【第七章の人々】
穴アナ穂ホノ御ミ子コ(安康天皇)
偽りの報告を信じたがゆえに史上初めて暗殺された天皇
カルノミコに代わって皇位を得たヲアサヅマワクゴノスクネ(允恭天皇)の第三子。太
子であったカルノミコの醜聞発覚に伴い、人心が太子から離れたことを見計らってこれを
追い、オホマへヲマヘノスクネの邸に囲んだ。その後、『古事記』ではカルノミコを引き
渡され伊予に流罪としたとされるが、『日本書紀』では、その場でカルノミコは自害に及
んでいる。この事件のあと、アナホノミコはオホハツセの妻にオホクサカの妹を手配しよ
うとする。だが、遣いにやったネノオミの讒言を信じてオホクサカを殺害。その妻を自ら
の后としてしまった。『日本書紀』にはオホクサカの死に皆が涙したとあり、彼自身が支
持を失っていたことがうかがわれる。
やがて、アナホノミコが后との話の中で口にしたオホクサカ殺害の事実を、オホクサカ
の遺児マヨワが聞いてしまったことで、天皇位にある者として、史上初めて暗殺されるこ
とになる。その際、『古事記』では寝ているアナホノミコの横にあった太刀で首を落とさ
れたとされ、『日本書紀』では皇后に膝枕されて眠っているところにアナホが現われ、天
皇を刺し殺したと若干の違いが見られる。