イヅシヲトメの婚姻
秋山の神と春山の神の美女を賭けた争い
アメノヒボコが落ち着いた出石では、出石の大神にまつわる伝説も残されている。
出石の大神の娘のイヅシヲトメという神は大変な美女で、求婚が殺到していたが、誰も
口く説どき落とすことができずにいた。
アキヤマノシタヒヲトコという神も失敗したひとりである。ところが弟のハルヤマノカ
スミヲトコはヲトメを口説くことなど簡単と事もなげに言う。そこで兄は「成功したら、
たくさんの酒や山河の産物をすべてやる」と賭けを申し出た。カスミヲトコはまず母に相
談。母は藤の蔓つるから作った衣装を着せ、弓矢を持たせてヲトメの家へと向かわせる。
すると着物と弓矢に藤の花が咲いたではないか。カスミヲトコが弓矢をヲトメの厠かわや
に置いたところ、ヲトメは心惹かれ持ち帰った。弟はそのままヲトメについていき、結婚
したのである。
それを知った兄は面白くない。約束の品を出そうとしなかったため、母は塩をまぶした
石を竹の葉に包んで竹籠に入れ、兄を呪じゆ詛そした。そのため兄は長く病に伏し、許し
を乞うたところ、母はようやくこれを許し兄も健やかに暮らしたという。