【第五章の人々】
建タケ内ウチノ宿スク禰ネ
天皇を五代にわたって補佐したといわれる伝説の大臣
『日本書紀』では景行天皇に始まり、成せい務む、仲哀、応神、仁にん徳とくと五代の天
皇に仕え、三百六十年もの長寿を誇ったという伝説の人物が、タケウチノスクネである。
第八代オホヤマトネコヒコクニクル(孝こう元げん天皇)の孫にあたるとされるこの人
物は、オホタラシヒコのもとでは蝦え夷ぞ地を視察し、ワカタラシヒコ(成務天皇)の政
治を補佐し、タラシナカツヒコ(仲哀天皇)に従っては九州に遠征し、オキナガタラシヒ
メ(神功皇后)の新羅遠征を実現させ、応神天皇の時代には反乱を抑えるという八はち面
めん六ろつ臂ぴの活躍を見せている。知識が広く、知恵も優れていたばかりでなく、神事
を司る霊媒者としての能力があり、落雷を呼んだという伝承もある。
七人の子はそれぞれ かつら城ぎ氏、平へ群ぐり氏、蘇そ我が氏、巨こ勢せ氏、紀きの
氏、波は多た氏、江え野の間ま氏の祖先となり、大和朝廷を支えたと伝えられている。タ
ケウチノスクネについての逸話は、「記紀」のみならず『古こ今こん著ちよ聞もん集じゆ
う』『本ほん朝ちよう神じん社じや考こう』など、のちの時代の書物にも数多く見られ、
日本人にとってなじみの深い人物であった。戦前の紙幣の図案には、白い髭をたくわえた
タケウチノスクネの肖像が採用されているほどである。
なんとも不思議な人物であるが、子孫とされる 城氏、平群氏、蘇我氏、巨勢氏らは、
いずれも大おお臣おみになっていることから、その功績がひとりの人物に集約されたので
はないかとも考えられる。つまり、タケウチノスクネは理想的大臣像なのである。そし
て、「建内宿禰」という名が世襲制で代々受け継がれたため、異常な長寿として残ったの
ではという推測が成り立つ。
タケウチノスクネは、延命長寿や武運長久、宰相の神として崇められ、埼玉県の高こ麗
ま神社や福井県の鵜う甘かん神社ほか、多くの神社で祀られている。『因いな幡ば国風土
記』逸文には、建内宿禰は宇部山の亀金岡に双履(一足の履き物)を残して世を去ったと
の一節があるが、鳥取県宇部神社の本殿裏には、双履石と呼ばれる岩が伝わっている。
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