものにしようと企んだふたりは、手始めに事がうまく運
ぶかどうか占うべく、「誓約うけい狩がり」を行なう。もし多くの獲物を手に入れられれ
ば、皇后の軍勢に勝てるはずと神意に託したのである。ところが、突如躍り出てきた大き
な猪にカゴサカが食い殺されてしまうという事態が起こった。吉兆どころか、凶兆であ
る。この神意に兵たちは怖おじ気けづいた。
しかし、オシクマはひるまず挙兵し、皇后を迎え撃つ。手始めに兵たちが御子の亡なき
骸がらを乗せた喪船を攻めた。ところがどうだ。喪船だと思った船からは多くの兵たちが
降り立ってきたのだ。オシクマらは不意をつかれて山代(山城)国まで押し込まれたもの
の、軍を立て直し、両軍の間で一進一退の激戦が繰り広げられた。
『日本書紀』では両軍はもう少し苦労したようだ。誓約狩で凶兆を知ったオシクマは慎重
になり、いったん兵を退却させている。一方の皇后軍も難波なにわに向かう船が海の上で
ぐるぐると回ってうまく進まない事態に見舞われる。そこで占いをして、アマテラスやコ
トシロヌシ、ツツノヲ三神など複数の神に教えを乞い、その希望通り鎮座させることで、
無事に海を渡っている。
戦いが長引くなか、皇后側の将軍タケブルクマもこれではらちがあかないと考え、ここ
で計略を練る。「皇后は亡くなられた。もはや戦う必要はない」と降参し、弓の弦を切っ
て自ら武器を収めたのである。『日本書紀』では信頼させるためか、刀を川の中に投げ入
れている。それを信じたオシクマ側も刀を退ひいた。するとすかさず皇后軍が髪の中に隠
してあった弓の弦を使って突然、弓矢を放ってきた。オシクマ側はすんでのところで逃げ
出すが、淡あわ海みの海(琵琶湖)に追い詰められ、もはやこれまでとばかり湖に身を投
げたのだった。
こうして皇后側が勝利を収め、御子はのちに応神天皇として即位するのである。
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