ヲケによる復讐
弟を諫めた兄がとったオホハツセへの復讐法とは?
即位したヲケが真っ先に行なったのが、オホハツセに殺害された父イチノヘノオシハの
遺骸を探し出すことだった。すると淡海に住む老女が参上して遺骸の場所を知らせる。老
女の指示通りに遺骸を探し当てたヲケは、父の御陵を築いて手厚く葬るとともに、老女の
功績を称えて宮中に召した。同時に、その御陵番を父が殺されるきっかけを作ったカラブ
クロの子孫に命じている。これは復讐の一環である。また、ヲケは針間国へと逃亡した際
に、乾飯を奪った猪飼いの老人を探し出し、河原で斬り殺すとともに、その同族たちの膝
の筋を断つという厳しい罰を下している。
そして最後の復讐が、オホハツセの御陵を破壊することだった。その役目を引き受けた
のは兄のオケだった。しかし、彼はそばを少し掘っただけで帰ってくる。責める弟に兄は
「仇とはいえ父の従兄弟であり天皇だ。その御陵をすっかり破壊しては、後世の人たちか
ら非難される」と語った。これには弟も納得するしかなかった。その後、ヲケが崩御する
と、オケが即位した(仁にん賢けん天皇)。これ以降、『古事記』は皇統系譜を記すだけ
となり、推古天皇の段で幕を閉じる。